ヴィンテージマンションに自分たちで探した古い家具や作家ものでインテリアを育てているお宅を拝見。歴史を積み重ねたものが醸し出す独特の雰囲気と落ち着きに満ちた空間に、絶妙なバランスで加えられた現代作家の作品。少しずつ揃えて自分好みに育っていくインテリアの、その途中経過を見せていただきました。
井の頭恩賜公園のほど近く、築50数年のヴィンテージマンションにお住まいの富田さんご夫妻。もともと友人が住んでいた物件を気に入って引き継ぎ、2013年から暮らし始めることに。「周りは住宅街で緑も多いため、駅近とは思えないほどの静けさ。立地条件も含めて直感でいいなと思いました」(大悟さん)
間取りは1LDK +納戸の60㎡ほど。大人2人で住むにはちょうどいい広さです。「以前はリビングと和室に区切られていたようですが、友人が仕切りをなくし、全面フローリング敷きのリビングダイニングとしてリノベーションしました。そのおかげで空間に統一感が生まれ、ゆったり広々と使うことができます」(里奈さん)。そんな住まいに、ギャラリー巡りが趣味のお二人がお気に入りの家具を集めていきました。
ヴィンテージマンションに似合う
古き良き時代の家具たちが
部屋に落ち着きを加える
「温もりのあるチーク材の家具が好みだったので、ヴィンテージの北欧家具を中心に探しました。そんななか、出合ったのがイギリスの老舗家具ブランド『G-PLAN』の1970年代のダイニングテーブル(記事冒頭の写真参照)。趣のある部屋にもぴったりだと思いひとめ惚れして購入しました」(大悟さん)。同じようにご夫婦で集めた、こだわりの古家具が集まり、独特の落ち着いた雰囲気を醸し出しています。
リビング奥はプロジェクターやアナログのレコードプレーヤーを設置したラウンジ。「この空間もチーク材の家具でまとめています。手前のソファはハンス・J・ウェグナーの「GE290」、奥はフィン・ユールの「スペードチェア」です。どちらも出合ってからずっと大切にしているソファなので、毎晩食後におしゃべりや音楽鑑賞をしていると、あっという間に時間がたっているんですよ」(大悟さん)
ヴィンテージチェアは
今もコツコツと収集中
テーブルに合わせるチェアもヴィンテージにこだわり、インターネットなどでお気に入りを見つけては1脚ずつ買い足していったそう。「ヴィンテージのいいところは、家具ひとつひとつにストーリーが感じられるとこと。例えばアーコールのチェアは脚の部分に犬の噛み跡があるんです。以前使っていた方の愛犬がきっと噛んだのでしょうね。そんな昔の名残も愛おしく感じられ、使うほどに愛着が湧いてくるんです」
家全体が博物館のように
ヴィンテージの宝庫
お二人のヴィンテージ好きは和洋問いません。リビング脇には大悟さんが実家から持ってきた茶だんすが設えられ、その付近でルイスポールセンのペンダント「PH5-4 1/2」が空間を優しく包み込んでいます。「この照明は長い間デンマークの公共施設で使われていたものらしく、オリジナルは結構珍しいものなんですよ」(大悟さん)。リビングのワンコーナーにはコレクションの空き瓶をいくつも並べてノスタルジックな世界観を演出。国も時代もばらばらなものですが、お二人の好みで選んだアートは不思議と一つにまとまって空間になじんでいます。
直感で選んだ現代作家の作品が
単に懐かしいだけじゃない表情を形作る
温もりあるヴィンテージ家具で統一しているにもかかわらず、洗練された雰囲気なのは要所要所に現代作家の作品を取り入れているから。「ギャラリーや個展巡りが2人の共通の趣味なんです。訪問した先々でひと目惚れした作品を我が家に迎え入れ、主に私がディスプレイを担当しています。眺めているだけで幸せな気分になりますし、勢いのある作家さんたちの息吹が空間に表情を与えてくれるんです」(大悟さん)
・・・・・・
「2人ともゲストを招いて飲んだり食べたりするのが大好きなので、来客にリラックスしてもらえるような空間作りを意識しています。コレクションしているアートや家具は私たちの趣味ですが、遊びに来る友人の好みなどを考えながら、おもてなしの意味も込めてインテリアを考えるのは楽しいですよ」(大悟さん)。こんなふうに家を育てていくのも、なんだか楽しそうですね。
撮影/相澤琢磨