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ヴィンテージ家具と最新家電で味付け。自分好みにリノベーションしたインテリアスタイリストのアトリエ

建築家前川國男氏が中野区に1957年に設計したテラスハウス「鷺宮住宅」を一昨年購入し、友人の力を借りつつプランニングから空間づくりまで自身でリノベーションを手掛けた人気インテリアスタイリストの窪川氏。「この物件は都内なのに避暑地っぽい感じが気に入ってアトリエとして購入しました。巨匠建築家、前川國男の設計した貴重な物件というのが大前提にありましたが、鉄筋コンクリート造の連棟式テラスハウスは取り壊しにくいため値段が手ごろなのも買いの決め手となりました」。
1階は52㎡、2階は27.8㎡の一戸建て物件。「時代を感じる壁や柱、増築をしたような不思議な間取りなど、竣工当時の雰囲気を残しつつ、大幅に変えたのは、2階部分。室内が全体的に暗かったので2階の一部屋分の床を抜き吹き抜けを作り、開閉式の窓をはめ殺し窓に交換し明るく開放感のある空間に仕上げました。また1階は昭和ならではの純和風リビングダイニングだったので、押し入れと縁側を取り払いリビングのフロアを拡張しました。畳をはがし、ダイニングより一段上げてカーペット張りに変更し、ダイニングとリビングを自然とゾーニングしたのもポイントです。ほかにもキッチンの向きを変えカウンターを設けるなどライフスタイルにあった変更もしています」

雑誌やテレビで大活躍中のインテリアスタイリスト窪川勝哉さん。「仲間が遊びに来たときに、ここからみんなの楽し気な様子を眺めるのが好きなんです。吹き抜けとの間に壁を作らず、手すりだけを取り付けたのは正解でしたね」

目次

梁や床柱、ブロックなど
竣工当時のディテールにマッチするのは’
1950~60年代にデザインされた家具

ダイニングの一角には構造材のコンクリートブロックをあえてむき出しにして空間にメリハリを。手前の白壁は軽量鉄骨を組んで造作。

吹き抜けの空間が気持ちいいダイニングには、1952年に発表されたジョージ・ネルソンの名作照明「バブルランプ」を設置。また、友人から譲りうけたというダイニングテーブルは、1960年代にシバストから発売されたアルネ・ヴォッダーの物。「遊びに来た友人がリラックスできるように、ダイニングテーブルはコミュニケーションを取りやすいオーバル型を選びました。曲線のテーブルは自然と体の角度が傾くし、椅子のセッティングも自由になるからおすすめです。ダイニングテーブルも籐の座面が印象的なシャルロット・ペリアンの「No.17」のスツールも、この家と同じ時代1950年~60年代にデザインされたもの。このアトリエは仕事場や撮影場所としてメインに使っていますが、友人を招いて大人の秘密基地のようにも使いたいので、空間も家具もエイジングされているくらいのほうが居心地よく過ごせます」

コバルトブルーのカーペットと段差で
リビングとダイニングを自然にゾーニング

コバルトブルーのカーペットを敷いて、壁などで仕切らずダイニングとゾーニング。チーク材の色味が気に入っている1967年発表のロジャー・ベネットの「ビューローキャビネット」の横にはLGスタイラーの「スチームウォッシュ&ドライ」を設置。

和室の天井に隠れていた梁を出し、床の間の面影を残す床柱を活かしてリノベーションしたリビング。「リビングのリノベーションプランは、押し入れと縁側部分は取り払い、リビングのフロアを広々と確保したところです。それから畳をはがしてダイニングより一段上げてカーペット張りにしました」

リノベーション前は押し入れと縁側の横に窓があったそうですが、光の入り方を考えてあえて塞いだそう。「床をダイニングより上げたことで、友人たちは直に座ってくつろぎます。そこであえて低めの家具を設置しました」。ソファはシート高が低く、光を遮らないところが気に入って購入したグリニッチの「ルー・ソファ」。オーバル型のローテーブルは、ハーマンミラーで購入した「イームズエリプティカルテーブル」。「家具や小物などは’50~’60年が中心ですが、やはり快適さを考えると家電はハイテクに限ります」

ひと部屋分の床を抜いて
明るさを重視したベッドルーム

竣工時の面影を残すウォールナット色の廊下と階段を上がると、オープンなベッドルームに。建設当時テラスだった部分に屋根をつけた小部屋は手を入れず利用し、ニーチェアのオリジナルをディスプレー。

吹き抜けとの間に壁を設けず、柱や梁とマッチする手すりだけを取り付けたオープンなベッドルーム。吹き抜け横には、1958年デザインの名作チェア、ノーマン・チャーナの「チャーナーチェア」を設置。これは、窪川さんが最も好きなイスだそう。「2階には元々2部屋あったのですが、その1室の床を取り払い、吹き抜けを作りました。また開閉式の窓からはめ殺し窓に交換したことで、たっぷりと光が入り、四季によって変化するグリーンも眺められるので、別荘で昼寝をしているような気持ちよさが味わえます」。ベッドは’50年代にゲタマから発表された、ラタン網のヘッドボートが特徴的なハンス・J・ウェグナーの「GE701」。

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13年前に購入したご自宅と、今回のアトリエ。自身で2回のリノベーションを手掛けたことで、竣工当時の雰囲気を残しつつ居心地のいい空間を作ることに自信がついたという窪川さん。現在は都外にも土地を探し中。よい物件が見つかり次第、いよいよリノベーションではなく、ゼロからの家作りを考えてみるそうです。幼いころに夢見た秘密基地のような空間を都内に持てるなんて羨ましい限り。

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