築40年の中古一軒家を購入したUさん(仮名)は、10年住んだ後に大がかりなリノベーションを実施。古い家特有の悩み解消はもとより、ご夫婦が最初に考えたことは、3世代にわたり飼育している猫にも居心地のよい家であること。
ご夫妻が10年前に購入した築40年の二階建て一軒家は、東京の住みたい街ランキングで常に上位をキープする人気の街にあります。駅前から少し離れた静かな住宅街で、3匹の飼い猫がのびのびと散歩に出かける様子をご近所の方々が温かく見守るなど、どこか昭和の懐かしさを感じさせます。
古民家のような佇まいが気に入って購入した家は、一階と二階を合わせておよそ80平米。「築50年になり屋根からの雨漏り、木の窓枠のため雨が降ると膨張し雨戸が閉められないなどの不具合が出てきました。また、東日本大震災以降耐震にも不安があったので建て替えやリノベーションを考え始めました」と施主のUさん。
目次
建て替えではなく
リノベーションを選んだのは、
建蔽率の問題をクリアするため
家の改築や建て替えを検討し始めたときに、まずハードルとなったのは建蔽率についてでした。この家屋が立てられた当時と今では法改正があったため建蔽率の基準が異なります。同じ面積の土地でも、建て替えてしまうと、以前より狭い建物しか許可されない可能性が大きかったのです。そういった問題も踏まえて、夫婦で決めた新しい住み家の条件は次の3つ。
・広さ確保のため、建て替えよりリノベーションを選択
・ペットの猫たちの暮らしやすさも考えた、壁の少ない広い空間設計
・愛着もある古い家のパーツを残すことで、懐かしさのある佇まいに
「建て替えも視野に入れていたのですが、立て替えてしまうと、新しい基準に則って面積の狭い建物しか建てられなくなると知り、土台を残してリノベーションすることにしました」(Uさん・以下同)。改築前は、いわゆる“おばあちゃんち”のような昭和な間取りの家で、二間に分かれていた二階は、壁を取り払い18畳あるリビングダイニングに。天井の梁もむき出しにすることで、広く開放的な空間を手に入れました。これはご夫婦のみならず、ペットの猫たちにも好都合。以前よりものびのびと暮らせているそうです。
古い家のパーツやアンティークを
織り交ぜて、自分好みの空間に仕上げる
改築前の梁や柱を残す以外にも、気に入ったパーツを残しながら自分たちの思い描く家に近づけていきました。壁のテクスチャーを決めたり、雰囲気のあるアンティーク家具を探したり……。ご夫婦好みのスタイルをデザイナーと話し合いながら納得がいくまで考えたそうです。洗面周りは、奥さまのコーディネートによるもの。洗面所に使われた玉ねぎ型のタイルは、色合いや組み合わせを何度も試行錯誤して配置したのだとか。
「インテリアがすごく好みのカフェがあって、そのお店のデザインを参考にして考えました。リノベーションの計画をはじめたら、お店のインテリアや家具がとても気になって。Pinterestなどの画像を見たりしながら、イメージを膨らませていきました」と奥さま。
開放感ある家の要は防寒対策
広い間取りにこそおすすめしたい床暖房
リノベーション以前の家は、その古さから冬の寒さが悩みのひとつでした。改築後も天井が高く18畳あるリビングは、一階から吹き抜けになっていることもあり、風がとおり抜けやすく防寒については対策が必要でした。「階下からあがってくる冷気をシャットアウトするために、階段上に引き戸を取りつけました。以前の家はそれこそとても寒くて、石油ストーブでないとなかなか温まらない日もありました。窓の密閉性を高めたこともあって寒さを感じにくくなくなりましたね。また、寒さ対策のために強くおすすめするのは、床暖房です」。床暖房をつけているだけで自然と空気が暖まり、エアコンを使う機会がほぼなくなったそう。空気が乾燥せず常に快適に過ごせるようになり、猫も床暖房の上で寝ているのだとか。「我が家で採用したのはガス式の床暖房です。人も猫も床にごろんとするのが気持ちいいんですよね。床に猫の爪で傷がつくことはしょっちゅうですが、それほど気にしていません(笑)。時間の経過とともにそれも味わいになり、我が家の思い出になっていくと考えているからです」。
(撮影/松本有隆)