隣接する建物の都合で、以前ほど日が当たらくなったリビングを、日照時間の少ない冬のパリからヒントを得てリフォーム! 光の陰影を楽しむことができるグレーを基調としたシックなリビングは、パワーカップルならではのこだわり空間です。
目黒区にお住まいの岩下亜希さん。16年前、約90㎡の敷地に建てた当時のリビングは、テラコッタを使ったプロヴァンス風インテリアでしたが、好みも変わってきたため、今年5月に全面リフォーム。特にこだわったリビングは、グレーを基調にしたエレガントなスタイルに一新。「数年前我が家の東側に家が建ち、以前ほどリビング中央まで日差しが差し込まなくなったんです。そのときに昔フランスで暮らしていたときのことを思い出して、冬のパリは、曇りや雨の日が多く、街の人たちは照明を上手に使って屋内での暮らしを楽しんでいました」(岩下亜希さん 以下同)。パリのアパルトマンをヒントにリビングのメインカラーを照明の光と影が映えるグレーで統一。落ち着いた空間に生まれ変わりました。

フード&テーブルコーディネーターとして活躍中の亜希さん。「リフォーム後、ますます自宅の居心地がよくなり、パーティをする頻度も多くなりました」
目次
リビングのテーマは
「照明の光の陰影が映える夜のパリ」

テラコッタを敷き詰めたプロヴァンス風(左)から、色味を抑えた都会的なフレンチシック(右)なリビングにリフォーム。
現在、ご主人と愛猫4匹と共に暮らす岩下さんですが、週末にお互いの友人を自宅に招き、ワインを片手に楽しい夜を過ごしています。「リビングはゲストの方々が集まる大切な場所。いわば家の顔なので、リフォームで最も力を入れ、成熟した大人の空間を目指しました」。岩下さんがリビングのリノベーションでこだわったのは4点。
- 濃淡のグレーを使うことで落ち着いた空間に
- シャンデリアやフロアスタンドの光で壁に陰影を
- アクセントはアンティーク風家具や差し色で
- 友人が集いやすいバーカウンターを設置する
ヨーロピアンアンティークを得意とする空間プロデューサーに内装や家具選びを依頼、この4点を何度も話し合い、約2カ月の工事期間を経て、理想とする空間が完成しました。
濃淡のグレーを使い分けることで
照明があたったときの奥行き感を強調

メインとなるキッチンの壁と手前のカウンターには、濃いグレーをチョイス。
フランス人にならい、パリの住宅でも好んで使われる濃いグレーを、最も目を引くキッチン壁やカウンターに採用。「あえて残した塗りムラには趣きを感じます。グレーは光を吸収する色とも言われ、シャンデリアの輝きがよく映えて気に入っています」。収納扉や窓枠などには明るめのグレーをチョイス。全体的に統一感を出しつつ濃いグレーとのコントラストがさらに奥行きを感じさせます。ピンクのバラやフロアスタンドの傘など、ほんの少しだけ色を取り入れることで、落ち着いた空間に華やかさを生まれている点もポイント。「我が家は男性客も多いので、あまりラブリーになりすぎないよう、グレイッシュなトーンで統一し、小物でほんの少し色気を足しています。みなさん抵抗なく、我が家に足を運んでくださって嬉しいです」
- キッチン奥にある収納棚。扉部分もグレーでまとめて統一感を。
- リフォーム時に、窓枠もグレーに塗装。空間にしっくり馴染みます。
シャンデリアやフロアスタンドなど
照明も陰影がつきやすいものを積極的に
- シャンデリアの光がグレーの壁と好相性。シャンデリアは自由が丘「サラグレース」のオリジナル商品。写真のように切り取ると、まるで絵画のような美しさ!
- 東側のカフェコーナーにオランダの照明ブランド「Light & Living」のスタンドに別注のライトパープルのランプシェードを合わせたフロアスタンドを配置。
「リビング照明でこだわったのは、均質に明るくしすぎないこと。日照時間の少ない冬のパリでは、照明を上手に使って豊かな暮らしを楽しんでいます」。岩下さんはリビング東側(カフェコーナー)の薄暗さを逆手にとって、フロアスタンドを配置。照明をつけると柔らかな陰影が壁に映り、雰囲気ある空間が浮かび上がります。キッチンカウンター上にはシャンデリアを設置。「シャンデリアは明るさをとるためだけではなく、見た目が華やかなのでシックなリビングを彩るインテリアとして欠かせません」。シーリングライトで部屋全体を明るく照らすのが一般的な日本ですが、複数の照明で明かりの濃淡を味わうことが、岩下家のリビングの特徴になっています。
アンティーク風家具や差し色で
グレーの空間を地味に終わらせない

アンティーク好きの岩下さんが、テーブル脚の縦のラインや木目の味のある雰囲気に一目惚れして「サラグレース」で購入したアンティーク調ダイニングテーブル。イスにもグレーを採用。「背面や座面が光沢のあるベロアなので、リビングが上品で華やかな雰囲気になりました」
もともとヨーロッパのアンティーク家具が好きだった岩下さん。「天板や塗装部分の使い込んで擦れたような風合いが、クールなリビングのアクセントになると思い、このダイニングテーブルを購入しました」。カフェコーナーにはパープル系のフロアスタンドやソファを配置して、華やぎを。「自分らしさを演出する上で欠かせないのが小物類。グレーの空間がそっけなく感じたときはフラワーアレンジメントを飾るようにしています」。取材時にはピンクのバラがバーカウンターに飾られていて、グレーの空間に大人の女性ならではのエレガントさが漂っていました。
- カフェコーナーには大好きな紫色のソファとフロアスタンドをアクセントになるよう配置。
- 一見ラブリーなピンクのバラも、クールなリビングに置くと洗練された印象に。
週末に友人たちとの時間を楽しむため
こだわりのバーカウンターを特注

(左)仲睦まじい岩下さんご夫婦。「主人もキッチンに立つことが多いので、男性でも違和感のないグレイッシュなキッチンにしてよかったです」(右)大人たちが夜な夜な集う岩下家のリビング&キッチン。エレガントなシャンデリアの下、お酒と話が途切れません。(写真提供:岩下さん)
「光の陰影が美しい夜のパリ」がテーマのリビング。その象徴とも言えるのが、キッチン前にしつらえたバーカウンター。わざわざ特注したバーカウンターはクラシカルな雰囲気で、ダイニングテーブルともよく合います。「キッチンの壁と同じように、色ムラのある濃いグレー塗装でアンティーク風に仕上げています。ゲストとお酒を交わすスペースなので、見栄えを重視しました」。作業する手元を隠すために、調理スペースを天板より一段下げているのも岩下さんのこだわり。「可動式なので大人数のパーティのときは隅に移動させることができて便利です。少人数なら、食事を済ませた後にこのカウンターに移動して飲むことが多いですね」
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フレンチシックな空間に変えてから「以前より居心地がよくて家にいる時間が楽しい」と話す岩下さん。岩下家のリフォーム実例を通して、フランス人のように暮らすという、とらえ方がほんの少し分かった気がします。
(撮影/石田純子)
取材したのはこちら
岩下亜希さん
フランスに約2年間滞在。帰国後、フードビジネス、テーブルコーディネート、フラワーアレンジメントなどを学ぶ。料理教室、飲食店プロデュース会社勤務を経て、自宅キッチンスタジオ設立と共に独立。「上質な日常」をコンセプトに企業のメニュー開発、撮影スタイリング、パーティフードなどを手掛けています。