ティータイムが楽しくなる見た目もキュートなケトルや、清潔感のある白い保存容器など、お洒落で実用性もあるホーロー製品が人気の野田琺瑯。実は1934年創業という歴史あるメーカーなんです。そんな85年の歴史を持つ野田琺瑯・広報の野田裕子さんに、人気商品の生まれた意外な背景など、そうだったんだ〜!というトリビアを伺いました。
目次
野田琺瑯トリビア①
ロングセラーを誇るホワイトシリーズ。
最初は売れないと大反対された!
「野田琺瑯が皆さまに知っていただくきっかけになったのは、2003年に発売した『ホワイトシリーズ』という白い容器のシリーズで、今も看板商品となっています。世の中のそれまでの流れは、ホーロー商品=カラフルな色や柄というのが主流で、白いホーローは、どちらかというと保健室で使われる洗面器等の衛生道具というイメージが強く、家庭用品の白い商品は売れないというのが業界の常識でした。そんななか、現会長の妻であり自身も弊社に勤める野田善子の、毎日家事をするなかで感じていた“食材や料理の色が映える白色でシンプルな、冷蔵庫に収まるふた付きの容器がほしい”という思いがきっかけとなり、社内に反対の声がありつつも、少量生産から発売を開始しました。最初は、お取り扱いも全国で3店舗ほどでしたが、人気スタイリスト伊藤まさこさんのご紹介をきっかけに、今では全国の販売店でお取り扱いいただけるようになりました」(野田琺瑯広報、野田さん・以下同)
野田琺瑯トリビア②
専門のデザイン担当がいない
「野田琺瑯には、実はデザイナーがいません。例えば、デザイン性を褒めていただくことが多いポトルに関しても、まず、本体の鋼板の厚みから大きさやデザインを決めて取っ手を付け、その状態でお湯を沸かして傾けたり、実際に使った使用感を確認したうえで、何度も試作品を作り直し、最終的なデザインを決定しました。ポトルのように、取っ手部もホーロー製のものは、火にかけると大変熱くなりますので、必ずミトンやふきんでお持ちいただく必要があるため、その状態で持ちやすいかどうかが重要な点になり、それをクリアしたうえで美しいという機能美を大切にしています。また、ホーローの特徴である色決めも重要です。工程上、850℃という高温で焼成するため、色によっては焼成時に変色やムラができやすいものもあり、どんな色でも可能というわけではありません。また、形によって似合う色と似あわない色というのがありますし、何種類にするかということも含め、色を決定するまでにも大変な時間を要しています。他製品はカラフルな色が求められなくなったため多色作ることは少ないですが、唯一ポトルは8色展開です。ポトルの場合、キッチンに置いたままにする方が多く、インテリア性も求められます。そういったことも含めて、デザイナーではなく、開発スタッフが議論しながら進めています」
野田琺瑯トリビア③
最も売れているのは「ホワイトシリーズ
レクタングル深型Sシール蓋付」。
売上累計は100万個を突破
「野田琺瑯には全部で180種類ほどの製品がありますが、個数ベースでの売り上げ順位は、1位ホワイトシリーズ レクタングル深型Sシール蓋付、2位ホワイトシリーズ レクタングル深型Mシール蓋付、3位ホワイトシリーズ レクタングル深型Lシール蓋付と、全てホワイトシリーズになります。現在、ふたの種類も選べて計34種類。発売当時からある写真の10種は、2013年に『グッドデザイン・ロングライフデザイン賞』を受賞したんです。シリーズのなかで最も売れているレクタングル深型Sシール蓋付は、累計売上個数が約100万個。保存容器としてはもちろんのこと、最近ではお弁当箱として活用くださる方が増えているようですね」
野田琺瑯トリビア④
お洒落なインテリアとしても人気の
「道具入れ」は、
もともとは消毒器入れだった!
