北欧家具の巨匠「ポール・ケアホルム」幻の名作は、眺めるだけでも価値あり!

北欧デザイン界のなかでも別格の存在感を持つデザイナー、ポール・ケアホルム。今回、現在生産されていない幻の家具が特別に日本で販売されることになりました。数点しかない貴重なもののため、目にする機会もおそらく今回が最後。今この「究極の名作家具」を通して良い家具の条件について考えてみました。

5月15日~6月2日の日程で、東京・銀座の北欧家具メインのインテリアショップDANSK MØBEL GALLERY(ダンスク ムーベル ギャラリー)にて「ポール・ケアホルムが残した名作」と題されたイベントが開催されます(※コロナによる自粛のためイベント期間が変更となりました。展示期間:2020年 6月6日土曜~ 6月30日火曜)。ポール・ケアホルムの今では製造していない“アルミチェア”、ダイニングチェア“ PK12 ”、ダイニングテーブル“PK50 ” の3アイテムが数量限定にて展示販売されるそう。これはかつてケアホルム一族がアメリカのギャラリー向けに数量限定で生産したもので、保存のため保有していたアイテムを特別に譲られたものなのだそうです。今後の製造販売予定もなく、極めて貴重なものゆえにお値段も美術品クラスですが、ケアホルムらしさにあふれた美しい家具をこの目で見るチャンス。眺めていると、本当に良い家具とは何か分かってくる気がします。

目次

デンマーク家具黄金期を支えた
デザイナーのひとりがポール・ケアホルム

デンマーク家具黄金期である1950年代を中心に活躍したデンマーク人デザイナー。木材主流だった当時のデンマーク家具業界にあり、家具の素材としては当時一般的ではなかったスチールも、木と同様に芸術的な繊細さを持つ素材と考え家具の製作に取り入れた異色のデザイナーです。「素材の可能性を追求したい」という彼の言葉通り、スチールやレザー、石など、彼の家具に用いられる素材は他のどの北欧家具とも異なるモダンな美しさを見せています。また極限まで無駄を省いた合理的な構造も彼のデザインの大きな魅力です。今でもフリッツ・ハンセン社から彼の家具は販売されていますが、今回公開されたものは大量生産されておらず、現在では製造していない幻の家具。もちろん今後復刻の予定もないので事実上手に入れられる最後の機会です。

美しいのに丈夫で扱いやすい
「アルミチェア」の先見性

「アルミチェア」 サイズ:H65× W63×D64㎝ 素材:アルミニウム ブラック・イエロー・ブルー・グレーの4色 1,320,000円(税込)

1950年代、ケアホルムは、大量生産可能なアルミニウムの成型という方法を用いて3本脚のイスを開発しました。座面と背もたれは薄いシェルによってなだらかに一体化しています。有名なイームズのシェルチェアなどと同様に、工芸品としての家具から工業製品としての家具への模索がデザインの重要テーマだった時代の作品です。この時期、今まで家具に使われることのなかった新しい素材が積極的に試されました。アルミニウムのシェルは丈夫でありながら金属としては軽量で、ケアホルムもそこに新しい可能性を見出していたようです。残念なことに大量生産されることはありませんでしたが、丈夫で扱いやすく美しいという現代的なコンセプトの家具をこの時代に定義づけた名作のひとつと言っても過言ではありません。このアルミチェアで構想されたシェル構造はケアホルムの代表作、「PK9」にも受け継がれています。

素材の組み合わせで醸し出される
高い質感が魅力の「PK12」

「PK12」サイズ:H68 × W63 × D52㎝ 素材:ステンレス、レザー 2,310,000円(税込)

ケアホルムは1960 年初頭、曲げ木のアームチェアをデザインしましたが、その技術に限界を感じ、素材をスチールに変更してデザインしたのがこの「PK12」。体に直接触れる部分には暖かさを残すためさまざまな材質が考えられました。当初アームにはコルクが用いられていましたが、その後、座面・背もたれともに革を用いた現仕様に。今回販売される特別なPK12はステンレスのフレームがシャープな印象で、革の質感とのコントラストがとても美しいイスです。家具の雰囲気を左右する大きな要素のひとつが材質による質感。置くだけでオーラを放つ「良い家具」の存在感は、素材のコーディネーションの巧みさによる部分もかなり大きいのです。

「 PK50」の考え抜かれた
合理的な構造が持つ美しさ

「PK50」サイズ: H68.5× W240× D80㎝ 素材:マホガニー、スチール 2,640,000 円(税込)

ケアホルムの家具作りの目標のひとつは、「構造を示すこと」でした。モダンで合理的な構造こそが家具の機能や使いやすさを担う必要条件と考えたからです。このテーブル「PK50」の示す構造はとても明快で、質の高いマホガニーで組まれた天板をシンプルこのうえない堅牢なスチール脚がしっかり支えていることが一目で見て取れます。考え抜かれた合理的な構造を追求した結果、何ひとつとして無駄のない完璧で美しいテーブルが誕生したということでしょうか。合理性で使いやすい堅牢な家具は、長く愛され、受け継がれていくものです。これこそがまさに名作家具の大切な条件のひとつ。なお、このPK50は先にご紹介したアームチェアPK12 と対で考えられており、テーブルの脚にスチールを用いることでPK12との調和を図っています。この2点を同時に購入する贅沢には無縁でも、良い家具を選び使いこなすための大きなヒントがそこにあるような気がします。

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とても気軽に買えるような額ではないですが、北欧モダンのエッセンスが詰まったこれらの家具コレクションはまさに眼福。ケアホルムのファンはまさに必見です。レアで歴史的な意味がある逸品を実際に目にできる貴重なチャンスをお見逃しなく。……購入できる人がうらやましい!

 

「ポール・ケアホルムが残した名作」
商品の詳細・お問い合わせは
DANS K MØBEL GALLERY(ダンスク ムーベル ギャラリー)
東京都中央区銀座1- 9-6 松岡第二銀緑館2F
https://www.republicstore-keizo.com/dmg/