日本に限らずマスクをつけた生活が世界中で日常の風景になっています。長時間のマスク着用で増えているのが顔の肌トラブル。いわば「マスク肌荒れ」で皮膚科に相談に来る人が増えているそうです。日々どこに注意すべきなのか、ドクターにアドバイスを聞いてきました。
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、外出時のマスク着用が新しい生活様式のひとつになっていますが、「クリニックでもこの1カ月でマスクによる赤みやかゆみ、そして吹き出物が出てしまった、ニキビが悪化したという相談が急激に増えています」(シロノクリニック恵比寿 医局長 江馬 潤先生・以下同)。
目次
マスク肌荒れの三大トラブル
✅ マスクと肌の摩擦で吹き出物が悪化
特に口から顎にかけて、ニキビが悪化しているなら、それはマスクとの摩擦が原因かもしれません。大人のニキビ、吹き出物は摩擦によって生じやすいという特長があります。また、これからの季節はマスクの中が蒸れた状態になり雑菌も発生しやすくなります。それもニキビを悪化させる要因に。
✅ いわゆるかぶれた状態の接触皮膚炎
かゆみがあったり赤くただれているなら、接触皮膚炎が考えられます。マスクに付着した花粉やほこり、皮脂などにより悪化するので、常に清潔に保ちたいところ。
✅ 見逃しがちなのが乾燥肌
マスクで蒸れていると保湿されていると勘違いしがちですが、実はマスクを外すときに蒸発する水蒸気が肌の水分も奪っていきます。肌が乾燥すると皮膚のバリア機能も低下するので注意が必要。
ちなみに、梅雨から夏にかけての高温多湿の時期からは、マラセチア真菌による皮膚炎、いわゆる「顔カビ」も増えるということなので気をつけたいところ。「マラセチア真菌はもともと肌にある常在菌です。普段は無害ですが、汗をかき皮脂の分泌が多くなると、毛穴で増殖して強いかゆみや湿疹、皮膚の炎症を招きます」。どの肌トラブルも特別な対策が必要というよりは、すすぎ残しのない洗顔や汗をこまめにふいて清潔に保つなど、日々のケアをしっかりしておくことによってリスクは減らせるとのこと。しっかり覚えておいてくださいね!
マスク荒れを防ぐ日々の注意点は?
◆柔らかい素材、サイズの合ったマスクを
肌荒れ防止の観点で選ぶならコットン100%製のマスク、特にオーガニックコットン製のものがおすすめ。最近では、オーガニックコットンの不織布でできた使い捨てマスクも出始めています。肌との摩擦を減らすなら、柔らかいマスクを選びたいところですが、マスク不足で硬さが気になる場合は、ガーゼを挟むこともひとつの手。またマスク選びで大事なのはサイズ感なんだとか。小さいマスクは肌擦れの原因になるので避けたいところ。ウイルスの侵入を防ぐために、マスク装着時は、鼻や顎を密着させる必要がありますが、マスクで覆われた内側は十分な空間を取りましょう。
◆蒸れ防止のため、こまめに汗をふく
マスクの内側は、自分の呼気によって非常に蒸れた状態にあります。汗は雑菌のもとですから、吸水性のよい清潔なハンカチなどでこまめにふきとってください。その際は、肌をこすらないよう汗を押しあててふき取ること。家の中や十分に換気されている場所であれば、マスクを着けっ放しにせず、適時外して口元の蒸れを解消しましょう。炎症が出ている場合は、保冷剤などで冷やすことも効果的。
◆丁寧な洗顔とたっぷりの保湿
帰宅後マスクをはずしたら、まずは丁寧に洗顔。マスクをつけている間、毛穴には雑菌が入り込んでいます。肌への負担が少ない洗顔料を使って優しく洗い流してください。気づかずに放置しがちなマスクによる乾燥肌対策には、化粧水をたっぷり使って水分補給。乳液やクリームなどで水分が逃げないようにカバーするなどいつも必要以上に保湿を意識してください。
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十分な対策をしていても、肌荒れを引き起こしてしまう場合もあります。「もし赤みやかゆみを感じたら、まずはアイシングで様子を見てください」。やり方は、清潔なガーゼやハンカチに包んだ保冷剤を、気になる部分にそっと当てます。「長時間肌を冷やし続けると、血管が閉じ、肌に悪影響を及ぼす恐れがありますので、アイシング時間は、赤みやかゆみが少し落ち着く程度を目安にしてください」とのこと。アイシングをしても改善されないときや、繰り返し同じ症状が出る場合には、使用していたマスクを持参して、すぐに専門医に相談を。健康を保つために手放せないマスク。正しいマスク選びと、適切な換気、十分な保湿を心掛けて快適なマスクライフを送りたいですね。
〈おまけ〉
アベノマスクが届いたら
水通しをしてから使いましょう
国から各家庭にアベノマスクが配布されていますが、もしマスクのガーゼが固いと感じたら使う前に一度洗い、生地を柔らかくしてから使いましょう。「マスクを洗うときは、手洗いのもみ洗いで大丈夫です。殺菌作用があれば特別な洗剤は必要なく、ハンドソープでも問題ありません。ただし、洗浄成分が少しでも残っていると肌荒れの原因につながりますので、しっかりとすすぎましょう。そして大事なのは、十分に乾燥させること。湿った環境は、雑菌やウイルスを繁殖させてしまうので注意してください」。マスクの洗い方をマスターしておけば、万が一マスクが手に入らないときも安心ですし、肌荒れ予防にもつながります。
監修
北里大学医学部を卒業後、内科研修を経て美容皮膚科に携わるように。「綺麗な肌を手に入れれば、より素晴らしい人生を歩めるのでは」という考えの下、患者ひとりひとりの気持ちに寄り添った丁寧な診察に定評あり。現在はシロノクリニック恵比寿の医局長を務めている。