「消毒器は、具体的な年号は記録がないのですが、弊社では少なくとも50年ほどは製造していると思います。理容師法・美容師法で器具の洗浄と消毒が定められており、その道具として使用されていることが一番多いです。今は、文字や柄を焼き付ける際に転写シートを張り付けて焼成するのですが、昔は、シルクスクリーンという工法で、ひとつひとつ文字の部分を版画のように擦り付けてから焼成していました。文字が入っていることで、一般のご家庭でも、雑貨やインテリアとしてお使いいただくこともありますが、よりご家庭向けのシンプルなものとして、2008年に、文字を入れない『道具箱』としても発売しました。無地になったことでより用途が広がったという声をいただいています」
野田琺瑯トリビア⑤
ホーロー製品の冬の時代を切り抜け
現在の成長の土台となったのは
「漬け物ファミリー」
「野田琺瑯は1934年に創業、戦争を経て1947年に再発足し、当時はバットやバケツ、また、今でも製造し続けているホーロータンクがメイン商品でした。そのホーロータンクを製造していたことから、1976年に、当時NHK『きょうの料理』等に出演されていた料理家・酒井佐和子先生と共同開発し、丸型の寸胴容器のふたに穴を開け空気が入るようにして、ぬか床の発酵を促すという容器『漬け物ファミリー』を発売し大ヒットとなりました。国内の琺瑯業界は1971年頃をピークに引き出物やギフト需要で沸き、90社以上ものメーカーがありましたが、他素材の登場や、国内のバブル崩壊の影響を受けて業界不況となり、多くのメーカーが廃業。野田琺瑯も、東京工場を閉鎖したりと厳しい時代が続きましたが、この漬け物ファミリーのおかげで不況を乗り越えられました」
野田琺瑯トリビア⑥
金額ベースの売上高1位は
漬け物ファミリーが進化した
「ぬか漬け美人」
「漬け物ファミリーは発売当初、工場での製造を、漬け物ファミリーに集中せざるを得ないほど、作っても作っても間に合わないほど売れた商品です。しかしながら、あんなに売れていた漬け物ファミリーが、ぱったりと売れなくなります。日本人の漬け物離れかと思っていたのですが、漬け物屋さんに話を聞いてみると、“ぬか漬け”だけはとても売れるとのこと。ちょうどその時代は、日本の住宅事情に変化があった頃。風通しの良い家ではなく、マンション等の気密性の高い住宅が増えたことで、家の中がどこも暖かく、今まで通りにぬか床を置いていても腐らせてしまう=ぬか漬けをやめてしまうというのが原因でした。そこで冷蔵庫に保管しやすい角形にするというアイデアが生まれ、メジャーを持って電気屋さんを回ったんです。冷蔵庫の1段の高さを測り、高さ12㎝であればほとんどの冷蔵庫に対応できるということで、このサイズに決定。それが、冷蔵庫用ぬか漬け容器『ぬか漬け美人』の始まりです。累計個数での順位はホワイトシリーズが上位ですが、金額ベースでの売り上げだと実は、ずっと『ぬか漬け美人』がNo.1なんです」
野田琺瑯トリビア⑦
ほんの数年前までは季節によって
売れる製品が違った!
「数年前までは、4月~6月くらい(夏前)になると『ぬか漬け美人』が売れ、らっきょう漬けの季節(5月頃)や梅漬けの季節(6月頃)になると、『ホーロータンク』や『ラウンドストッカー』が売れる、などがありました。最近は、そういった季節ごとの仕込み作業をする方が減ってしまったのか、前ほど、季節はあまり関係なくなってしまっています。その反面、冬にみそ作りをする方から『ラウンドストッカー』のお引き合いがここ数年で急激に増えました。また、最近はSNS上で、一般の主婦の方が『ホワイトシリーズ』に常備菜を入れられて撮影されている場面を多く拝見し、家庭料理が見直され、少しでもそのお役に立てていることが大変励みになります」
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大人気の野田琺瑯について、知らなかったことも意外と多いのではないでしょうか? “時代のニーズに合わせて製品開発をする”。基本を忠実にやってきたからこそ、実用性と機能美を両立した製品が生まれ、これだけ愛されているんですね。そんな野田琺瑯のアイテム、あなたの暮らしに加えてみませんか?