免疫力を上げるために大切なことは、バランスの取れた食事をすること。「どれかひとつだけを食べ続けていても免疫力は上がりません。人間の体を作る材料となるタンパク質をベースとして他の栄養素も摂取していくのが理想です。ちなみに人間の細胞は約3カ月で入れ替わるといわれています。体感には個人差はありますが、1週間くらいで変化が感じられることも。まずはこれからご紹介する食材をバランスよく食べて体の基礎を作り、免疫力を育てましょう」(管理栄養士・麻生れいみさん 以下同)
◆「牛肉」◆
ウイルスをブロックする粘膜を
作るには十分なタンパク質が必要
「外部からさまざまな物質が入る恐れのある上気道(鼻と口から喉頭まで)からウイルスの侵入を防ぐには、上気道の粘膜が粘液でしっかり覆われていることが大切です。粘液の主な成分はムチンといい、主成分はタンパク質。つまりタンパク質の量が足りないと、ムチンも不足し粘膜の防御機能が低下する恐れがあります。肉、魚、納豆、卵などどれでもかまいませんが、牛肉がタンパク質含有率が高くステーキなどにして手軽に食べられるのでおすすめです」
◆「卵」◆
体内に侵入した異物、微生物を排除する
免疫グロブリン生成に必要なビタミンAを摂取
「人間の粘膜には病原体を排除する物質が含まれています。その代表格が免疫グロブリン。そのなかでもIgAは、唾液や消化液、痰などの粘膜で、防御機構の主役を担っています。その生成に必要なのが、アミノ酸の一種グルタミンとビタミンA。グルタミンはタンパク質から作られますが、先にお話した通り、タンパク質は体のベースにもなるのでしっかりとってください。また、ビタミンAは、卵に多く含まれています。卵にはタンパク質も含まれているので、効率よく二つの栄養素をとれて調理のバリエーションも多いので、口にしやすいと思います」
◆「ニンジン」◆
ビタミンAの材料となるβカロテンを
多く含み、季節を問わず手に入りやすい
「病原体を排除する免疫グロブリンを作るビタミンA。その原料となるβ‐カロテンも免疫力アップには欠かせない栄養素です。シソ、カボチャなどの緑黄色野菜に多く含まれていますが、季節に関係なく手に入り、調理法も多くあるニンジンがおすすめ。油と一緒に調理し摂取することでβカロテンの吸収率がより高まるので、タンパク質である肉などと一緒に炒めて食べるといいですよ」
◆「ブロッコリー」◆
抗炎症作用のあるビタミンCを摂取。
調理は茹でずにレンチンがおすすめ
「ビタミン C は、病原体を排除する白血球の働きを助けたり、粘膜を構成する主なタンパク質であるコラーゲンを丈夫にする、免疫力アップに大切な栄養素です。強力な抗炎症作用もあるため、感染による炎症を抑え抵抗力も高めてくれます。食材でいうと、ブロッコリーが含有率が高くおすすめ。ほとんどの方が茹でて食べていると思いますが、お湯で茹でるのではなく、レンジで加熱調理するほうが成分が逃げずに無駄なく栄養をとることができますよ」
◆「サケ」◆
天然抗菌成分ディフェンシンの分泌を
促進するビタミンD含有率が高い
「ビタミン D は、骨の生成に大切なビタミンですが、免疫アップのためにも重要で、粘膜表面の細胞をお互いに固く結びつけて丈夫にし、天然抗菌成分ディフェンシンの分泌も促進する働きを持っています。食材でいうと、含有率が高くてビタミンD摂取に理想的なのはサケ。野菜だと、シメジがおすすめです。ちなみにビタミンDは熱に強く、焼く、煮る、揚げるといった調理をしても、ほとんど分解されません。サケとシメジを一緒に炒めたり蒸したりするのもいいですよ」
◆「カキ」◆
肝臓に蓄積されたビタミンAを体中に運び
免疫反応に関与する亜鉛が豊富
「免疫力アップに必須のビタミンAは主に肝臓に貯蔵されています。そのビタミンAを体内で必要な場所に運び、実際に働くように変えるために必要な栄養素が亜鉛。いわば、亜鉛は栄養素をスムーズに代謝させる潤滑油のような役割を担っています。そんな亜鉛が豊富な食材はカキです。生でも焼いてもOKですが、より亜鉛の吸収を上げるなら、ビタミンCを豊富に含むレモン汁をかけてあげるといいでしょう」
◆「マイワシ」◆
血液中の鉄分不足による免疫力低下は
動物性ヘム鉄を取り入れて補う
「鉄が欠乏すると細胞に十分な酸素が供給されず、疲労や免疫力低下が生じる原因に。動物性の食品から摂取できるものは、ヘム鉄といい吸収率が高いのが特徴です。レバーや肉、魚介類は鉄の供給源としてもよく知られていますよね。レバーは苦手という方はぜひマイワシでヘム鉄をとってください。年間を通し手に入れやすく、価格も安定しているのでおすすめです」
◆「ホウレンソウ」◆
魚もレバーも苦手という人は
野菜から鉄分をとることも可能です
「植物性の食品に含まれる非ヘム鉄はヘム鉄に比べて吸収率が低いですが、良質なタンパク質やビタミンCを多く含む食品と一緒に摂取することで吸収率アップは可能です。野菜から鉄分を取り入れるならホウレンソウ。サラダやおひたし、おみそ汁と他の食材とも組み合わせやすい点が魅力です。ちなみに胃酸の分泌が良くなると鉄の吸収率もよくなるといわれているので、胃酸の分泌を促す酢、梅干し、レモンなどの酸っぱいものや香辛料と組み合わせるのもいいですよ」
◆「ワカメ」◆
免疫細胞の70%以上が集中する場所
腸内の環境は水溶性食物繊維で整える
「免疫細胞のおよそ70%は腸に集中していると言われています。つまり、腸内環境を整えることが、免疫力を高めることになるのです。他の栄養素のように小腸で吸収されず、大腸まで届くことから腸内細菌のエサとなる水溶性食物繊維を積極的にとることは、腸内環境を整えて免疫力を高めることにつながります。日常的に取り入れやすい食材はワカメ。発酵食品に含まれる乳酸菌にも腸内の善玉菌を増やし 腸内環境を整える働きがあるので、ワカメのおみそ汁などは理想的な食事と言えます」
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今の体を作っているのは日々の食事だから必ず変化はあると麻生さん。また、現代人は圧倒的にタンパク質不足だそうなので、ウイルスに負けない体を作るには、意識して良質なタンパク質を摂取することが重要なのかもしれません。