アート好きなLA在住の夫妻が、早めのリタイアを決めて住み家として選んだのはハワイ島。心地よいサステナブルなハワイ生活を満喫するため、そして2人の家族や友人たちを招いて楽しむために、築17年の家に1年かけてDIYしました。モダンなアイランド風をテーマにカスタマイズした自慢の家を見せていただきました。
LAで生まれ育ったトニー・ドナさんは、米国トヨタやホンダ、GMなどでグラフィックデザインやアートディレクションを担当していた広告デザイナー。日本人の奥さま、のりこさんは通訳や翻訳(映像翻訳)をしています。2人ともアートやデザインが大好き。LAでもこだわりの家に住んでいましたが、ゴミゴミして人もアグレッシブなLAから離れて、もっと心に優しい生活をする決断を。思い切ってアーリーリタイアを決めてハワイに移り住みました。その場所は、コナ空港から車で約15分、海抜1700フィートのコーヒー栽培に適したホルアロア。ハワイ島のガイドブックにもなかなか出てこないような、知る人ぞ知る小さな街、画家などのアーチストが集まるエリアです。もともと2人でハワイを訪れた際にとても気に入った場所でした。
実は7年前に、1度ハワイ島の島中を駆け巡り、20軒ほどの物件を下見したそうですが、コレという家には出会えませんでした。その後も定期的にインターネットで物件チェックしていたところ、2016年の11月、ホルアロアに自分たちの理想近い売り物件を発見、すぐさまオファーを入れましたが、残念ながら3日前に買い手がついてしまったと返事が。落胆していましたが、売り手と買い手の条件が整わず、なんと2人の元へ購入のチャンスが訪れたのです。この流れに運命を感じた2人はこの物件を実際見ないで購入を決めてしまったそう。目指したのはモダンアイランド風(現代的なリゾート風スタイル)の家。こだわったのは、1.アートを飾れるスペースをたっぷり作る、2.サステナブルな暮らしを目指す、3.人が集まる家作り。この3点でした。

トニー・ドンナさんと奥さまののりこさん。20年以上LAに住んだ後、ハワイ島へ移住しました。
この家は、木を生かしたバリ風のデザイン。全体的に茶色が目立つので、明るい雰囲気にするために家具もポップな色をセレクト。ベランダからは海やサンセットが見下ろせる息を飲むような景色が広がっています。あちこちに、贅沢なハワイのゆったりした時間を満喫できるポイントを作りました。
- ベランダからの眺望。海の表情は常に変化するので毎日眺めていても飽きないそう。
- ウッディなハワイの家を明るい印象にするために、インテリアはポップな色調のものをセレクト。
- LA時代のリビング。こちらはミッドセンチュリーモダンがテーマでした。©Carin Krasner
- 気持ちいい空気の下で、ゆっくり読書でもと思い、大きな揺りかごをLAからコンテナで輸送。ハワイは家具の種類が少ないので、アメリカ本土からかなり持ち込んだそう。
- 目の前に本棚がある中2階の読書コーナー、Nook(ヌック)です。ヌックとは心地のよいスペースという意味で、アメリカでは階段の踊り場がヌックとして使われることが多い。
- 「せっかく常夏で外が気持ちいいので、バス&シャワールームには天窓を設置しました。天気のよい日の夜は星空がとてもきれいです」(のりこさん)
目次
家族や仲間が集まる家をテーマに
開かれた空間を目指したリノベーション

家のあちこちに、自分たちや来客がくつろぎながら自然を満喫できるスペースを。ベランダのソファーからは海が一望できます。
ハワイの大自然、そして広大な海が広がる素晴らしい眺めがポイントのこのお宅。「ハワイが『アロハ』の心で多くの人たちを暖かく受け入れているように、自分たちも、この家を2人だけで独占するのではなく、家族や仲間を招くことのできる開放的な空間を作って、シェアしたかった」という、のりこさん。風も気持ちいいのでエアコンはなく、窓もほとんど開けたまま。この家を購入した際、ベランダにはブランコがかかっていました。素敵でしたが2人だけしか座れないのでもったない、友人や家族と食事を楽しめるスペースにしたいと、ブランコを取り外し、8人座れるテーブルを設置。あえて椅子も人数が増えても対応できるようにベンチにしました。ベランダにはバーカウンターもあり、充実した大人のアウトドアダイニングができあがりました。2人の家には連日、仲良くなった仲間たちが遊びにくるそうです。自分たちが住むメインの家の隣には「オハナ(家族)」と呼んでいる別棟もあり、キッチン&バス付きのゲストルームになっていますが、いつかはAirbnbで貸し出すことも考えています。
- 前のオーナーがつけていったブランコは素敵でしたが、暮らしていると、2人だけで使うにはもったいないと思い、自分たちで取り外しました。
- ハワイにはDIY専門店も少なくホームセンター程度しかないなか、トニーさんが初の家具作りに挑戦。たまたまあった布をベンチに使いました。
- 家族や友人が遊びにきた時に宿泊している別棟。オハナ(家族)と呼んでいます。オハナは将来的には一般に貸し出すことも考えているとか。
- バーの向こう側がキッチンになっているので、ラナイにゲストが座りながらお食事会をするときに、ここからお料理を出すこともできる便利なバーエリア。
“アートに囲まれていたい”から
飾れるスペースを増やす工夫を

