食べこぼしやワイン、化粧品、ペンのインクなど、普段の洗濯ではなかなか落ちないハードな汚れ。それらをきれいに落とすためには、“汚れ”から“シミ”に変わる前に対処することが大切。横浜でクリーニング店を営む洗濯のプロ集団「洗濯ブラザーズ」からその対処法を教わりましょう。
目次
汚れがシミに変わる前、
1週間以内に洗濯を!
「僕たちが“汚れ”と呼ぶのは、服について1週間以内のもの。それ以上経過したものは“シミ”に変わります。こうなると、漂白剤を使うかプロに任せるしかありません。時間の経過が一番のネックになりますので、汚れは放置せず、繊維の奥まで入り込んで固まってしまう前にその日のうちに対処するようにしましょう」(洗濯ブラザーズ・茂木康之さん 以下同)
ゴシゴシは厳禁!
プレウォッシュからたたき洗いが正解
食べこぼしなどがついた衣類をそのまま洗濯機に入れて洗っても、ハードな汚れは落ちず、時間がたつとシミに変わってしまいます。そこで必要なのがプレウオッシュ。超簡単にもかかわらず一般家庭で実践している人は少ないですが、プロの世界では常識のテクニックです。「プレウオッシュとは、洗濯機で洗う前の前処理、予洗いのこと。弱アルカリ性の洗濯用液体洗剤と水を混ぜ合わせたプレウオッシュ液を、汚れた部分に3〜4回吹きかけて汚れを分解して浮かせておくことが大切。洗剤は水と混ぜ合わせることで汚れを落とせるものなので、洗剤を原液のままつけてもあまり効果はありません。どんな汚れに対しても、きれいに洗えるかどうかはこのひと手間で決まる、と覚えておいてください」
ブラシを使うときはトントンと
たたき洗いが鉄則!
プレウオッシュ液を吹きかけた後、よりハードな汚れにはブラシを使いましょう。その際に気をつけなければいけないのが、ブラシの使い方。「ハードな汚れ=ゴシゴシ洗い」とイメージする人も多いですが、実はこれ、プロの間では厳禁なのだとか。「ゴシゴシとこすっても、汚れは横に移動するだけです。汚れは生地に対して垂直に、上からたたき出すのが基本。僕たちプロが使うシミ抜きの機械も、生地の上からバキュームして汚れを抜き取るものです。また、こすり洗いは繊維がよれるので、衣類のダメージにつながります。生地を傷めないよう、10〜15分ほどじっくり時間をかけて細かくトントントンと無心でたたき続けてください。衣類の下にタオルを敷き、プレウオッシュ液をかけながら、下のタオルに汚れを移動させるとより効果的です」。デリケートな生地の衣類にはブラシは使わず、このあと紹介する「もみ洗い」を実践してみてください。
汚れの種類によって
プレウオッシュ前後のケアも変わります
どんな汚れにも、まずは素早いプレウオッシュが効果的ですが、より効果的に対処するなら汚れの種類を把握することが重要。「汚れは大きくわけて、油性、水溶性、不溶性の3種類。そしてこれらが混ざった複合的な汚れがあり、それぞれ正しい対処の順番があります。これを間違えると汚れは落ちません。何の汚れかをよく思い出し、見極めてから正しく対処すれば、より効率よく簡単に落とすことができますよ」
◆ 油性の汚れ ◆
口紅・ファンデーション・マニキュア・
ペンのインク・ラー油・チョコレート など
プレウオッシュ&ブラシで油分をたたき出す
「油分の多い汚れには、上で紹介したプレウオッシュと、ブラシでのたたき洗いが有効です。それでも落ちなければ、弱アルカリ性の洗濯用液体洗剤を溶かした40℃のぬるま湯で、もみ洗いしてください。しつこい油汚れにはキッチン用洗剤、インクには除光液を使うという手もありますが、生地へのダメージが大きいので注意しましょう」
◆ 水溶性の汚れ ◆
コーヒー・お茶・赤ワイン・しょうゆ・
汗・尿・血液・草の汁 など
まずは水洗いで応急処置を
「出先で汚してしまったら、少量の水ですすぎ応急処置をしておきましょう。乾いた布やティッシュで水分をふき取る場合は、こすると汚れを広げることになるので注意。帰宅したらプレウオッシュし、弱アルカリ性の洗濯用液体洗剤を溶かした40℃のぬるま湯でもみ洗い。ただし、血液の汚れはお湯だと固まってしまうので、常温の水を使うようにしてください」
◆ 不溶性の汚れ ◆
泥・ちり・ほこり など
粉末洗剤を溶かしたお湯につけ込む
「ユニホームや靴下についた泥汚れは、まずプレウォッシュ液をかけ、15分ほどかけてブラシでしっかりと汚れをたたき出しましょう。次に、40℃以上のお湯に洗剤を溶かし、30分〜1時間つけ置きします。お湯を使う理由は、水温が高いほうが、洗剤の洗浄力が高まるから。不溶性の汚れは他の汚れに比べて落としにくいため、洗剤自体も液体よりも洗浄力の高い粉末洗剤が有効です」
◆ 複合的な汚れ ◆
カレー・ミートソース・焼き肉のたれ・
ケチャップ・ドレッシング など
「油性汚れ→水溶性の汚れ」の順に落とす
「食べこぼしなどの汚れは、油性汚れの膜の下に水溶性の汚れの膜があり、その中に色素が潜み、層になった状態です。最初に油性の汚れを落とさないと水溶性の汚れは落ちません。まずはプレウオッシュでしっかりと油の膜を溶かすことが絶対条件。その後は、弱アルカリ性の洗濯用液体洗剤を溶かした40℃のぬるま湯でもみ洗いし、水溶性の汚れを落とします。それでも色素が残ってしまったら、ここで初めて漂白剤を部分的に使用してみてください」
最後にプレウオッシュ液の
作り方を紹介します
スプレー容器に、弱アルカリ性の洗濯用液体洗剤と水を、1:1の割合で入れます。軽く振って混ぜ合わせれば完成。時間がたつと雑菌が発生するため、1週間以内に使いきれる分量で作るようにしましょう。市販の部分洗い用洗剤を使ってもいいそうです。
「ブラシがない場合は使用済みの歯ブラシなどでも代用できますが、洗濯用のほうがブラシの面積が広く、ヘッドに重みがあってたたきやすいのでおすすめです。1000円程度のものでも汚れの落ち方は全然違いますので、1本持っておくと便利ですよ」
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順序を守ってこれらの対処をしっかり行ったら、その後はいつもどおり洗濯機で洗えばいいのだそう。大切なのは力を込めてこすることではなく、素早く適切な対処法。これを実践すれば、今までは諦めていた汚れも、シミにならずにすみそうですね。
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