寝室に求められる要素は、上質な眠りはもちろんのこと、どれだけリラックスしてその部屋で過ごすことができるかどうかです。実は、照明を変えるだけで、寝室の快適度は格段に向上します。そのポイントをプロの視点から語っていただきました。
1日の疲れを寝室で癒やすとき、よりリラックスして過ごすためには何が大切でしょうか? 自分の好きな本を読んだり、音楽を聴いたり、ときには映画を見たり…。さまざまな過ごし方があると思いますが、心地よい眠りに導くためのあり方として特に注目したいのは“寝室照明”です。設計からインテリア小物のコーディネートまでトータルで監修を手掛けるキナリトの亀田麻美子さんに寝室照明における大切なポイントを教えていただきました。
目次
睡眠前の寝室照明の大原則は
仰向けに寝たときに
光源が目に入らないこと
普段の生活の中で、眩しい照明を見つめた後、目を閉じるとまぶたに映像が残ることがあると思います。この残像を眠りの直前に体験してしまうと、神経が刺激されてリラックスしたい睡眠導入時の妨げになってしまいます。そこで亀田さんに気軽に取り入れられる睡眠前照明の考え方を聞いてみると…。
A.直接光源をベッドに向けない
ライトは壁や足元、手元などピンポイントにして、ひとつの光源で部屋全体を明るくしない。「壁付き、床置き、デスクライトなどを用いて、その反射で適度な明るさを確保することを考えましょう」(亀田さん 以下同)
B.間接照明の導入
直接目線に光源が入らない間接照明は、とても有効。「ベッドのヘッドボードの裏側に照明を置くだけでも壁が照らされて間接的な明るさを感じられます。これなら、それほどコストをかけずにできるはず」
C.ライトの傘で明るさ調整
「眩しさを避けるためには、シェードの選定はとても大切。布製なら、色味の濃いものや厚地のものを選定することで光源をぼかすことができ柔らかい光になります」
取り入れやすいスタンドライトは
寝る直前に手元でオンオフできることが◎
シーリングライトを天井に付けた照明が日本では一般的ですが、寝る前に読書やストレッチをして直前に明かりを消したいですよね。わざわざベッドから立ちあがり、部屋の入り口にあるスイッチまで歩くのはせっかくの眠気を妨げてしまいます。「私がおすすめしたいのは、ベッドサイドにナイトテーブルを置いて、手元スイッチ付きのスタンドライトを置くこと。また最近は、照明器具本体や、電球自体にリモコン機能が備わったものも出ています」。リモコンひとつで調光(明るさの調節)や調色(色温度も変化させられる機能)ができるものなら、暖かい布団の中からボタンひとつでその日の体調や気分、用途に合わせて明かりの調整ができます。
最後に基本中の基本。昼白色ではなく
暖かみのある電球色を選ぶ
日本では高度経済成長期に、少ない電源でより明るさを確保しようと4200K(ケルビン)以上の白色蛍光灯が工場やビルだけではなく、一般家庭にも普及しました。LED電球が普及した今も、多くの家庭で白色系の明かりが取り入れられています。「白色は勉強や軽作業にはいいのですが、寝室のようなリラックスしたい場所には、黄色やオレンジの電球色(2800K)がおすすめ。白色系の照明に比べて神経の高ぶりを抑え、目への負担も少ないですよ」
(※ケルビンとは、太陽光や照明などの光源が発する光の色を表した色温度の単位で、高いほど青~白、低いほど黄~赤になっています。光源の温度や明るさとは関係ありません。)
「私はこれまでに、住宅のみならずホテルも含め50案件以上の寝室デザインに携わってきました」。亀田さんが手掛けた実例をもとに、今ある寝室をリノベーションしなくてもちょっとの工夫で、深い眠りへと導くことができる照明のポイントはすぐに実践できるものばかり。インテリアのしつらえを変えたくなる秋こそまずは、寝室照明の見直しからするのはいかがでしょうか?
監修
東京都出身のインテリアデザイナー。住宅・商業施設のブランディングから設計、インテリアスタイリングまでを行う。2014年(株)“stylelabo”を共同設立。よりデザインとじっくり向き合うために、2018年株式会社“キナリト”を設立。