「睡眠不足」とは、睡眠が一時的に不足すること。一時的なので、その後にしっかり寝るなどの対応をとれば、解消することができます。一方、睡眠負債とは、日々の睡眠不足が借金のように少しずつ積み重なり、心身にさまざまな不調を引き起こす可能性のある状態のこと。ほんの少しの睡眠不足が積み重なるだけなので、自分は元気だから大丈夫と自覚がない人がほとんどです。
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特に女性が危険な状態。
断トツに短い日本人の睡眠時間
厚生労働省の調査では、日本人の睡眠時間は断トツの最下位。さらに、女性のほうが男性よりも睡眠時間が短く、日本人女性は、慢性的な睡眠負債の状態にあると言えます。
3個以上あてはまるなら要注意。
あなたも睡眠負債がたまっているかも!?
次のなかであなたが思いあたることはいくつありますか?
- 朝起きても疲れがとれない
- ベッドに入るとあっという間に寝落ちしてしまう
- 休日は仕事の日より2~3時間は遅く起きる
- イライラしてよく八つ当たりする
- 寝る前についだらだらスマホやゲームをする
- 日中強い眠気に襲われる
- 最近太った
- 最近、やる気が出ない
- 最近、肌や髪の毛の艶がなくなった
- イビキをよくかく
いかがでしたか? 冷静に考えると睡眠が足りていないことが当たり前になっていませんか? 自覚がないうちにたまっていくのが睡眠負債の特徴です。3つ以上あてはまるなら要注意。そろそろいろんな不調が出てくるかもしれませんよ。
睡眠負債は身体的、
精神的疾患につがなることも
睡眠負債の返済を考えたとき、まずやってしまいがちなのが「寝だめ」です。しかし、睡眠負債は寝だめでは解消されません。お金の負債は一括返済できますが、睡眠の負債は、地道にコツコツ返済するしか方法がないとされています。睡眠負債が本当に怖いのは、自分は元気だと自覚がないこと、睡眠が足りない状態が続くと、さまざまな疾患へつながってしまうことです。たかが睡眠が足りないだけと思っているうちに、生活習慣病や、脳疾患・心疾患などの身体的疾患に発展したり、うつなどの精神疾患を引き起こしやすくなります。
1:うつ病リスクが4倍に!
精神疾患も侮れない
睡眠負債を抱えると、しっかり睡眠がとれている人に比べてストレスに弱くなる傾向にあります。これは、ストレスホルモンと呼ばれる「コルチゾール」の分泌量が少なくなることが要因と言われています。また、睡眠不足に悩まされた人はその後3年以内にうつ病になるリスクが4倍も高まると研究報告があります。コロナ禍でうつに似た症状を訴える人が増えたと言われていますが、眠ることをおろそかにしてはいけません。
2:4時間以下の睡眠だと肥満率が
73%アップ。生活習慣病のリスク上昇
睡眠不足になると、日中になっても交感神経が十分に働かず日中の代謝が悪くなり、消費エネルギーが低下します。さらに、日中の活動意欲も低下するので運動不足にもなり、その結果、太りやすくもなります。米コロンビア大学が行った研究では、平均7〜9時間の睡眠をとっている人に比べて、睡眠が4時間以下の人の肥満率は73%も高かったという結果があります。肥満は生活習慣と密接に関わっています。2型糖尿病や高脂血症、高血圧、痛風、高尿酸血漿などが肥満と関係しています。肥満は生活習慣病の初期症状と言われています。睡眠と肥満、一見関係無さそうに見えますが、実は深い関係があるのです。
3:アルツハイマーの15%が睡眠起因。
認知症のリスクが高まる
ワシントン大学の研究では、睡眠不足が続くと、認知症の原因のひとつであると考えられているアミロイドBというタンパク質の蓄積量が5.6倍になるという研究結果が報告されています。さらに、南フロリダ大学の研究チームからは、アルツハイマー病認知症の15%は睡眠が原因であるとの発表も。認知症は高齢者の病気と思われがちですが、認知症さまざまな原因で脳の神経細胞が破壊・減少を繰り返す病気です。若い人も発症する可能性は十分にあるのです。
コツコツ返済して健康リスクを
減らすために生活のなかでできること
睡眠負債は、一括返済ができません。睡眠負債を減らすための日常生活にすぐに取り入れられる方法を2つご紹介します。
1:平日30分程度の仮眠や
休日2時間の昼寝が効果的
仮眠はパワーナップ(Power Nap=積極的仮眠)とも言われます。人間の体温は午前から午後にかけて上昇し午後4時頃に最高値に達した後、徐々に低下していきます。その大きなリズムのなかにも小さな波があり、午前2〜4時頃と、午後2〜4時頃に小さな波が訪れます。体温が下がる昼間に一時的に睡眠をとり、眠気を解消することは、午後の仕事への影響も大きく、生産性の向上にもつながります。また、ある研究では、26分間の仮眠で 認知機能が34%、注意力が54%向上したというデータもあります。午後、集中して仕事に取り組めれば、無駄な残業も減り、それは結果的に、夜の睡眠にも影響します。実は、仮眠だけでは睡眠負債返済にはなりませんが、残業が続き寝る時間が遅くなれば、それだけ、睡眠負債に陥る可能性があがります。また、休日に、90〜120分の昼寝をするのは、睡眠負債にとても効果的です。ただし、だらだらと朝から寝ているのではなく、朝は一度いつもの時間に起きて、その後改めて、お昼寝をすることが大切です。いつまでも寝ているのは、昼寝ではなく、単純に寝坊です。だらだら寝坊は体内時計のリズムも狂わせ、休み明けの不調にもつながります。それに比べ、昼寝や仮眠は体内時計のリズムを狂わせず脳を休めることができます。
2:いつもより1時間早く寝る
そもそも、自分にどの程度の睡眠負債があるのかを本格的に調べるには、専用の施設で数日間かけて観察する必要があります。ただ、本格的に調べることができなくても、いつもより1時間早く寝て、翌日起床したときに体調が良ければ、普段睡眠が足りない、睡眠負債がたまっている可能性があると判断することができます。
冒頭のリストで、チェックが3つ以上ついた人は、まずはいつもより1時間早めに眠ることが睡眠負債返済の第一歩になります。これを1週間続け、さらに次の週も1時間早く寝てみる。こうすることで、自分の睡眠の状態を冷静に判断することできます。1時間早く眠るために、仕事や家事の時間も含めてトータルで考え直してみるのもいいですよ。
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人間の体はまだまだ、未知な部分が多く、解明されていないことが多いです。睡眠時間は何時間が良い!と言われたからと情報に振り回されず、まずは自分が快適かをチェックしてみましょう。睡眠負債は日頃からコツコツと返済するしか、方法はありません。生活リズムを崩さないように心掛け、快適で楽しい毎日をおくりたいものですね。