両親と姉妹家族。ダイニングで3家族がつながる鎌倉の家

鎌倉の緑豊かな場所にある一軒家に、ご両親と姉妹それぞれの家族が暮らすCさん。3家族が心地よく暮らせるようにプライバシーは守りつつ、程よい距離感で家族が集まれる家にしたい。そんなCさんがこだわったのがダイニングキッチンを主役にすることでした。

鎌倉の高台に暮らすCさん。とても仲が良い姉家族と、両親の3家族で暮らすのが長年の夢だったそう。十分な広さ(70坪)の土地を見つけ、夢の三世帯住宅を建てたのが10年前。共に建築家だというお姉さま夫婦が設計を担当しました。既にリタイアされているご両親と現役世代の姉妹家族では生活スタイルが異なるため、玄関は2カ所に分け、1階はご両親、2階を姉妹家族が暮らすスペースとすることで互いのストレスを軽減。とはいえ、せっかくの3家族同居。みんなが集える場所として、ダイニングキッチンをこの家の核にすることにしました。

目次

家族8人が集まってもゆったり過ごせる
ダイニングキッチンのこだわり

1階で暮らすご両親もよく2階のダイニングに遊びにきてお茶をしていくそう。

姉妹それぞれの家族が暮らす2階で、最もスペースを割いたのはダイニング・キッチンです。実は、ここで暮らす前から姉妹家族で一軒家をシェアしていたそうで、その経験から共有したい部分、パーソナル感を残したい部分は明確にイメージができていて、ダイニングキッチンを中心に、左右にそれぞれ家族のリビングと寝室をふり分ける形に。そして、この家の肝となるダイニングキッチンには、家族8人が集まっても快適に過ごせる工夫がされています。

①ダイニング・キッチンスペース部分のみ
天井高を上げ、開放的な雰囲気に

食卓を照らしつつ、間延びする空間のアクセントになっているのは凸ランプ。黒を選んだのは、引き締め効果とスタイリッシュさを狙って。

およそ20畳のダイニング・キッチンは一般的な住居に比べると、十分広いように思いますが、最大8名の家族が集うとなるとそれなりに窮屈さも感じる広さ。そこで考えたのがここだけ天井高を2フロア分とること。「上に抜けを作ることでぐっと開放感が出るので、大人数で食卓を囲んでいても狭苦しさは感じません。がらんとした吹き抜けだと間が抜けてしまうので、天井から照明をつるし、空間にリズムと立体感が出せるようにしました」(妹のCさん・以下同)

②3mあるダイニングテーブルを中心に
直線的な家具配置で横方向のヌケも確保

ダイニング・キッチンを共有することで、それぞれの家事負担も減り、助け合うことができるという。

ダイニングの中央に鎮座するテーブルの長さは3m。20畳の広さがあるとはいえ、なかなかの存在感です。それでも窮屈さを感じさせないのは直線的なフォルムでダイニング、キッチンカウンター、階段横の飾り棚と平行に配置したから。「既存の家具では理想のテーブルを探すのは難しかったので、ミリ単位でサイズにこだわりオーダーしました。キッチンカウンターは目隠しの意味もありちょっと高めですが、家具同士のラインをぴったり合わせているのですっきり見えるんです。このダイニングテーブルは、父が孫の勉強を見ている横で私が仕事をしていたり、さらにその横で夫がコーヒーを飲んだりと、まさにこの家の生活の中心。窮屈さがないのでそれぞれの時間を楽しむことができています。さながらカフェのような感じですね」

ダイニングキッチンを挟んで
2家族の生活スペースを配置
つかず離れずの距離が心地いい

Cさん家族のリビングスペース。ダイニングスペースを挟み反対側にはお姉さま家族のリビングスペースが。全く同じ広さ、設計なので気分転換に部屋を入れ替えることもあるそう。

広々としたダイニングキッチンを中央に配し、左右に姉妹家族それぞれのリビングスペース、その奥に寝室をふり分けました。12畳ほどのスペースにはソファとテレビ、壁側には書斎スペースと収納が設けられています。ここにも2家族が1フロアで暮らすための仕掛けが。

①生活感が表に出ないように
壁面に「見せない収納」を

いくら血のつながった家族とはいえ、2家族が一緒に暮らす際に気になるのが互いの生活感です。ちょっとした雑貨や仕事道具なども、他者から見たら気に障ることも。そこで、掃除機などの生活家電をはじめ、お互いのプライベートなものが見えないように、全てのものを収納できるだけのスペースを壁側に準備。「キッチンから続くリビングスペースはそのまま壁側に収納棚を設置しました。奥行きおよそ60㎝、床から天井まで続く収納なので、家電からこまごましたものまで全部この中にしまうルールにしました。キッチンと同じく白で統一し、なおかつキッチンと直線に配置することですっきりとした印象を演出できるのです」

②キッチン側に引き戸を設置し
プライベート感を確保

家族水入らずの時間を過ごすことも考え、キッチン側に空間を仕切れる引き戸を採用。夜はそれぞれの家族だけでリビングでテレビを見たり、くつろいでいるそうです。「昼間は開けてひと続きの空間にしていますが、夜は閉めてそれぞれの家族水入らずで過ごすことが多いですね。引き戸で区切っているだけですが、ちゃんとおこもり感があるんです。この扉のおかげで付かず離れずのいい距離感が保てているように思います」

子供部屋は3階に独立させて。
いとこ同士が姉妹のように暮らしています

姉妹家族にはそれぞれに娘さんがひとりずついます。それぞれ家族のスペースに子供部屋を設け、ひとりっ子として暮らすより、姉妹のように暮らすほうが子供たちにとっても良いと考え、3階に2人が一緒に使う子供部屋を作りました。「現在は姉の子供が留学しているので、うちの子がひとりで寝ているのですが、それまでは二人でこの部屋をシェアしていました。勉強机もひと続きのカウンター式で、いつでも互いの気配を感じられるようにあえて仕切りなどは作りませんでした。そうすることでいとこ同士ではありますが、本当の姉妹のように暮らすことで、けんかをしてからどうやって仲直りして一緒に楽しく遊ぶことができるのかなど、親が教えてあげられないことを自然と学べるかなと思っています」

トイレと洗面台は二つずつ。
お風呂はひとつですが上手にシェア

お風呂場は清潔感重視で白で統一。窓からの採光もあり、明るく開放的な雰囲気です。

心地よく暮らしていく上で気になるのがトイレやお風呂などの水周り。姉妹家族は1軒家でのシェア暮らし経験から、両サイドにトイレ、洗面台をふり分けて設置。生活リズムがかぶらないことから、お風呂はひとつをシェアする形に落ち着きました。「お風呂とかどうしてるの?と聞かれることもあるのですが、意外と入浴時間はかぶらないんですよ。その辺ストレスを感じたことはありません。以前の1軒家シェア経験が活きているように思います(笑)」

もうひとつの洗面台はグレーと白を基調とした落ち着き感と清潔感が同居した空間に。ダブルシンクのため朝混み合うこともない。

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付かず離れず適度な距離感を保ちつつも、3家族みんなが一緒にくつろげるダイニング・キッチンに重きをおいたCさん邸。区切るだけでなく、シェアすることにも意識を向けた家は、新しい大家族の住み方なのかもしれません。