小食だった子供の頃、よく残ってしまう白いごはんを叱られながら食べていたので、実は26歳くらいまで白いごはんが苦手でした。しかし結婚当初に信楽の窯元、古谷信男さんの粉引飯わんと出合ったことで、白米ってこんなにおいしいの⁉ と感じたことを今も鮮明に覚えています。あいにく割れてしまいそのおわんは手元にないのですが、それ以来、器によってごはんの味に違いが出ることが分かりいろいろ試しました。その結果、ごはんをおいしく食べられる飯わんの条件として、白米の白が艶やかに引き立つ色合い、自分の手のひらに収まりのいいサイズ感、ごはんを盛り付けた茶わんを持ったときに違和感のない重さ、この3点はもちろん大切ですが、何よりも、ごはん茶わんの素材が大切だと気が付きました。素材によって味わいがかなり変わるんです。
お米の味を左右する、飯わんの三つの素材
みなさんはいつも使っているごはん茶碗の素材を気にしたことはありますか? 飯わんの素材は大きく分けて磁器、陶器、漆器の3種類があります。磁器は染付などの絵柄が描かれた、薄手で硬くツルっとした質感で吸水性のない器。陶器は土の粒子が感じられ、厚手で艶はあるけれど、ざらざらゴツゴツした質感かつ吸水性のある器。漆器はベースの木地を植物の樹脂でコーティングしていて、すべすべとした質感ながら湿気を調整してくれる器。白米の水分量は、ごはんの甘味、香り、粘り、硬さに影響します。白米を飯わんによそったとき、その白米に含まれる水分がどうなるかによって、ごはんの味わいが変わるというわけです。同じお米を、陶器、磁器、漆器の飯わんで食べ比べると
- 磁器:甘味とごはんの軟らかさが感じられる
- 陶器:さっぱりとして、米粒の食感を味わえる
- 漆器:ごはんの味や硬さをバランスよく保つ
ということになります。
ごはんがおいしく食べられる
素材別のおすすめ飯わんを紹介
飯わんは他のお皿と違って、自分だけの「マイごはん茶わん」を持っている方が多いちょっと特別な器。それだけ、日本人にとってお米が特別な存在だということですが、飯わんを選ぶときは、大きさ、手触りや重さ、色合いや柄を意識しますが、どんな味で食べたいかという基準も加えると最高の「マイごはん茶わん」に出合えるはずです。
◆新道工房作「染付輪線文碗」◆
磁器の飯わんは、ごはんの甘味を
最大限に感じられる
茶わんに描かれている模様「輪線文」は伝統の絵柄ながらモダンさがあります。ごはんをよそったとき、お米の艶まで引き立ててくれるので、目からもおいしさを味わうことができます。また、磁器の器は吸水性がないので、盛り付けた際にごはんに含まれる水分がそのまま保たれるのが特徴。三つの素材のなかでいちばんみずみずしい口当たりで、ごはんの甘味をしっかり感じることができると思います。甘味のある濃厚な味わいが好みなら、磁器がおすすめ。
◆増田 勉作「粉引飯碗」◆
硬めでさっぱりしたごはんが好みの人に
おすすめなのが陶器の飯わん
この茶わんは、土ものらしい温かみのある白が器好きにはたまらない作品です。吸水性のある陶器の飯わんは、ごはんをよそうとごはんの湯気や湿気を吸収してくれます。そのためごはんがさっぱりと味わえて、米粒をしっかり感じられるのが特徴です。べちゃっとしてしまいがちな、新米など水分の多いお米も、さっぱりおいしく味わえますよ。硬めのごはんが好きだという方にはぴったりの茶わんだと思います。
◆中野知昭作 「羽反飯椀 中 朱」◆
米の特長が伝わりやすいバランス型が
漆の飯わんのいいところ
中野知昭さんの漆の飯わんは、口が広いのでごはんの香りが立ちやすく、新米の香りも一緒に味わうことができるのがいいところ。また、漆が適度に湿度を調整するので、ごはんの湿気を程よく保ってくれます。そのため甘味や食感のバランスがとれている点も魅力です。いわば、そのお米本来の味をそのまま楽しむのに適したわんです。漆器は、陶磁器よりもずっと軽いので、握力のない子供や年配の方にもおすすめです。
・・・・・・
同じ家族でも、軟らかくて甘味のある白米が好きな人、固めでさっぱりが好みなど人それぞれ炊き方の好みがあると思います。ごはんの炊き方や銘柄を変えなくても、器を変えるだけで、それぞれの好みの味わいに近づけることができるので、この新米の季節にごはん茶わんの素材を変えて、ぜひ食べ比べてみてください。
※紹介した商品は、こちらでも購入できます。
うつわ ももふくオンラインショップ