杉並区の駅から少し離れた静かな住宅街に注文住宅を建てたUさんご一家。3人のお子さんを持ち、ご主人は飲食店経営、奥さまはカフェを経営している共働き夫婦が目指したのは“家族が一緒にいられる家”。およそ30坪という限られた土地で家族5人がゆったり暮らすために、1階に大きめの寝室ひとつとバス+トイレを集め、2階は丸ごと20畳のリビングダイニングにすることにしました。
目次
“ハンモックのあるリビング”を
作りたかったことが
梁をむき出しにした理由のひとつ
床面積は限られていても、少しでも開放感あるリビングにするため、Uさんがこだわったのが天井。いわゆる天井部分を取り除き、梁を残すことで高さを出しました。実は、梁をむき出しにした天井にこだわった理由は他にもあり、それがハンモックです。「家を建てたら絶対にハンモックを家の中心に取り付ける」というのが奥さまの強い希望だったそうです。
「ハンモックはソファやイスで寛ぐのとはまた違うリラックス感が味わえるので大好きなんです。ゆらゆらと揺られながらお茶したり、雑誌を読んだり……というのに憧れて。現実は子供たちのアスレチック代わりになってますが(笑)。天井の梁が使えると、ハンモックの取り付けがとても楽なんです。この天井設計は、広く見せることとハンモックを吊すことの一石二鳥なんですよ」(奥さま)
梁を生かした勾配天井には
ハンモック以外にも
いろいろ吊す!
構造上、天井の高低差があり、南向きの大きな窓に向かってより天井が高くなるように建築されています。木材の表情をそのまま生かした天井の梁がむき出しになっていることで、温もりあるログハウスのような雰囲気。さらに、むき出しになった梁を上手に生かすアイデアがいくつか。例えばライト。リビング・ダイニングにはメインの大きな照明はなく、あえて梁に吊された数個のエジソンランプと梁の上側に埋め込まれたダウンライトのみにしたそう。「南向きが全面窓なので日中は明るく電気は不要なんです。それに夜は小さな光がいくつか集まった照明のほうがリラックスできるかなと思ってあえてこの形にしました」(ご主人)
区切りのない広いリビングは
壁の素材や色に変化をつけることで
場所ごとの役割を明確化
U邸のメインスペースは仕切りのない2階。キッチン・ダイニング・仕事部屋・子供部屋……と、全てを兼ねた空間です。ひとつの部屋にあらゆる用途のスペースがあり、散漫になりそうなところを、壁の素材に変化をつけることで場所ごとの役割を視覚的に分けるように考えました。「全て同じ壁材だと統一感は出そうですが、これだけ広いと単調で味気ない印象になってしまいそうで。ならば壁に変化をつければメリハリが出てインテリア的にもいいかも!とひらめいたんです。でも、いざ選ぶとなるとそれはそれは迷いました(笑)。結果的にキッチンは自分が立つことがほとんどなので気分の上がるタイル壁にし、子供スペースは白の漆喰風、書斎スペースは温もりを感じるウッドにしました。すべてナチュラルテイストでまとめたので統一感も出せたかなと思っています」(奥さま)
生活空間から仕切りを排除し、家族みんなの顔が見えることにこだわったUさん邸。勾配天井や壁材の変化で単調にならず窮屈さもない家族みんながくつろげる空間が実現しました。ハンモックに横たわると、ちょうど目線の位置くる南向きの大きな窓の外に、現在ウッドデッキを増設中とのこと。「完成したら、窓を全開にして外の空気を感じながら子供たちとハンモックで揺られるのが今から楽しみです」(奥さま)
(撮影/石田純子)