生乾きの臭い最大の敵【モラクセラ菌】撃退9つの知恵

梅雨が明けても気になる洗濯物の“生乾き臭”。蒸し暑い夏場から長雨が続く秋にかけても、その悩みは続きます。この臭いの主な原因となるのが「モラクセラ菌」。撃退法や正しい洗濯法を、洗濯ソムリエ・松延友記さんに教えていただきました。

目次

生乾き臭の主な原因は
モラクセラ菌の排泄物

 

臭いの原因はなんとなく「雑菌の繁殖」とお気づきの方も多いと思いますが、最近ではその研究が進み、主な原因は「モラクセラ菌」だと特定されました。この菌は洗濯物だけでなく、人の口内や家の中のさまざまな場所に普通に存在している常在菌。「臭いの原因は厳密にいうとモラクセラ菌の排泄物。菌そのものが臭うのではなく、いわゆる“ふん”が臭いを発生させています。水分や皮脂汚れ、洗剤の残りかすなどをエサにして増殖するので、洗濯槽や洗濯かごの中などランドリー周りは最も菌が繁殖しやすい場所ですね。気温が20〜25℃のときに繁殖しやすく、梅雨から夏場にかけては湿度も高いため、この時期は特に注意が必要です」(洗濯ソムリエ・松延友記さん 以下同)

お洒落な新感覚コインランドリー「フレディ レック・ウォッシュサロン」のプロデューサー松延友記さんは、洗濯ソムリエとしても活躍中。

生乾きの嫌な臭いを解消するには、モラクセラ菌を増殖させないことが大事。そして、臭ってしまった際はきちんと菌を死滅させること。モラクセラ菌の特徴をおさえながら、その対策を学びましょう。

モラクセラ菌は湿気や皮脂汚れがエサ。
洗濯槽に汚れ物を放り込むのはダメ!

「汗で衣類が湿ったり、皮脂汚れがつきやすい夏。この湿気と皮脂汚れこそモラクセラ菌の栄養素です。よく洗濯槽に洗濯するものをどんどん放り込んで溜めている方がいますが、湿気がこもりやすく通気性も悪く、裏側にカビが発生していることも多い洗濯槽内は、汚れた洗濯物を置いておくには最悪の場所。菌が増殖し、溜めてある洗濯物に広がってしまう恐れがあります。洗濯前のものは、きちんと洗濯かごを用意してそこに入れるようにしてください」

濡れているものと濡れてないものは
洗濯かごを分けて入れる

「手を拭いたタオルや汗をかいた衣類など、濡れたものを乾いたものと一緒にすると、濡れていなかったものまで湿ってしまいモラクセラ菌が増殖する可能性があります。本来なら乾かしてから入れるか、すぐに洗濯するのがベストですが、それはなかなか難しいですよね。通常は色柄ものとそれ以外で分けている人も、湿度が高いシーズンは洗濯物を濡れてるものと濡れていないもので分けて保管しましょう」

通気性がよく、汚れた際にも洗えいやすいメッシュ状でプラスチック製のかごが使いやすいそうです。写真は、『フレディ レック・ウォッシュサロン』のランドリーバスケットビッグ〈左〉とランドリーバスケット スリム〈右〉

洗濯物は少なめで、すすぎは2回!
汚れも多くなる夏場は、しっかり洗う

皮脂汚れや洗剤の残りかすは、モラクセラ菌の栄養分となるので、しっかり落としきることが大切。「最近は、すすぎは1回でいいという洗剤が多いですが、特に湿気の多い時期は2回のすすぎをおすすめします。洗濯物に残った洗剤は、モラクセラ菌のエサになるのでしっかりすすいで、汚れも洗剤も落としきることが大切です。また、洗濯物を入れすぎると洗浄率が下がるため、特に皮脂汚れが多い夏場は洗濯機の容量の7〜8割にとどめるようにしましょう。洗剤は“漂白剤入り”と書かれた除菌効果のある粉洗剤がおすすめ。粉洗剤は水と混じり合うときに、汚れを落とす効果がいちばん高まります。入れすぎは溶け残りの原因になるので、分量は守るようにしてください」

風呂の残り湯を使う場合は
入浴後すぐのお湯以外はNG!

「40℃前後のお湯で洗うことで、モラクセラ菌のエサとなる皮脂汚れは一気に落ちやすくなります。モラクセラ菌の繁殖を抑えるには60℃以上のお湯が最適ですが、それだと生地が傷んでしまう可能性も。日本ではなかなかお湯が出る給水栓がないので、お風呂の残り湯を使ってもいいですが、ひと晩経つとさまざまな雑菌が繁殖してしまうので、必ず入浴直後のお湯を使うようにしてください。清潔なお湯を使うことが生乾き臭対策には肝心です」

モラクセラ菌は5時間経つと一気に増殖!

