食品管理のプロが語る「スーパーの危険な卵」を見分ける2つの方法

夏は暑くて食欲も落ちてきますが、同時に食中毒なども気になる季節。私たちが毎日のように食べている卵も、選び方次第でそのリスクは変わります。食品管理のエキスパート・河岸宏和さんに話を聞いていると、漫然と値段だけで卵を選んじゃダメだということが分かります。食品の安心・安全を揺るがす“スーパーの裏側”を教えていただきました。

温泉卵や卵かけごはんなど、その食べ方のバリエーションの多さからも、日本人の卵好きが分かりますよね。「日本は世界有数の卵消費国。1年間で国民1人あたり、平均330個もの卵を食べているんです」(食品安全教育研究所代表 河岸和宏さん・以下同)。そんな私たちの需要に応えるべく、スーパーでは、“おひとりさま1パックまで99円”といった特売卵をよく見かけます。「毎日同じような量の卵が生まれるはずなのに、特売日だけ店頭に山積みにされるのはなぜか分かりますか?」。パック詰めされた卵の“カラクリ”や 卵を購入するときに気をつけなくてはいけないポイントを知っておくべきだと食品管理のプロ河岸さんは話しています。

卵は「賞味期限」だけではなく
「産卵日」が書いてあるものを選ぶ

このパックには“産卵日”が書いてありますが、全てのパックに表記されているわけではありません。消費者がチェックすべきは賞味期限ではなく“産卵日(採卵日)”。あなたはきちんと見ていますか?

産地やブランドなど、卵を選ぶ基準はいろいろあると思います。賞味期限もそのひとつ。「賞味期限は、卵をパック詰めした日から14日先の日付を印字しています。産卵日から換算して日付を決めていると思われがちですが違いますよ」。これだけ聞くと、特に問題ないように思われるかもしれませんが、“卵をパック詰めする日”という点にカラクリがあるようです。

なぜお客さんが多い休日のスーパーでも
卵は売り切れないのか?

現在、国内の養鶏場は小さな個人農家と大規模養鶏場に分けられます。「産卵後、集められた卵はパック工場にトラックで運ばれ、相場を見ながらチルド管理された場所で洗卵・選別されていきます。チルド保管された卵は、取引先スーパーからの注文に応じてパック詰めされスーパーに移動。つまり、平日は100パック出荷のところを“特売日だから300パック”と、出荷数を調整します」。ということは……、“特売日”の卵には、前日産卵日だったものも、産卵から1週間経った卵も、パック詰めから換算して同じ賞味期限で出荷されているものが混在している可能性があるということです。

産卵日も印字しているかどうか
良心的なスーパーを判断するひとつの目安

それでは私たち消費者は、何を基準にスーパーで卵を選べばよいのでしょうか。「法律上、賞味期限を明記していれば産卵日まで印字する必要はありません。ただ、スーパーによっては産卵(採卵日)まで丁寧に記しているところもあります」。卵の賞味期限表記は、卵をパック詰めした日から14日先なので、新鮮かどうかは産卵日を見るのが確実。「自分たちの儲けをいちばんに考えているスーパーは、1パックでも多く卵を売りたい。だから産卵日は伏せて、賞味期限しか表示していない場合もあるんです。ズルい考えでしょう?」

卵の常温販売はサルモネラ菌の温床。
冷蔵販売しているお店を選んで!

「販売時だけではなく、スーパーに並ぶまでの全ての工程でチルド化されていることが望ましいですが、せめて店頭で冷蔵販売されているスーパーは消費者のことを考えた優良店と言えます」

賞味期限のカラクリにも驚きましたが、卵を選ぶ際の注意点は温度管理も重要なんだとか。「常温販売では、サルモネラ菌の危険があるため冷蔵販売しているスーパーか、常に冷蔵販売しているコンビニで卵を選ぶのが賢明でしょう」。最近はふわとろの半熟オムライスや卵かけごはんがブームですが、卵はサルモネラ菌の宝庫。運が悪ければサルモネラ中毒にかかることだってあるのです。「欧米では菌が繁殖しないように冷蔵販売されています。もちろん生卵を食べる習慣もありません。先進国で卵を常温販売しているのは日本ぐらいではないでしょうか」。もともと自然で育つものだから常温で卵が売っていても、大丈夫と思いがちですが、サルモネラ菌が増殖する危険な状態です。「ちなみに一般的なスーパーの販売温度である25℃で保管すれば21日間は大丈夫です。真夏の温度36℃で保管していると、わずか1日で食中毒が起きるレベルまでサルモネラ菌は増えてしまいます」。安全面を考慮して、ぜひ冷蔵販売しているスーパーを選ぶようにしましょう。

おさらい
卵を買うときのチェックポイント

安心しておいしく卵を食べるなら、冷蔵ケースに入ったものを選ぶのはもちろん、買うときに以下の表記も気にしてみてくださいね! ちなみに茶玉は栄養素が高いと思われていますが、卵の色は鳥の羽の色、黄身の色は餌の色と同じです。
産卵日・採卵日が表示してある
生産農場
産んだ鳥の種類
何を食べて産んだ鳥か

普段、何気なく食べている卵にはこのようなカラクリが隠れていたんですね!  安さや手軽さだけで選ぶのではなく、こうした裏側を知った上で、安心して食べられる卵を選びたいものです。今回河岸さんからお話を伺って以来、我が家でも卵選びは産卵日印字&冷蔵販売のものしか買わなくなりました。

監修

食品安全教育研究所代表。1958年、北海道生まれ。帯広畜産大学を卒業後、農場から食卓までの品質管理に携わる。これまでに経験した品質管理業務は、養鶏場、食肉処理場、ハムソーセージ工場、餃子・シューマイ工場、コンビニエンスストア向け惣菜工場、スーパーマーケット厨房衛生管理など多数。毎年100カ所以上の食品工場、厨房などの点検、教育を行う「食品のプロ」。著書に『スーパーの裏側』(東洋経済新報社)、『知らないと危ない! ズルい食品 ヤバい外食』(永岡書店)、『激安食品が30年後の日本を滅ぼす』(辰巳出版)などがある。

河岸宏和

http://ja8mrx.o.oo7.jp/koujyou1.htm