その体調不良、もしかして「糖質のとりすぎ」が原因かも?

「疲れたときには甘いもの」という言葉がありますが、実は疲れを引き起こしているのが甘いものということも。甘いもの=糖質のとり方を意識してほしいと医師の石原新菜さん。糖質が疲れを招くとは一体どういうことなのか? 体の中で何が起きているのかを伺いました。

目次

「血糖値スパイク」が疲れを引きす⁉

糖質は、タンパク質、脂質と並ぶ三大栄養素のひとつです。糖質をとること自体が体に悪いわけではありません。ではなぜ糖質が疲れやだるさの原因になっているのでしょうか?

「それは食事をすることによって血糖値が一気に上がってしまうことが問題なのです。糖質はごはん、パン、パスタ、じゃがいもなどの炭水化物に多く含まれていますが、なかでも白米、小麦粉、白砂糖といった精製された糖質を食べると、血糖値(血液の中のブドウ糖の濃度)が一気に上昇。これを血糖値スパイクといいますが、体内で起こると、体は血糖値を下げようとして、すい臓からインスリンを大量に分泌します。すると食事をする前よりも血糖値が低い「低血糖」の状態に。すると今度は低くなった血糖値を上げようと、体はアドレナリンを分泌します。そうなるとまるでジェットコースターのような血糖値の乱高下が起こります。この血糖値の乱高下こそがイライラを引き起こしたりだるさや眠気の原因なのです」(イシハラクリニック副院長 石原新菜先生・以下同)

血糖値の上昇が原因かもしれない
主な体調不良はこの3つ

・眠気やだるさ

通常血糖値が上昇すると、すい臓からインスリンが分泌され血糖値を安定させますが、糖分のとりすぎで急激に血糖値が上昇するとインスリンが過剰に分泌され低血糖となります。この状況が続くとブドウ糖が脳内に行き渡らず頭がぼーっとして眠気やだるさを感じることに。

・頭痛

血糖値の乱高下が起きる血糖値スパイクが起きると血管内に大量の活性酸素が生じ、その活性酸素が血管を傷つけることによって頭痛を引き起こします。また低血糖時にはそれを補おうと大量のアドレナリンが出るのですが、その際血管の収縮が起こりこれが原因でズキンズキンと波打つような頭痛をもたらすことも。

・イライラや不安感

急激な糖質摂取で血糖値スパイクができ、低血糖の状態のとき、アドレナリンやノルアドレナリンが分泌され元の状態へと戻そうとするのですが、このアドレナリン、ノルアドレナリンというのは、神経伝達物質のホルモンなので、感情と大きく関わると言われています。これらが血糖値の乱高下により過剰に分泌されるとイライラして怒りっぽくなったり、逆に不安感を増大させたりするのです。

糖質をとりすぎると血糖値の急上昇を招き、あらゆる体調不良の原因になることが分かったところで、日々の食事をどう気をつけるべきか伺いました。

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血糖値急上昇を避ける
4つの食べ方

GI値アラウンド50の食品を選ぶ

血糖値を急上昇させない糖質のとり方のひとつは低GI値の食品を選ぶこと。「血糖上昇率のゆるやかさの度合いをGI値という指標で表し、GI値が低いほど血糖値の上昇がゆるやかな食品と言えます。例えば白米のGI値は81ですが、玄米のGI値は55。目安としてGI値50前後の食品を意識するといいでしょう。急激な上昇を抑えることは、脂肪を合成する働きを持つインスリンの過剰な分泌を防ぎ、結果的に肥満の抑制につながります」。主な低GIの食品としてはそば、春雨、スパゲティ、押し麦、葉物野菜、きのこ類、ブロッコリー、イチゴ、リンゴ、メロン、ミカン、牛乳、チーズ、ヨーグルト、バターなど。食物繊維が豊富ででんぷん質の低い野菜を選び、穀物は精製されていないものと覚えておくといいですよ。ただ、低GIだからといって低糖質とは限らないので注意。

糖質はビタミンB1と一緒にとる

急激に糖質を体内に入れないようにすれば血糖値スパイクはできにくくなります。その方法のひとつとしてビタミンB1を一緒にとるというのもおすすめだとか。「ビタミンB1は、糖質の代謝を促すので積極的にとりたい栄養素です。ビタミンB1が多く含まれるものには、豆類、豚肉などがあります。さらにビタミンB1は、タマネギやニンニクなどに入っているアリシンという物質と一緒になると、よりビタミンB1の吸収がよくなります。豚肉+タマネギ=しょうが焼き、のようにビタミンB1+アリシンの組み合わせを意識すると糖質の代謝が上がるりますよ」

食事は「ベジファースト」を心掛ける

食べ方で取り入れたいのがベジファースト。「野菜を先に食べるのは、食物繊維を取り、その後から食べるごはんやパスタなどの糖質吸収をゆるやかにするためです。日本の懐石料理などは、まさに理想の食べ方なんです。とはいえ毎食懐石料理を食べるのは非現実的なので、サラダから食べる、朝はスムージーを飲んでからなどできる範囲のベジファーストを意識すると疲れづらい身体になれるはずです。ただ、ニンジンやカボチャ、ジャガイモ、トウモロコシなどはGI値が高いので注意です」

空腹時間を作らない!
おやつはナッツやドライフルーツが理想

1日3食が基本ですが、血糖値の急上昇を避けるためには10時、15時のおやつも効果的。「おなかがすいた状態で食べ物をとると、血糖値の急上昇を引き起こしやすいです。それを防ぐには、食間に少量のおやつをとり、おなかがすいた時間を作らないこともポイント。とはいえ、ケーキや、カフェのフラペチーノといった甘いものに走るのは危険! 糖質の塊であることはもちろん、フラペチーノに至ってはかまずに飲めてしまうことも問題。かんで唾液を出すことで、自律神経のバランスを整え、血糖値を降下させるので、甘飲料は実は最も血糖値スパイクができやすい食事とも言えるんです。だから小腹がすいたときや、疲れた時間帯に元気を出したいと、何か甘いものを食べるのであれば、食物繊維も入っている素焼きのナッツ類や砂糖でコーティングされていないドライフルーツがおすすめです」

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糖分=悪ではなく、大切なのはそのとり方。なんとなくだるい、疲れが取れないと感じている方は、毎日の食事の糖分に注目してみてください。

取材したのはこちら

医師・イシハラクリニック副院長、ヒポクラティック・サナトリウム副施設長、健康ソムリエ講師。石原結實のクリニックで主に漢方医学、自然療法、食事療法により、種々の病気の治療にあたる。講演、テレビ、ラジオ、執筆活動と幅広く活躍中。『病気にならない蒸し生姜健康法』『研修医ニーナの731日』等著書多数。近著に『オートミール米化ダイエットレシピ』がある。

石原 新菜さん

https://kenkosommelier.jp/