通勤に便利な都内の戸建てに住みたいけれど、予算的には狭小住宅……。そんなジレンマに陥っている人も多いのではないでしょうか。しかしここ数年、狭小住宅のイメージは大きく変わってきています。今回は、狭小住宅の設計・施工も多数手掛ける住宅メーカー、旭化成ホームズのモデルハウスを訪問し、最新の「広く暮らす」工夫を見せていただきました。
狭い家をゆったり使う最新トレンドは?
- あえて空間を区切らない~壁などで明確に分けずゾーニングすることで、家族の気配を感じながらもそれぞれの時間が過ごせます。「例えば狭いリビングの床を下げるだけで他の空間と緩やかに区別しつつ、こもり感のある落ち着いた空間になります。床を下げた段差にも腰を掛けられるので、居場所が増えるメリットも」(高村さん 以下同)
- 開口部を大きく設け採光を確保~密集地に多い狭小住宅は、室内が暗いイメージが。「室内に壁を作らないことが多いので、意外と明るい部屋を作りやすい場合もありますよ」。天井までいっぱいのガラスを使って3階から1階に光が届くようにしたり、隣家からの視線が気にならない床ギリギリの地窓を活用したりするなど窓の位置に配慮しつつ明るい室内を確保。
- 階段下や廊下を有効活用~廊下を作らない場合も多いそうですが、あえて廊下を作り、その壁にニッチ収納を設けるケースも。「狭小住宅は家具の置き場所が確保しにくいため、壁をそのまま収納スペースにするお宅も多いですね」。また通常収納にしがちな階段下の空きスペースを、ワークスペースやキッチンの一部に活用することも。
- 屋上やバルコニーをアウトドアリビングに~庭がなくとも、LDKに大開口を設けバルコニーと連続したアウトドアリビングを作ればピクニック気分も楽しめます。「屋上庭園まで作れない場合でも、3階のバルコニーの壁を通常より高く設置することで、周囲の目線を気にすることのない半屋外空間のようになり、光と風が心地よいスペースが成立します」。実際の広さより開放感があるので、リクエストが増えているそう。
では、狭い面積をめいっぱい有効活用した事例をチェック!
目次
玄関は壁で仕切らず抜け感を
活かしたゆったりとした空間に
24坪強と決して広いとは言えない土地に建てられた家ですが、意外にも玄関スペースは約1.5畳とゆったり。「広く感じる理由のひとつは、リビングとの間を壁で仕切らず、背板なしのキャビネットからリビングが見通せる視覚効果を利用したところにあると思います」。また向かって左手にある階段下のスペースも、土間の一部として広々と活用しています。
近隣からの目線はグリーンで隠しつつ
大開口窓を設置して光をしっかり取り込む
「この物件は住宅街の角地にあるため、1階は近隣住民や歩行者からの目線が気になります。しかし塀で囲ってしまうと光もさえぎられ圧迫感が生まれるので、モダンなグリーンで囲いました」。ハイサッシを開放しても外からの目線は気にならず、光もしっかり届き、豊かな緑を眺めながら至福のひとときが味わえそうです。
天井と壁の間をあけることで
つながりを感じつつ開放感も生まれる
あえて壁を作らないのが狭小住宅の工夫のひとつですが、空間を仕切るために壁を作る場合でも、天井部分を約40㎝あけるだけで、こんなに開放感が演出できます。「約16畳の2階には、7.7畳の寝室の他、オープンクローゼットと子供部屋があります。天井と壁に抜けを作ることで、狭さを感じにくくしました」。別々の部屋にいながら隣室から漏れる光や音に家族とのつながりや存在を感じられるもの素敵ですね。
デッドスペースになりがちな廊下を
ワークスペースとして活用する
2階の3部屋をつなぐ廊下には大きな窓が設置され、そこからの光を最大限に部屋にとりこめるよう、窓側の廊下と各部屋の間には壁やドアがありません。「壁やドアがないので子供のデスクを廊下に置いても違和感ないですよね⁉ 部屋と廊下を明確に区切らないことで、家具の配置や暮らし方の自由度が増しますよ」
家族が同時に調理可能な
回遊できるアイランドキッチン
「一般的にはキッチンをリビング側と対面に設置することが多いのですが、ここでは効率よい家事動線を考慮して横向きにしてあります」。この配置なら、キッチンをスムーズに回遊でき、家族も余裕ですれ違えます。1人がIHクッキングヒーターで調理し、1人が洗い物をしてもお互いが邪魔にならず、家事分担もはかどりそう!
庭がなくても大丈夫! 屋上を
家族のイベントスペースに
ベランダや屋上を上手に活用すれば、狭小住宅でも庭のような開放感のあるスペースは手に入ります。「お子さんがいるご家庭からよくリクエストされるのが屋上をアウトドアリビングにすることです。夏はBBQやキャンプを楽しんでもいいですし、お子さんと一緒に家庭菜園で作った野菜を調理し食卓に並べるなど、自宅にいながらして家族共通の趣味を楽しむことができるのは素敵ですね」
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土地が狭くても諦めることはない、むしろワクワクするような家造りを実現できるとつくづく感じさせられました。敷地面積だけにとらわれず、一度は自分たちらしい家を相談してみるのもよさそうですね。
(撮影/相澤琢磨)