秋刀魚と書くサンマはもちろん、サケやアジ、サバなどは、名前の頭に「秋」をつけて分けて呼ぶほどで、まさに今が旬。しっかり脂がのっていて、うま味も増していますから、私は手をかけずにさっと焼くだけの焼き魚が大好きです。ところでみなさんは、焼き魚用の皿にどんなものをお使いですか? 洋風に味つけた魚料理は、オーバル型でもいいですが、シンプルな焼き魚は「THE 和食」という見た目にするのがいちばん映えておいしく見えますから、横に長い「長角皿」に盛りつけるのが正解です。長角皿を選ぶときに意識してほしいのは、
- 魚の大きさに対してプラス3㎝前後の大きさ
- 皮付きで焼く青魚は皮目が映える濃い色の皿
- 魚を丸ごと焼く場合は陶器、切り身なら磁器を選ぶ
ちなにみ、丸ごと焼いた魚は皮の焼き色がジューシーに見える陶器、切り身の魚は焼き色をフレッシュに見せてくれる磁気に盛りつけるのがおすすめ。これらを踏まえて、食卓に出ることの多いサンマ、アジの干物、サケの切り身を例にして皿を選んでみました。
焼き魚の代表「サンマ」をのせる皿は
横幅30㎝以上の濃い色長角皿で凛々しく
塩をふって皮をパリッと焼き、カボスを絞って大根おろしと一緒に食べるサンマは、秋の味覚のなかでも抜群においしいもの。サンマは1尾を切らずに丸ごとのせられて、カボスや大根おろしなどのあしらいものを置いても窮屈に見えないサイズ感の皿を選びます。頭から尻尾までが30㎝くらいですから、盛りつける皿は横幅33㎝前後、奥行き12㎝前後あるとしっかり盛りつけられると思います。また、サンマは青魚特有の光った皮がありますから、その皮目を美しく見せてくれる、黒やグレー、焼き締めなど色の濃い皿がおすすめ。角掛さん作の長角皿は、ざらっとした岩のようなマットな質感に、銀色に光るサンマの皮をおいしそうに引き立ててくれます。ちなみに角掛さんは、家庭料理に使いやすい、古典的すぎず、モダンすぎずの絶妙なバランスの器を作る作家。この長角皿は、買ってきたお寿司などを盛っても絵になりますよ。
大きめの干物には7寸くらい長さが必要。
焼き色が映える粉引きの陶器が合う
アジに限らず魚を開いた干物は、横幅も奥行きも必要となるので、丸皿でもいいように思いますが、直径25㎝くらい(8寸サイズ)の丸皿だと余白が多すぎておいしそうに見えません。私的にベストなサイズだと思うのは横幅25㎝、奥行き15㎝の長角皿です。これなら付け合わせを盛ったときにも、バランスよく収まります。坪井さんの「刷毛目長角皿」は、横幅だけでなく奥行きがあるので、干物、アジやサバの塩焼きなど大きな魚もバランスよく盛りつけられます。質感としては温かみのある陶器がおすすめ。干物の焼き色が映え、おいしさを演出してくれますよ。ちなみにこの皿は、しょうが焼きや豚カツなどの定番のおかずを盛っても素敵ですよ。
“かいしき”の効果もある斜線染付が
切り身を彩りよく形も美しく見せる
朝食にぴったりなサケやサワラの西京焼きなどの小ぶりな切り身の焼き魚ですが、干物を盛るような大きめの皿に盛りつけると、余白が大きすぎて貧弱に見えてしまいます。なので付け合わせの大根おろしなどを余白に添えてもバランスよく収まる横幅18㎝、奥行き11㎝くらいまでの長角皿を選ぶといいと思います。またこの皿のように染付の青が効いたものなら、かいしきの代わりとなるので、焼き魚をおいしく引き立てる効果もあると思います。ちなみに「かいしき」とは、料理の下に敷く葉や、添える花や枝のこと。季節感を出し、料理を引き立てるアクセントにもなる日本料理特有の文化です。我が家の朝食にはよくサケの切り身が並びますが、モダンながら柔らかいタッチで仕上がる古川さんの器に盛ると、爽やかな1日の始まりを演出できて、気に入っています。この器は、ケーキなどの洋菓子をのせて、土物のカップやガラスのコップと一緒にお茶の時間を楽しんだりもしています。
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焼き魚は頭を左、腹が手前になるように置き、お皿の上でも泳いでいるかのように見せるのがコツ。焼き魚のお供として定番のすだちやレモン、大根おろしなどの“あしらいもの”は、必ず魚の手前、右横に置くのが和食の作法です。それを踏まえたサイズ、素材、柄を意識することで定番のシンプルな焼き魚も、おいしいご馳走になりますので、ぜひお試しくださいね。
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