衣類などが湿ったまま放ってしまうと、約5時間でモラクセラ菌が繁殖し始めるといいます。そのため、生乾き臭を防ぐには洗濯後5時間以内が勝負!「まずは脱水時間をいつもより1〜2分長めにして、しっかり水分を飛ばしてから干しましょう。これだけでも一気に乾きやすくなります。洗い終わったら、すぐに洗濯機から取り出してください。終わっているのに放置している間にも菌は増えていきます。乾いた空気を当てることが重要なので、外干しと部屋干しはどちらでも大丈夫ですが、夏は急な雨の心配もあるので外干しする場合は要注意。部屋干しする際は冷房を入れて湿度を下げ、サーキューレーターなどを回してしっかりと風を当て、5時間以内に乾かすのがポイントです」

モラクセラ菌は紫外線に強い。
天日干しで殺菌できません

日本では洗濯物は天日干しすることで殺菌できると思っている人も多いですが、紫外線に強いのがモラクセラ菌の特徴。「もちろん、晴れの日のほうが空気が乾燥しているので、モラクセラ菌は繁殖しにくくなります。ですが、日光に当てたからといって、殺菌できるというわけではありません。今は昔と比べて紫外線が強いので衣類が色褪せしやすく、外気の汚れが洗濯物に付着するというデメリットもあります。きちんと汚れを落として手早く乾燥させることが大事で、室内干しか外で天日にさらすかどうかは実はあまり重要ではないんです」

積極的に殺菌するなら、
60℃以上の熱を加える!

◎乾かす前にアイロンを当てるのも効果的
「脱水後の乾く前に高温を当てるのがポイント。乾いた後では、モラクセラ菌は死滅しても排泄物が残ってしまう可能性があります。先に7〜8割をアイロンで乾かしてから干すことで、菌は発生しづらくなり、乾燥時間の短縮にもつながります」

◎コインランドリーを活用
「家庭用の電気乾燥機は60℃以上まで温度が上がらないものがほとんどです。コインランドリーのガス乾燥機なら70〜80℃まで上がるので、モラクセラ菌はもちろん、ほとんどの菌を死滅させることができます。生乾きしやすい時期こそ、上手に活用してみてください」

それでも生乾き臭がしちゃったら
60℃以上のお湯に浸け込む!

「生乾き臭が出てしまったものは、基本的にはもう一度洗うことで解消できます。それでも臭いが残ってしまう場合は、60℃以上のお湯に浸け置きしてください。漂白剤なしでも、モラクセラ菌の繁殖を抑えることができます」

臭ったタオルなどは60℃ほどのお湯の中で30分〜1時間ほど放置。洗濯表記記号に記載された液温の限度は事前にチェックしておいて。写真は、直径40㎝弱の程よい大きさで手洗いのときなどにも重宝する『フレディ レック・ウォッシュサロン』のウォッシュタブ

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最近注目を集めているモラクセラ菌ですが、意外と知らなかった事実も多いのではないでしょうか? 大切なのは、モラクセラ菌を繁殖させる環境をつくらないことと、熱を当ててしっかり菌を死滅させること。ちょっとしたひと手間で、生乾きの嫌な臭いも解消できるはずです。まだまだ湿気の多い時期が続きますので、ぜひ実践してみてください。

(撮影/石田純子)

取材したのはこちら

「前向きなココロとライフスタイルがつくれるようなモノ、コトをランドリーシーンから」をコンセプトにした、ベルリン生まれの「フレディ レック・ウォッシュサロン」。こちらの店舗ではカフェやワークショップも併設し、待ち時間にも心地よい時間が過ごせ、人々が集い憩える空間を提供。

東京都目黒区中央町1-3–13
☎︎03–6412–8671(9:00〜21:00)
コインランドリー/24時間営業
洗濯代行・クリーニング・カフェラウンジ・グッズショップ/9:00〜21:00

フレディ レック・ウォッシュサロン トーキョー

https://www.freddy-leck-sein-waschsalon.jp/

監修

「フレディ レック・ウォッシュサロン」の日本での展開におけるプロデュースを担当。洗濯ソムリエとしての資格も持ち、毎日の洗濯の時間や空間を楽しく心地の良いものにするアイデアを教えてくれます。

松延友記さん