梅雨から夏にかけては「なかなか寝付けない」「眠りが浅い」という悩みが増える時期。最近よく「睡眠負債」という言葉を耳にしますが、あなたが最近体がだるいとか、日中も眠たいといった体調不良を感じているなら、もしかしたら眠りに原因があるのかもしれません。健康と眠りの関係について知っておけば、もう少し毎日シャキッと元気に過ごせるかもしれません。
「睡眠負債」という言葉が流行し、私の睡眠って大丈夫かな?と不安に思う人が増えていると同時に「睡眠の質」に目を向ける人が増えつつある今日この頃。眠っている時間自体は計れても、それできちんと足りているのか、質のいい眠りを取れているのかは把握しておきたいところです。そこで、眠りのエキスパートである睡眠コンサルタントの友野なおさんに「睡眠負債って何なの?」そして「私の睡眠は大丈夫?」という疑問を投げかけてみました。
目次
「睡眠負債」は、要するに
“寝不足の蓄積”のことだけど、
これが美容や健康に大きな影響を
睡眠コンサルタントの友野さん曰く、「睡眠負債というのは、簡単にいうと“寝不足が蓄積”した状態」のこと。毎日の睡眠時間が足りていない状態が「睡眠不足」で、その睡眠不足が続くことを、借金が積もりに積もった状態にたとえて「睡眠負債」と呼んでいるのだそうです。要するに言い方が変わっただけで、睡眠不足のことなのですが、この睡眠不足が大きな問題なのです。「臨床学的にも睡眠不足が続いていると、身体的、精神的な病気にかかる率が高いことがわかっています。カリフォルニア大学が行った研究では、1日の睡眠時間が6時間以下の場合、7時間以上眠っている人に比べて風邪をひくリスクが4.24倍高くなるという報告がありました。また、海外の研究チームが行った実験では、6時間睡眠が2週間続くと丸一日徹夜したときと同じレベルの認知機能になることも判明しています」(友野さん・以下同)。丸一日徹夜した状態となると、ボーっとしてしまい、日中仕事や活動がテキパキとできないですよね。これは大問題!さらに睡眠は美容とも大きな関連があるとか…。「睡眠中に分泌される成長ホルモンは、日中受けた肌ダメージの修復・再生を促してくれます。一方、メラトニンというホルモンも分泌され、熟睡を促すとともに抗酸化作用をもっているのでアンチエイジングも期待できるんです」つまり、睡眠不足だと成長ホルモンとメラトニンの恩恵がさほど受けられなくなり、老化が加速してしまうというわけ。
睡眠の量が十分か
簡単なテストでチェック!
このように、睡眠が私たちの健康にとっても美容にとっても欠かせないものということが分かりましたが、それでは一体、睡眠時間はどのくらいとればいいのでしょうか。「人によって最適な睡眠時間はまちまち。3~4時間しか寝ていなくても健康で高いパフォーマンスを発揮できる“ショートスリーパー”と呼ばれる人たちも少数いますが、たいていの人はそれでは到底足りていません」。また、睡眠時間と同じく大切にしたいのが睡眠の質。それは長く寝れば質のいい眠りなのかというと、そうでもないようです。「睡眠というのは、深い睡眠「ノンレム睡眠」と浅い睡眠「レム睡眠」のセットを朝まで4~5回繰り返すものですが、大事なのは最初の3時間。疲労回復&若返りホルモンは第1周期の最初の「ノンレム睡眠」で大量分泌され、ここが浅くなってしまうと睡眠リズムにメリハリがなくなり、その夜の睡眠全体がガタガタに乱れる可能性も。つまり、質の良い睡眠というのは、入眠3時間で深い眠りをとれている睡眠のこと。これができていないと、夜中に何度も目を覚ましたり、朝起きても身体が重く感じて、日中ボーっとしてしまったり…。このようなことにならないように寝具を見直したり、寝る前にテレビやスマホを見ないなどして、睡眠の質を上げる努力をしましょう」。では、自分が良質な睡眠をしっかりと取れているのかどうか、簡単なリストでチェックしてみましょう。
「あなたの睡眠は足りている?」度チェックリスト
☑ 朝すっきりした気分で起きられない
☑ 朝起きて排便がない
☑ 朝食を毎日食べていない
☑ 午前中に眠気におそわれることがある
☑ 休日は平日より2時間以上寝ている
「実はこのテスト、1つでも当てはまったら要注意なんです。3つ以上当てはまった人は赤信号! 睡眠時間が足りていないことが明らかです。どんな弊害が起こるかというと睡眠不足が蓄積すると疲労も蓄積します。それが積もり積もって体だけでなく心にまでダメージを与えてしまう恐れがあるんです。だからいずれかひとつでも当てはまった人は睡眠負債予備軍と言えます」。
睡眠負債は地道に返済するしかない⁉
まずは、寝る時間を一時間前倒ししてみて
「睡眠負債」はボーナス一括払いのように、まとめて返済することができません。睡眠時間を長くすればいいのであれば、休日に夕方まで寝ていればいいような気もしますが、それは逆効果なのだそう。「多額の借金を無理してまとめて返済すると結果的に自分を苦しめるように、極端な寝だめをすると体内時計が狂ってさらに疲れが増してしまい、月曜の朝がよけいに辛くなるだけです。『睡眠負債』を返済するには、ずばり”就寝時間を1時間前倒し”にすること。そしてお昼寝の習慣をつけることです。これを毎日続ける以外に解消法はありません! お昼寝のポイントは午後3時までに15~20分間、座った姿勢のまま寝るようにしてください」。睡眠負債はたまると恐ろしいもの。サッカーのワールドカップ以降何となく体調が悪いなんて人は、もしかしたら睡眠負債がたまりはじめているのかもしれません。そんなときは、毎日コツコツと、少しづつ返済していくしか解決策はなさそうです。
監修
睡眠コンサルタント、株式会社SEA Trinity代表取締役、科学でわかるねむりの環境・空間ラボ主宰。自身が睡眠を改善したことにより15kgのダイエットと体質改善に成功した経験から、睡眠を専門的に研究。日本睡眠学会、日本睡眠環境学会、一般社団法人 睡眠改善協議会 正会員。行動療法からの睡眠改善、快眠を促す寝室空間づくりを得意とし、全国での講演活動、健康・美容市場における企業の商品開発やプロモーションのコンサルテーションを行う。