「そうめんは、手延べと機械式の二種類に分けられます。前者は職人さんが手作業で生地を1本1本麺状に細く伸ばしていく伝統的な手法。後者は機械でこねた生地を刃物で細く切って乾燥させて作ります。一見すると同じように見えますが、食べ比べるとその差は歴然です」(そうめん研究家ソーメン二郎さん・以下同)
目次
麺の太さやコシもさまざまな
ご当地そうめんのおすすめはこれ!
◆奈良県「一筋縄 麦縄そうめん 」◆
ヘルシー志向の人にも嬉しい
ノンオイルの次世代そうめん
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そうめん発祥の地・奈良の桜井で文化元年(1804年)より続く老舗の製麺所で作られたそうめん。創作手延師である6代目山下勝山氏が考案したそうめんが、ノンオイル・吉野葛入りの“一筋縄そうめん”です。「手延べそうめんを作る際、通常は麺を細く引き伸ばすために油を塗るのですが、6代目はヘルシーな麺を追求し、油を一切使わないノンオイルの麺を実現。さらに吉野葛を入れて独特な艶とコシを出しています。ヘルシーかつおいしいと、健康意識の高い層にも支持されています」。一度食べたら癖になるのど越しの良さをぜひ味わってみて。
◆宮城県「白石温麺」◆
長さ約9㎝の短いそうめんは
混ぜたり炒めたりいろんな料理に応用
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400年ほど前、胃を病んで床に伏している父を心配した息子が、旅の僧から教わった油を使わない消化のよいそうめんを作ったのが、このそうめんの始まり。温麺は“うーめん”と読み、親孝行した息子の温かい思いやりからこの名がつけられたんだとか。「珍しいハーフサイズのそうめんは、通常よりも麺の長さが9㎝と短いのが特徴。冷たくしてめんつゆにつけて食べるだけでなく、炒めものにしたり、サラダに混ぜたり、いろいろな調理法で年間を通して食べてほしいです」
◆愛媛県「いろいろそうめん」◆
伝統の五色そうめんを
子供も喜ぶ現代風にアレンジ
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愛媛の松山を代表するのがカラフルな五色そうめん。寛永12年(1635年)から作られ始め、朝廷で“美麗五色は唐糸の如く美し”と賞されたことをきっかけに全国に知られるようになりました。「梅肉や抹茶などを麺に練り込む工程が特に難しいと言われています。五色そうめんはコシの強さとなめらかな食感が魅力。近年は鮮やかな色彩を利用して、クレヨンに見立てた“いろいろそうめん”のようなアイデア商品も出るようになりました。小さなお子さんのいるご家庭への贈り物にも喜ばれますよ」
◆熊本県「南関素麺」◆
シコシコした歯ざわりが絶品!
細く長いそうめんはギフトにも◎
およそ300年の歴史を持つそうめん。中国で修行を積んだ小豆島のそうめん職人が、旅の途中に熊本県の南関を立ち寄り、そうめん作りの製法を教えたのがきっかけと言われています。ゆでても伸びないほどのコシの強さと、シコシコとした歯ざわりのそうめんです。「南関そうめんは長くて切れにくいのが特徴です。そうめんには“細く長いお付き合いを願う”という意味がありますから、大切な人へのお中元やギフトに贈るのにぴったりです」
〈おまけ〉
岡山デニムとコラボした ユニークそうめん!
歴史ある製麺所が伝統的なそうめん作りに励む一方、最近は各地の名産品とコラボしたアイデアそうめんも次々登場し、話題を呼んでいます。栃木の名産・とちおとめの果汁を練り込んだ「苺そうめん」や熊本のい草を使った「いぐさ麺」、デニムの聖地・岡山県井原からは食用の藍パウダーを用いた「井原デニム素麺」が誕生。スタンダードな麺に飽きたら、変わりダネにトライしてみるのも楽しそう!
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気候、原料、職人の三つが揃ってこそ
おいしい手延べそうめんができあがる
前回に続きそうめんの魅力を語ってきましたが、今回監修をつとめていただいたソーメン二郎さんの実家は、そうめん発祥の地・奈良県の桜井市三輪地区にある亀屋植田製麺所。現在は、二郎さんの姉夫婦が家業を継いでいるそう。「そうめん作りは、冬寒く、湿度が低く、水がきれいという気候条件が大切。奈良盆地特有の底冷えする気候は、もともとそうめん作りに適していたんです」。そうめんに必要な材料は小麦、水、塩、そして油。まず小麦粉を塩水でよくこね、平らなかたまりにした後、およそ10㎜幅の帯状の麺にします。乾燥と麺同士がくっつくのを防ぐために油を塗り、しばらく置いた後、いよいよ麺を細く伸ばしていきます。「糸状に伸ばした麺を木箱で数日熟成させ、さらに太さ0.8〜1㎜に仕上げ(JAS規格で手延べそうめんと名乗れるのは太さ1.3㎜以下)、温度や湿度に注意しながら均一に乾燥させてようやく手延べそうめんは完成します。意外と手間がかかるでしょう?」。そうめんはツルツルっとあっという間に食べることができますが、作るのにこんなに手間と時間が必要だったとは……職人さんたちの熟練技に脱帽です。
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知れば知るほど奥が深い手延べそうめんの世界。まずは手軽にインターネットで各地のそうめんを取り寄せて食べ比べしてみてはいかがでしょう。そしてお気に入りが見つかったら、ご当地そうめんを求めて、本場まで足を運んでみるのも素敵です!
■ソーメン二郎さんのレシピ本
『簡単! 極旨! そうめんレシピ』(扶桑社)
(撮影/石田純子)