メーカーのNB(ナショナルブランド)商品より価格が控えめに設定されたPB(プライベート)商品。スーパーで見つけるとつい手にとってしまいがちですが、なかには品質よりも儲けを第一に考えた、安いだけでおいしくない商品もあるそうです。その見分け方を食品管理のエキスパート・河岸宏和さんがレクチャーします。
最近では有名レストランと共同開発したものなど話題性のあるPB商品が増え、選ぶ楽しさがますます広がっています。消費者にとっては「低価格」というところが大きな魅力ですよね。「PB商品はスーパーのオリジナルだからといっても、自社で開発しているわけではないんですよ。そのほとんどは、食品メーカーが作っています。余力のあるメーカーに頼めば固定費が不要になり、PB商品のほとんどは広告費もかからないから低価格が実現するのです」(食品安全教育研究所代表河岸和宏さん・以下同)。まずは、代表的な3つのプライベートブランドの特徴を見ていきましょう。
目次
人気の3大PB商品の
特徴をチェック!
★★★セブン&アイ★★★
「セブンプレミアム」
価格よりも品質を重視
「これまで価格中心で作られることが多かったPBの常識をくつがえし、消費者に提供する“価値”を重視した安心・安全なブランドとして2007年に誕生しました。49アイテムからスタートし、今では4000以上もの商品を提供しています。最上級ブランドの『セブンプレミアムゴールド』や、生活雑貨を扱う『セブンプレミアムライフスタイル』もありあらゆる層から人気です。少し高くてもおいしい商品は、固定ファンも多いようです」
★★★イオングループ★★★
「トップバリュ」
お値打ちアイテムに定評あり
「1974年に85円という低価格のオリジナルカップラーメンを発売したのがPB商品誕生のきっかけ。“良い商品をより安く提供する”をモットーに、食品はもちろん、衣料品や家具など、暮らしまわりのお値打ち品を提供しています。現在は『トップバリュ』のほか、化学肥料等をなるべく使わない商品『トップバリュグリーンアイ』、高品質・低価格の『トップバリュセレクト』、コストパフォーマンスの高い『トップバリュベストプライス』を展開。概して低価格で品質の良いところが魅力です」
★★★成城石井★★★
「成城石井desica」
本当のおいしさを追求
「『おいしい、こだわり、安心・安全』がモットーの成城石井のPB商品。牛乳からドレッシングまで、さまざまなこだわりアイテムが揃いますが、2017年からは成城石井“でしか”できない、最高峰のオリジナル商品シリーズ『desica(デシカ)』の販売もスタート。レトルト食品や冷凍食品など、徐々にアイテムを広げ、ファンを増やしています。高価格帯のリッチなPBは、今後に注目したいですね」
この人気3大PBは、品質も良くおいしい商品が多いですが、「PB商品には、消費者のことを第一に考え、食品メーカーとタッグを組み、固定費などが浮いた分を原材料に使い、よりおいしいものを目指しているスーパーと、メーカー側が不利になる条件を提示し、劣悪な商品を販売し儲けを優先したスーパーが存在します。後者は食品メーカーを苦しめる存在なので選ばないようにしてくださいね」とは、河本さんの弁。では、“優良PB”はどう見分ける?
豆腐の原材料を見れば、
そのPB商品の考え方が分かる!
PB商品に対する姿勢の見抜き方として一番分かりやすいのは豆腐の原材料をチェックすること。「凝固剤にグルコノデルタラクトン(以下、GDL)が使われていたら要注意。にがりだけで作る場合に比べて、豆乳の濃度を2~3倍に薄めても固まるからです。つまり、同じ大豆の量で、2~3倍もの豆腐が作れるということ。価格は抑えられますが、その分味も風味も落ちます」。また、たとえGDLが使われていなくても、栄養成分表示の“タンパク質”からも善し悪しを判断できるんだとか。「タンパク質の含有量が多いということは、それだけ大豆を使っていることになるので、そのスーパーは豆腐の味を重視しているということになるでしょう。逆に少なければ、残念ながら儲けに走っているとことになります」。手頃な価格帯の豆腐なら、どのスーパーにも売られているので手軽にチェックができます。さっそく代表的な「セブンプレミアム」「トップバリュ」「成城石井(残念ながらPB商品のdesicaでの取り扱いがなかったので、店オリジナルの商品をセレクト)」の3ブランドの絹豆腐を食べ比べてみました!
~おさらい~
豆腐を買うときにチェックすべきはココ!
◽︎凝固剤にGDLが使われていたらNG!
◽︎タンパク質量はなるべく多いものが◎
ただ安いだけじゃない!
河岸さんお墨付きの本当に良いPBは?
「PB商品の善し悪しの見抜き方を紹介してきましたが、結局のところ、消費者はもちろん、食品メーカーや生産者、素材そのものにも敬意を払い、純粋に“安全でおいしい”商品を生み出しているブランドこそが本当に良いPB商品と言えると思います」。 河岸さん自身、大手スーパーのPB商品をいろいろ試し、品質や価格、手軽さなど、トータルで考えると『セブンプレミアム』が最もバランスが取れているとのことでした! セブンプレミアムはコンビニのセブンイレブンでも購入できるので、ぜひチェックしてみてください。
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2020年4月からはあらたな食品表示法に基づき、国内で製造されるパッケージには材料名、添加物、アレルゲン、栄養成分などが明確に表示されるようになります。消費者は商品にどんな原料が使われているのかを簡単に把握できるようになるので、これからは価格だけで判断せず、品質もしっかり吟味していきましょう。安心・安全な食べ物が、健やかな毎日を作ります!
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食品安全教育研究所代表。1958年、北海道生まれ。帯広畜産大学を卒業後、農場から食卓までの品質管理に携わる。これまでに経験した品質管理業務は、養鶏場、食肉処理場、ハムソーセージ工場、餃子・シューマイ工場、コンビニエンスストア向け惣菜工場、スーパーマーケット厨房衛生管理など多数。毎年100カ所以上の食品工場、厨房などの点検、教育を行う「食品のプロ」。著書に『スーパーの裏側』(東洋経済新報社)、『知らないと危ない! ズルい食品 ヤバい外食』(永岡書店)、『激安食品が30年後の日本を滅ぼす』(辰巳出版)などがある。