フード&テーブルコーディネーターとして活躍中の岩下亜希さんは、目黒区にある約90㎡の一軒家にご主人と4匹の猫と暮らしています。「20代の頃に2年ほど暮らしたフランスで、ライフスタイルに対する美意識の高さに感銘を受けました。暮らし自体を芸術としてとらえる彼らの考え方“アールドヴィーヴル(生活芸術)”のエッセンスを取り入れて16年前に建てたのがこの家です」(岩下亜希さん・以下同)。当初はプロヴァンス風にしていたそうですが、年齢を重ねていくうちに好みも変化し、今年の5月にリフォーム。今の自分たちが心地よく過ごせる空間を考えて選んだという、各部屋のインテリアを見ていきましょう。
目次
亜希さんのプライベートルームは
猫足の家具でパリのプチホテル風
濃淡パープルで統一された亜希さんのプライベートルーム。リフォーム後に家具を揃えたわけではなく、もともと使っていたお気に入りを集めたら、自然とパリっぽい空間に仕上がったとか。「自分で勝手に“パリのプチホテル”と名付けて楽しんでいます(笑)。カーテンやクッションカバーは、好みの生地が手に入ったので自分で作りました。リネン類は季節や気分に合わせて自作しているんですよ」。空間に趣を添えるのがチェコの老舗メーカー『ペトロフ社』のピアノ。「一昨年34年ぶりにピアノを習い始め、それを機にピアノを購入したんです。この部屋は、私の“好き”を集めたプライベートな空間。ここでピアノを弾いたり、猫たちと戯れたり、そんなひとときが最高に心地いいんです」
水回りも細部までこだわりぬいて
フランス人の優雅な世界観を表現
「パリの蚤の市で見かけたときにひと目惚れして、いつか家を持ったら絶対に猫足のバスタブを置こうと決めていました!」。16年前に家を建てた際、輸入建材などを扱うWHAT’S HAPPENING?で購入した猫足タイプのバスタブをバスルームに配置。バスタブの優雅な雰囲気が際立つように、バスルーム全体を白で統一したそう。「水回りも妥協はしたくありませんでした。バスタブも便器も、日本のものはデザインにピンとくるものがなかったので、結局海外のものを取り寄せる形になりました。便器はアメリカを代表する水回りの製造メーカー・コーラー社のものを採用しています。少し手間はかかりましたが、おかげで毎日気持ちよく使うことができています」
パリのアパルトマン的シックさを
求めたリビングは、
照明の陰影が強調されるグレーの壁に変更
以前はテラコッタを床一面に敷き詰めた明るいプロヴァンス風のインテリアでしたが、最近は、少しクールな都会的スタイルが好み。「パリの人は照明の陰影を上手に使って、雰囲気ある空間を楽しんでいます。そんな成熟した空間が今の気分だったので、グレーの壁をメインに、照明の陰影が映えるリビングダイニングにテイストを変えてみました。キッチンの前にはバーカウンターも設置して、お酒が楽しめる空間作りにもこだわったんです」。通常ならラブリーになりがちなピンクのバラも、グレーを基調とした空間にしつらえるとクールな印象に! 照明の光が醸し出す陰影が美しく、以前に増して夜の時間が楽しくなったとか。
ご主人の書斎兼寝室は、あえて
秘密基地感覚のブルックリン風
ブルーと白を基調にレンガ壁や木製家具をプラス。ビンテージの雰囲気を出しつつ使い勝手も考慮したのが、ご主人の書斎兼寝室です。「主人はIT関連の会社に勤めていることもあって、家で仕事をすることも多いんです。そこで少しでも気分よく仕事ができるよう、落ち着いた色調に少しラフさを加えたブルックリン風にリフォームしました」。まず目に入るのが、正面のブルーグリーンの壁。そこにレンガ風タイルを貼ることで、一気にモダンな印象に。「はしごの上はベッドになっています。ベッドとはしご回りは鉄のフレーム。ペンキを塗る前の下地だけを施してあります。マットな黒が部屋の雰囲気に合っていたので、職人さんにあえてペンキを塗るのを控えてもらい、武骨な印象を生かしました」。岩下さんがご主人のためにDIYしたミニテーブルもスチールの脚でしっかりマッチしているのはさすが!
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年齢を重ねると好みや価値観は徐々に変わるもの。岩下さんのように、ライフステージに合わせて空間をアレンジするのは、暮らしを楽しむためのコツかもしれませんね。
撮影/石田純子