ベッドルームからバスルームへ行くドアが2枚ドアになっていましたが、いつも両方使うことはないので、片面だけにして、その分、壁を増やしました。今はテレビがついていますが、一応アート用スペースです。
トニーさんは筋金入りのアーチスト一家出身。家に飾られている60%のアートはトニーさんの父親、姉など家族の作品で、まるでアートギャラリーのようです。もともとの家は、窓が多くて開放的なところが魅力的なのですが、作品を飾れる壁が少ないのが難点でした。そこで、大きめのドアをあえて小さくして壁面を増やし、スペース確保。「今後は、よりアートが映えるように照明も変える予定です」(トニーさん)。家中に飾られた数々の作品について友人と語り合いながら、おいしい食事やドリンクを嗜み、素晴らしい景色を眺める。それが2人のシンプルで贅沢な楽しみとなっています。
- こちらはオハナ(別棟)の部屋の改修前。キッチンが丸見えだったのと、ここまで大きい入り口がないので、ドアを狭くしてアートを飾る壁をたっぷりとるように変更。
- 壁面が増えた分、アートを飾るスペースが拡大。ベッドもキッチン側に突き出ていたので、レイアウトを変えました。導線も以前より効率的に。
- お父さまの作品。トニーさんのお父さまは、アーチストでトニーさんと同じように広告デザイナーでした。アートへの愛は父親譲り。
- お父さまは今年亡くなりました。認知症になった後、ペンで点をひたすら描き続け、何をしているのか周りが不思議がっていたら、このようなアート作品に。
自然とともに生きてみたいという夢も
ハワイを選んだ大きな理由
LAでも菜園をやっていたドンナ夫妻。ハワイは気候がよく、なんでもすくすく育ちやすい環境で、家の周辺も多くの野菜やフルーツの木に囲まれています。アボカド、オレンジ、グアヴァ、マンゴ、パパイヤの他、家の庭の真ん中にはバナナ園も設置。最近はパイナップルの苗を植え、ハーブや野菜も育てたりとサステナブルな生活を目指して奮闘中です。食卓には、裏庭からもぎ取ったアボカド、パパイヤなど新鮮なものが並び、その味は格別。料理好きなのりこさんは、キッチンで過ごす時間も多いので、使い勝手のよさは重要。でも、もともとついていたキャビネットの背が高く、奥のものが取りにくいので、トニーさんが引き出せるトレー式に作り変えてくれました。

左が改修前、右がDIY後。アメリカ人用に作られた家なので、なんでも背丈が高く、ものを取るのに台に乗っかって取ることは日常茶飯事。でも奥に入っているものは取りにくいという問題がありました。かなり奥深いキャビネットだったので、見かねたトニーさんが、引き出せるようになり、デッドゾーンだった場所も収納に余裕が出ました。このおかげでお料理の効率もアップしました。
- のりこさんはお料理上手。家庭菜園で採れた新鮮なフルーツや野菜を使ったおいしいお料理が毎日テーブルに並びます。
- アボカドも種類が豊富ですが、ここには2―3種類の木があります。アボカドはトーストなど使い道がたくさんあって重宝しているそうです。
- 別棟の前に現れるバナナの木のサークル。雨季にはたっぷり雨も降るので、ハワイ島ではなんでも簡単に育ちます。
- 苗を植えれば、なんでも育ってしまうハワイ。苗はご近所の人と物々交換するようなこともあります。これはパイナップル。
自然と共存する暮らしは思いの外、快適で、「LAに住んでいた頃はアグレッシブな人たちが多かったので、そこまで気軽に家をシェアしたりできなかったけど今はオープンな気持ちになれました。ハワイに飽きちゃうかなという不安もありましたが快適すぎて、今のところ1度もLAに帰りたいと思ったことはないんですよ」と笑うのりこさん。より心地よい暮らしを送るため、住みながらもトニーさんは小さな改築プロジェクトは常に進めているのだとか。現在は、本格的な家庭菜園を製作中。まだしばらくは、新しい体験が続きそうです。