【白金台「雨晴」の主人に聞く和の器選び】フレッシュな果実を楽しむ吹きガラスの器

例年以上に残暑も厳しい今年の夏。そろそろバテ気味という人も多いのではないでしょうか。8月から10月に旬を迎えるイチジクは、不老長寿の果物と呼ばれていますが、食物繊維やむくみを取ってくれるカリウム、タンパク質を分解してくれる酵素のフィシンなど、栄養素が豊富で夏バテにぴったりの果物です。今回は、夏バテにも効くイチジクをお題に、旬の果物が引き立つ器を選んでもらいます。

果物のみずみずしさが引き立つ
手吹きガラスの器に盛り付けてみる

「洗いたての丸ごとのイチジクでも、カットしたイチジクでも、ガラスの器に盛り付けると、みずみずしさが引き立ち、より食欲をそそります。陶器や磁器とは違った光沢や質感が楽しめるガラスの器がひとつあると、夏はもちろん１年を通して旬の果物をおいしくいただけますよ」と雨晴のご主人、金子憲一さん。
「今回ご紹介するのは、大阪和泉市のガラス工房『フレスコ（fresco）』で作られた宙吹きのガラスプレート。ハンドメイドで作られるガラスは、工業製品にはない温かさがあります。吹きガラスならではの、とろみのある質感は、食材そのものを楽しむ日本人の食卓にもよく似合います。なかでもこの『kasumi AO』は涼やかな色使いも魅力。イチジクの赤い色とのコントラストが美しく、すばらしい彩りが楽しめますよ」。紹介してくれたサイズは直径約19㎝の皿。中央にフルーツを盛り付けたときに、周りのガラスの質感も一緒に楽しめる大きさです。

霞を思わせる色の重なりと
宙吹きガラスの揺らぎが作る温もりを
モダンなデザインに仕上げた器

「ガラスの器と言うと夏のイメージがありますが、その概念を覆して四季を通して使いたくなるのが今回ご紹介する『フレスコ』の器です。“宙吹き”と呼ばれる、型を使わずにフリーハンドで作るガラスには、ハンドメイドならではの“揺らぎ”が独特の表情となり、冷たい印象のガラスに温かみを感じさせます」。また、ただ温もりがあるだけではないのが『フレスコ』のガラスの魅力。「水を思わせる滑らかなフォルムは、リムにきりりとラインが効いていてモダンな印象に仕上がっています。手作りならではの個性はそのままに、現代の暮らしに溶け込むモダンなデザインに仕上げられているのもファンが多い理由のひとつですね。そして特筆すべきはその独特な色使いです。透明のガラスにさまざまな色ガラスの粉末を重ねて作られるオリジナリティ溢れる質感は『フレスコ』の得意技。なかでも代表作となる『kasumi』シリーズは、その名の通り、霞を思わせる美しい色使いが特徴です。光の陰影が巧みに表現され、果実をのせたときにそのみずみずしさをより引き立ててくれます」。光の加減でさまざまな表情を見せる器は、眺めているだけでも楽しいうっとりするような美しさです。

色彩や透明度でガラスを魅せる
辻野剛さん率いる『フレスコ』の器

美しい霞の色を表現したこの器を手がけたのはガラス作家・辻野剛さん率いる『フレスコ』。辻野さんは 19歳でこの世界に入り、アメリカ各地でさまざまなガラスの表現を学んでいます。そしてガラス工房でキャリアを積んだ後、2001年に大阪府和泉市に自身のガラス工房『フレスコ』を設立、2005年には、「現代の生活に溶け込むガラス製品」を提案するガラスブランドとして『フレスコ』を立ち上げました。その独特の色使いと質感が高く評価され、さまざまなブランドからはコラボレーションの声がかかり、企画展には全国からファンが集まります。「透明度や色彩、風合い、その表情が無数にあるフレスコのガラスは、はまさに四季を通じて使いたくなる器です。ひとつひとつ個性のあるガラスを使い手の感性で選択して欲しいと言うのが辻野さんの思いなのですが、手にしたときに食卓の新しいイメージが沸くようなそんなストーリーを感じさせる器です」。

旬を味わう特別感を印象深く彩ってくれるこんなガラスの器があれば、季節ごとに果物を選ぶ楽しさも、より増していきそうです。

なお、今回ご紹介した『フレスコ』の『kasaumi AO』は、雨晴のご主人、金子さんがディレクションをつとめる渋谷・神宮前のJOURNAL STANDARD SQUARE（渋谷区神宮前6-19-20　第15荒井ビル　tel.03-5778-9205）内にある工芸コーナー「あおとしろ by 雨晴」の別注品。販売もこちらでのみの特別な器です。このkaumiシリーズのAOは、「雨晴」の雨の色、「JOURNAL STANDARD」を象徴するデニムの藍、それぞれをイメージしてfrescoが特別に制作した色となります。

（撮影／吉澤健太）