目次
今もフィンランドの職人たちが作る
超ロングセラーの名作スツール
北欧デザインと聞いて真っ先に思い浮かべるキーワードと言えば、暮らしに寄り添う機能美、そして洗練されたシンプルなデザイン。今回取り上げた作品は、まさにその代表格となる「アルテック」のスツール60です。
丸い座面に3本の脚だけが付いた、このシンプルなスツールが生まれたのは1933年。フィンランドを代表する建築家アルヴァ・アアルトのデザインです。アアルトは特別な誰かのためではなく、機能性と実用性を兼ね備えた優れたデザインを大衆に広く普及させたいというモダニズムの思想を持ち続けていました。なかでもこのスツール60は、技術と美しさ、そして機能性を見事に体現した作品として、北欧モダンデザインのアイコンになっています。1935年に自らが設立した「アルテック」で販売が始まり、これまでに数百万脚以上が製造されてきたという超ロングセラー。知り合いの家やカフェ、美術館などどこかで目にしたことがあるのではないでしょうか。
イスとして腰掛けて使うだけではなく、
テーブルにもグリーンを飾る台にもなる!
スツール60の特徴は脚のデザインにあります。アアルトは機能的でモダンなデザインを追究し、曲げ木によるこのL-レッグを3年の歳月をかけて開発したそうです。強度にも優れ、木材の可能性を広げた画期的な技術として世界中を驚かせました。80年以上経った今も職人たちに継承され、フィンランドの街トゥルクにあるアルテックの工場で丁寧に作られています。
このL-レッグがもたらすシンプルなデザインは、暮らしに役立つさまざまな機能も実現しました。例えばスツールとしてだけでなく、ミニテーブルやグリーンを飾る台としても活躍。座面の裏に直接脚を取り付けるというシンプルな構造はタワーのように重ねることができ、収納場所にも困りません。シンプルなデザインに機能美をぎゅっと詰め込んだ、まさに北欧デザインのアイコン。いくつも欲しくなる逸品です。
色や仕上げ、布張りから価格まで
多彩な選択肢があるのも魅力!
機能性と実用性、優れたデザイン、そして自然を愛すること。そうしたアアルトの理念は、現代に至るまで多くのクリエーターやブランドと共鳴し新たなデザインも生み出してきました。そのひとつがファッション&テキスタイルブランド『ミナ ペルホネン』とのコラボレーションです。今年、ミナ ペルホネンの生地を使った新シリーズ、「スツール 60 ミナ ペルホネン シリーズ 2」を発表しました。スツール60の座面に、ミナ ペルホネンの生地「dop」を採用。使い込む過程で表面が擦れて裏側の色が新たな表情として現れ、経年変化が楽しめます。
また2016年には、無印良品とのコラボで特別仕様のスツールも展開。こちらはスツール60の4本脚バージョンとなる「スツール E60」を元に、製造工程をシンプルにすることで無印良品仕様のお手頃な価格を実現させています。
ちなみにスツール 60の素材として使われているのはフィンランド産バーチ。美しい木肌や色は使い込む毎に味わいが増し、コレクターの間ではあえて古いスツール60を探すという人もいるほどです。多彩な色や仕上げのバリエーションから選んだり、美しいファブリックを纏った一脚を選んだり、お手頃価格のバージョンから選んだり……! 豊富なバリエーションかスツール60の魅力のひとつ。自分にぴったりの一脚をぜひ探してみてください。
暮らしに美しいデザインをもたらした
フィンランドを代表する建築家
フィンランドの美しい自然を建築や家具、ガラス食器へと取り入れ、自然との融合や人々のより良い暮らしを目指したアルヴァ・アアルトの理念は、北欧モダンデザインの礎となりその後多くのデザイナーたちに多大な影響を及ぼしています。彼が、1935年に妻のアイノ・アアルトと2人の友人とともに、家具を販売するだけではなく、モダニズム文化を促進することを目的に設立したのが『アルテック(Artek)』です。Art(芸術)+Technology(技術)をテーマに、デザイン、建築、アートが交わるブランドとしてその地位を確立しています。
今年はアルヴァ・アアルトの生誕120周年。2019年にかけてアアルトの魅力に迫る大規模な回顧展「アルヴァ・アアルト‐もうひとつの自然」が開催されています。今なお色褪せることのないアアルトの魅力、そして北欧の名作をこの機会にぜひ体験してみてください。