狭小住宅「敷地面積24坪を広く使う」ハウスメーカー最新の秘策

そもそも狭小住宅とは、「明確な定義はありませんが、弊社では敷地面積20坪前後の3階建てを狭小住宅と呼んでいます。特に20坪の細長い敷地の場合、狭小ならではの開放感と楽しさが味わえる」(旭化成ホームズ広報・高村淳子さん)とのこと。狭い空間を快適に使う、ヘーベルハウスの創意工夫を見せてもらいました。

通勤に便利な都内の戸建てに住みたいけれど、予算的には狭小住宅……。そんなジレンマに陥っている人も多いのではないでしょうか。しかしここ数年、狭小住宅のイメージは大きく変わってきています。今回は、狭小住宅の設計・施工も多数手掛ける住宅メーカー、旭化成ホームズのモデルハウスを訪問し、最新の「広く暮らす」工夫を見せていただきました。

東京・世田谷区にある敷地面積24坪の「へーベルハウス」のモデルハウス。都会にありながら、花と緑に囲まれた暮らしがかなう住まいを提案しています。

狭い家をゆったり使う最新トレンドは?

旭化成ホームズ広報・高村淳子さん

  • あえて空間を区切らない~壁などで明確に分けずゾーニングすることで、家族の気配を感じながらもそれぞれの時間が過ごせます。「例えば狭いリビングの床を下げるだけで他の空間と緩やかに区別しつつ、こもり感のある落ち着いた空間になります。床を下げた段差にも腰を掛けられるので、居場所が増えるメリットも」(高村さん 以下同)
  • 開口部を大きく設け採光を確保~密集地に多い狭小住宅は、室内が暗いイメージが。「室内に壁を作らないことが多いので、意外と明るい部屋を作りやすい場合もありますよ」。天井までいっぱいのガラスを使って3階から1階に光が届くようにしたり、隣家からの視線が気にならない床ギリギリの地窓を活用したりするなど窓の位置に配慮しつつ明るい室内を確保。
  • 階段下や廊下を有効活用~廊下を作らない場合も多いそうですが、あえて廊下を作り、その壁にニッチ収納を設けるケースも。「狭小住宅は家具の置き場所が確保しにくいため、壁をそのまま収納スペースにするお宅も多いですね」。また通常収納にしがちな階段下の空きスペースを、ワークスペースやキッチンの一部に活用することも。
  • 屋上やバルコニーをアウトドアリビングに~庭がなくとも、LDKに大開口を設けバルコニーと連続したアウトドアリビングを作ればピクニック気分も楽しめます。「屋上庭園まで作れない場合でも、3階のバルコニーの壁を通常より高く設置することで、周囲の目線を気にすることのない半屋外空間のようになり、光と風が心地よいスペースが成立します」。実際の広さより開放感があるので、リクエストが増えているそう。

では、狭い面積をめいっぱい有効活用した事例をチェック!

目次

玄関は壁で仕切らず抜け感を
活かしたゆったりとした空間に

ゆったりとしたスペースを確保した玄関の脇にはシューズクローゼットとキャビネットが並んでいます。広く見せる工夫は、リビングとの空間を区切る壁がないところにあり。

24坪強と決して広いとは言えない土地に建てられた家ですが、意外にも玄関スペースは約1.5畳とゆったり。「広く感じる理由のひとつは、リビングとの間を壁で仕切らず、背板なしのキャビネットからリビングが見通せる視覚効果を利用したところにあると思います」。また向かって左手にある階段下のスペースも、土間の一部として広々と活用しています。

近隣からの目線はグリーンで隠しつつ
大開口窓を設置して光をしっかり取り込む

1階リビングのハイサッシを開け放つと、ベランダと一体となった広々とした空間に。豊かなグリーンが外を行きかう人からの目隠し代わりになっています。

「この物件は住宅街の角地にあるため、1階は近隣住民や歩行者からの目線が気になります。しかし塀で囲ってしまうと光もさえぎられ圧迫感が生まれるので、モダンなグリーンで囲いました」。ハイサッシを開放しても外からの目線は気にならず、光もしっかり届き、豊かな緑を眺めながら至福のひとときが味わえそうです。

天井と壁の間をあけることで
つながりを感じつつ開放感も生まれる

2階は3部屋に分かれているものの、壁と天井の間をオープンにしたことで、緩やかなつながりが。

あえて壁を作らないのが狭小住宅の工夫のひとつですが、空間を仕切るために壁を作る場合でも、天井部分を約40㎝あけるだけで、こんなに開放感が演出できます。「約16畳の2階には、7.7畳の寝室の他、オープンクローゼットと子供部屋があります。天井と壁に抜けを作ることで、狭さを感じにくくしました」。別々の部屋にいながら隣室から漏れる光や音に家族とのつながりや存在を感じられるもの素敵ですね。

デッドスペースになりがちな廊下を
ワークスペースとして活用する

廊下と部屋との間に壁がないため、子供部屋に入りきらなかったデスクは廊下突き当たりに設置。(画像:旭化成ホームズ)

2階の3部屋をつなぐ廊下には大きな窓が設置され、そこからの光を最大限に部屋にとりこめるよう、窓側の廊下と各部屋の間には壁やドアがありません。「壁やドアがないので子供のデスクを廊下に置いても違和感ないですよね⁉ 部屋と廊下を明確に区切らないことで、家具の配置や暮らし方の自由度が増しますよ」

家族が同時に調理可能な
回遊できるアイランドキッチン

窓を多用した明るい3階にはリビング・ダイニングを設置。家族が一緒に料理できるアイランドキッチンは、忙しい共働き家庭に人気だそうです。

「一般的にはキッチンをリビング側と対面に設置することが多いのですが、ここでは効率よい家事動線を考慮して横向きにしてあります」。この配置なら、キッチンをスムーズに回遊でき、家族も余裕ですれ違えます。1人がIHクッキングヒーターで調理し、1人が洗い物をしてもお互いが邪魔にならず、家事分担もはかどりそう!

庭がなくても大丈夫! 屋上を
家族のイベントスペースに

屋上でBBQやキャンプをしたり家庭菜園を楽しんだり。わざわざ出掛けなくても、青空の下くつろぎの時間が過ごせます。(画像提供:旭化成ホームズ)

ベランダや屋上を上手に活用すれば、狭小住宅でも庭のような開放感のあるスペースは手に入ります。「お子さんがいるご家庭からよくリクエストされるのが屋上をアウトドアリビングにすることです。夏はBBQやキャンプを楽しんでもいいですし、お子さんと一緒に家庭菜園で作った野菜を調理し食卓に並べるなど、自宅にいながらして家族共通の趣味を楽しむことができるのは素敵ですね」

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土地が狭くても諦めることはない、むしろワクワクするような家造りを実現できるとつくづく感じさせられました。敷地面積だけにとらわれず、一度は自分たちらしい家を相談してみるのもよさそうですね。

(撮影/相澤琢磨)

取材したのはこちら

2004年入社。ヘーベルハウスの営業担当、広告・宣伝担当を経て、現在は、新築事業のほか不動産事業や開発事業など、旭化成ホームズグループの広報を担当。

 

旭化成ホームズ株式会社 広報・渉外部 広報室 高村(こうむら)淳子さん