作家の器は、ギャラリーや専門店以外でも、生活雑貨店やセレクトショップなどでも目にすることが増えているかと思います。それは、器作家自身も生活のなかで使ってもらえるものを作りたいと考えるようになり、いつもの食卓に取り入れやすく、家庭料理を見栄え良く演出してくれるものが増えたから。手仕事ならではのぬくもりのある器は、家庭料理がなぜかおいしく感じられます。作家の器は、形が可愛らしいもの、絵付けが素敵なもの、色がきれいなものなど置いておくだけでも様になることも魅力。器屋店主の私が今注目している、毎日使いたくなる器作家の作品をご紹介します。
目次
★★★久野靖史作「輪花皿」★★★
繊細なフォルムと鉄器のような質感の黒が
何気なく料理を盛っても様になる
久野さんの作品のなかでいちばん人気の「輪花皿(りんかざら)」は花形が特徴。この鉄器のようなニュアンスのある黒は、和洋どんな料理もしっくりくるから不思議です。 25㎝や28㎝径の大皿には、ステーキやハンバーグなどメインとなる肉料理やパスタなどを盛り付けると料理が引き立ちます。他にはお寿司や、お造りなどを盛り合わせてもカッコいいですよ。19.5㎝や22㎝径の中皿には、白身魚の焼き魚が似合います。キンピラやホウレンソウのおひたしなどの付け合わせも色鮮やかに。華やかな器なので、我が家では、普段使いの他に、おもてなしのテーブルでも活躍しています。
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★★★八田 亨作「白掛飯碗」★★★
土ものならではの素朴さが魅力。
ごはんの一粒一粒が味わえる飯椀
八田さんの飯碗(ごはん茶碗)は、自分で掘った粘土を使い、昔ながらの薪を使った窯で焼いているのが特徴。薪の窯は、薪をくべながら焼くため、温度調節なども難しく、焼き上がりもある程度自然任せ。作家の感だけが頼りの焼き方です。焼き上がりにギャンブル要素があるので、そこが面白いとあえて薪の窯で器を焼いているそう。八田さんの器は、土そのものを感じることができ、力強い印象です。こういう器にごはんを盛って食べると、お米の一粒一粒をしっかり味わえるんです。特に新米は、この飯碗で食べると絶品ですよ。
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★★★小峠貴美子作「染付唐草文盛鉢」★★★
にじむ青で描かれた可憐な花文様が
茶色い料理をおいしく彩る
真っ白なベースに、にじみのある青で花唐草文様の描かれた盛り鉢は、3〜4人分の煮物やサラダを盛るのにちょうど良い深さと大きさ。土ものですから、磁器よりもぽってりとした厚みがあり、どっしりとした安定感があります。和洋どちらの料理にも合いますが、おすすめは和食。この雰囲気には筑前煮のような煮物を、ざっくり盛るだけで実においしそう。料理に緑の野菜がないときも、染付の青がそれを補ってくれますから、煮物などの茶色い料理にぴったりですよ。
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★★★片瀬和宏作「マグカップ」★★★
石のようなゴツゴツとした手触りに
ポップな色使いがユニークなマグカップ
ゴツゴツと大きな石が混ざった粗めの土を使った荒々しさのあるテクスチャーに、ポップな色使いが意外性のあるキュートなマグカップ。どことなく、お伽噺に出てくるお菓子のようで、眺めているだけで楽しくなってしまいます。マグカップは皿や鉢と違い、自分だけが使うものなので、ちょっと遊び心のあるものを選んでも楽しいですよ。私はこのマグを、自宅で仕事をするときに愛用しています。パソコンなどの無機質で色のないデスク周りに、ポップなカラーが加わると、気分が上がって仕事もはかどります。手に持ったときの、ずしっとした存在感もいい感じですよ!
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★★★岡崎慧佑作「スープボウル」★★★
朽ちた金属や風化した岩のような
味わいのあるテクスャーが印象的
岡崎さんの器はどことなくさびた鉄のような、ざらっとした岩肌のような質感がカッコいい。 この丸い器は、もともとはお坊さんが修行で使う托鉢(たくはつ)の形です。スープボウルという名前ですから、具だくさんなスープをはじめ、1人分の煮物やサラダの器としても◎。私が使うなら、ラタトゥイユなどの彩り野菜の煮込みとか、お汁粉、カフェオレボウルにしてもいいかなぁと思います。洋ものを盛っても和ものを盛ってもスタイリッシュに見せてくれる存在感のある器です。
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いかがですか? 何を買ったらいいか迷ったら、
- いつも自分が使っている器の大きさを基準に選ぶ
- 扱いやすい形や素材か、収納しやすいかをチェック
- どんな料理を盛り付けたいかイメージしてみる
そんなことを意識してみてください。今回紹介した器は、どれも普段の食卓で楽しく使えるものばかりです。5人の器を見る機会がありましたら、ぜひ、手にしてみてくださいね。