料理家が自宅で使う日常の器【韓国料理研究家 チョン・ヒャンミさんの場合】

ビビンバやキムチ、料理を巻く葉もの野菜、スンドゥブなど、食卓に並べられた韓国料理は色鮮やかで、見ているだけでも食欲がそそられます。五味五色をモットーにした韓国料理を提案する料理研究家チャン・ヒャンミさん。彼女が日常で使っている韓色豊かな美しい器を見せていただきました。

韓国料理を自分流にアレンジした”再現料理”を得意としているチョン・ヒャンミさん。得意分野はキムチのアレンジレシピや日韓コラボメニュー、発酵食品等。

地方の陶器市に足を運ぶこともあるという韓国料理研究家のチョン・ヒャンミさん。ただ、作家で選ぶというよりは、器を見たときに作りたい料理が思いつくか、実際に手に取って使いやすいかが決め手になるそう。「プライベートではもちろん韓国料理も作りますが、和洋折衷、家族のリクエストがあればなんでも作ります(笑)。なのでどんな料理も受け止めてくれる色調や素材の器が重宝しますね。私的には、キムチは白か黒の器に映えるので、それだけは器と料理の組み合わせが決まっていますが、他の器は特に組み合わせは決まっていません」(チョン・ヒャンミさん 以下同)。そんなヒャンミさんが紹介してくれた器を見ていきましょう。

目次

〈手前〉【三苫 修作】〈奥〉【角田 淳作】
長方形の器はバランスよく盛り付けられ
縦横どちらに向けても様になります

写真手前の大分県日田市に工房がある三苫氏の器は、近隣の自然の恵みを生かしたさまざまな釉薬を用いて制作されていて、その凛としたたたずまいは静かながらも存在感を放ちます。奥の角田氏の作品は、少し灰色がかった、ぬくもりのある白が特徴。

「北鎌倉にある『器と小道具 蓮衣』に通うようになったのは、料理家とコラボをしたイベント“器と料理が楽しめる会”に参加したのがきっかけです」。オーナーが集めたセンスの良い韓国や日本の器、古道具を見ていると、ヒャンミさんの料理に対する創作力がかき立てられたそう。この2枚の皿も、『器と小道具 蓮衣』で購入したもの。「無意識に選ぶ器は、韓国料理が映える控えめな色使いの器が多いです。この長方形の器も、バランスよく盛り付けられるのが魅力。子供が大好きなプレーンなオムレツを真ん中に置き、ハッシュドビーフソースをかけただけで卵の風合いが器の柔らかな表情に合い、料理に華やかさがでます」。

【谷口将海作 笠間焼の器】
心奪われた燻銀彩焼の紺青色。
洋食に合わせることが多い平皿です

筑波山の麓にある「あじさい工房」の作家谷口将海氏の作品。紺青色に焼締めた燻銀彩焼は「あじさい工房」独自の技法です。「西荻窪の『ギャリー伊万里』で購入しました。今はこの色を指定した、深めの器を焼いてもらっています」。

「この深い青に銀色が混ざった味わい深い色味に惹かれて、手に取りました。直径20㎝ほどで、取り皿としても、食卓に3品くらいおかずを並べるときにも、使いやすいサイズ感ですね。和というより洋で使うことが多く、ローストビーフやチーズを載せてブルーベリーを散らすなど、おつまみ用にも使います。手触りや色など器自体に存在感がありながら、料理を引き立てる万能な器です」

【韓国の青磁茶器】
二重構造で保湿性も◎
ふた付きで茶器以外の用途も可能

韓国の仁寺洞(インサドン)で購入した茶器。仁寺洞は伝統的な家屋が立ち並び、アンティークや伝統的な小物が購入できる素敵な街。

透かし柄のデザインが素敵な茶器は二重構造になっていて、熱いお湯を入れても手に伝わらず、料理も冷めにくいのが◎。「器の深さやサイズが絶妙なので、茶器としてではなく、おかゆやスープを入れて使うことも。青磁独特な優しい色味はデザートにも合わせやすく、お汁粉を入れて白玉を浮かしても可愛く、見た目にも上品です。私の兄夫婦は300個窯元さんに焼いてもらい、結婚式の引き出物にしました! いろいろな使い方ができるので、韓国青磁器に興味がある方におすすめしたい逸品です」

【たち吉 大小セット皿】
朝鮮がルーツの有田焼。
韓国料理が映えるので使う頻度が高いです

たち吉の創業は今から260年以上昔の宝歴2年。たち吉は日本全国の焼き物産地で、こだわりの器を作成しています。「たち吉との出会いは結婚式でいただいた引き出物。たち吉のオンラインショップで気に入ったものを見つけたら、新宿伊勢丹や新宿高島屋に行き、手に取り、購入を検討しています」。

「私は器の知識はそれほど詳しくありませんが、たち吉の薄くて軽く優美な白磁の器が、おおらかな静けさを持つ韓国の白磁に似ているなと思います」。歴史をたどると有田焼は朝鮮がルーツだとも言われ、たち吉の器には初めて見たときから愛着を感じたそう。「この器はフォルムが繊細で、美しく料理を引きたてる上品さがあるところが気に入っています。キムチを真ん中に載せるだけで見栄えがします。取り分けに使える大小セットの器は重宝しますね」。

叔母が神楽坂のミシュラン店の
オーナーという生粋の料理家家系!

神楽坂にあるミシュラン店「松の実」オーナーの叔母さまから、韓国料理や文化を学んできた韓国料理研究家のチョン・ヒャンミさん。「叔母の作る韓国宮廷料理は、韓国の伝統色“五方色”を意識した食材が使われているので、よく『料理が映えるように盛り付けしなさい』と言われていました。叔母が選ぶ器は料理の色彩を引き立て、きれいだな、おいしそうだなと思えるものが多く、その感覚が今の器選びに繋がっていると思います」。そんな叔母さまからの教えが、チョン・ヒャンミさんの器選びに生かされていました。そのお眼鏡にかなった器は、どんな料理も盛り付けるだけで絵になり、視覚からおいしさが伝わるものばかり! 茶器のようにそれ以外の用途を考えたり、お皿にさらにグラスを置いて使うなど、使用範囲が広がるアイデアもマネしたいですね。

撮影/大場千里

取材したのはこちら

韓国料理研究家。1日4組限定の神楽坂「松の実」のオーナーを叔母に持ち、幼少期より韓国料理を学ぶ。結婚後、服部栄養専門学校にて栄養士の資格を取得。日本三大料亭のひとつ金田中の茶酒にて約3年料理人として勤める。現在食育を基礎とした韓国料理教室を自宅サロンにて主宰。週刊誌へのレシピ提供、ジムトレーナーとの美容イベント料理教室開催、企業イベントの料理講師、飲食店のレシピ開発&メニュー提案、ケータリングなど多岐にわたり活躍中。

チョン・ヒャンミ

http://www.instagram.com/hyangmi720