イッタラの「アルヴァ・アアルト コレクション」ベースは、ギフトとしていただくことも多い花瓶です。でも、その特徴的なフォルムゆえに、どれくらい花を入れるといいのか、どんな種類の花が合うのか、 生けるハードルが高そうと悩んでいませんか? そのコツをプロのフラワーコーディネーターに聞いてみました。

アアルトベースからこの春、北海の刻々と変わる表情を表現した新色“シーブルー”が登場。「花瓶に特徴があるので、右にカラー、左にラナンキュラスと2種類の白い花をグルーピングしてシンプルに生けました」
イッタラと言えば、フィンランドを代表する建築家、アルヴァ・アアルトがデザインした曲線が美しい花瓶を思いつく人が多いと思います。この特徴的なフォルムは、丘の上から見下ろした、フィンランドの美しい湖をイメージしデザインされたんだとか。口が広いこのフラワーベースは、花を生けるセンスが問われそう…と、オブジェとしてそのまま飾っている人も多いと思います。今回、フラワーコーディネーターの渡辺慎子さんに飾り付けのコツを教えていただきました。

花瓶『アルヴァ・アアルト コレクション』ベース160㎜ サイズ:H160×W195(最大)㎜
「このアアルトのベースは、計算された曲線のバランスが絶妙なので、花の向きや長さなどあれこれ調整しなくても、いい感じに仕上がりますよ。例えば花1本だけでも、その茎を好きな面の縁に引っ掛けるだけで雰囲気が出せるので手軽に季節の花を楽しみたいときにおすすめです」(フラワーコーディネーター 渡辺慎子さん・以下同)。この春新色として加わったシーブルーの160㎜シリーズを使って説明してもらいましょう。
目次
【arrangement①】
急な来客時に覚えておくと便利!
ハーブや鉢植えをポンと花瓶に入れるテク

シルバーグリーンのなかにクリームイエローの葉がキラキラと可愛らしいリーフプランツ“ロータスブリムストーン”の鉢植え二つを花瓶にセット。
急な来客時、部屋が雑然としていて寂しい! というときに覚えておくと便利な技。「ベランダに植えてあるハーブや草花を花瓶に入れて鉢カバーとして使ってみましょう。今回使用したロータスブリムストーンは、明るい新葉が美しいリーフプランツ。ブルーの花瓶に映えて部屋の中が一気に明るくなります」。選ぶ鉢植えは、花瓶のフチから葉を自然に垂らして表情がつけれるタイプが◎。
- 小鉢は垂れ下がるタイプ、ロータスブリムストーンを二つ用意。
- 器の曲線を活かしたいので、自然に葉が垂れるタイプを選ぶのが◎。
- 花瓶の青と小鉢のイエローのコントラストが爽やかな印象。
【arrangement②】
しなやかで美しいカラーに“ため”を作って
花瓶の曲線美を活かしたシンプルなアレンジ

大きな花びらを一枚巻いたかのような独特な形状、仏炎苞(ぶつえんほう)がスタイリッシュな“カラー”。茎にためを作って表情をつけ、波を打つような花瓶のデザインを活かします。
花瓶の曲線の美しさとシンプルでしなやかなカラーの組み合わせは、部屋の雰囲気を大人っぽく飾りたいときに効果的。「一直線に近いカラーは、茎にためを作って花に柔らかさを出しておきます。花瓶の形状を活かしたいので、カーブの1カ所に茎をまとめ、縁に引っ掛けて同じ方向に。広がりを見せる感じに生けるとモダンな雰囲気に仕上がります」。花数は奇数のほうがアンバランスな動きを出しやすいそうなので、今回は5本のカラーを使用しました。
- フラワーアレンジメントは、ハサミ、雑巾、吸盤付きの剣山があれば気軽にはじめられます。
- 茎に“ため”を作るには、中指と親指をずらして茎を持ち、ゆっくりしごくと緩やかなカーブがつきます。
- 花瓶の縁1カ所に茎を引っ掛け、一直線に近いラインを作ることがスタイリッシュに見せるコツ。
【arrangement③】
真っ白なラナンキュラス20本を
投げ入れただけで、こんなにドラマティック

幾重にも重なったふんわりとした花びらが華やかな“ラナンキュラス”は春の花。20本を手でまとめて無造作に投げ入れただけでこんなに華やか! これからのシーズンはトルコキキョウなどを生けると雰囲気が出ます。
ブルーの花瓶と白い花びらのコントラストで涼感漂うアレンジ。手でまとめて投げ入れただけの手軽さも魅力です。「水面に浸かる部分の葉をカットし、花瓶の高さの倍(この花瓶の場合は32㎝)に花を揃えて切っておきます。二つの下準備をしたら後はまとめてバサッと投げ入れるだけ。花のボリューム感とアシンメトリーのフレームがマッチしてあれこれ考えなくてもカッコがつきますよ」。最後に下を向いてしまった花の顔を見せたい方向に整えれば完成!
- ボリュームたっぷり花を使うときは、波打ちの幅がある面を前にしてアレンジ。
- 20本の花を手にまとめてバサッと投げ入れた瞬間。これだけで様に見えます。
- 投げ入れたとき下を向いてしまった花の顔を、立体的に見えるよう整えていきます。
【arrangement④】
ドライフラワーなら水を使わず手入れも簡単。
おすすめはエキゾチックな“バンクシア”

ブラシのようなワイルドな見た目の“バンクシア”は、ここ最近人気が高いドライフラワー。個性的な花ですが、意外にもこの特徴的なデザインの花瓶とマッチ。
水を使わず簡単にアレンジを楽しむならドライフラワーを使うのも手。「最近はお洒落なドライフラワーがたくさん出ているのでそれを使ってアレンジすると今どきっぽく見えます。花全体に重さがあって茎がしっかりしているバンクシアは、茎がひっかかりやすいところを利用して、小さい花を高く、大きいものを下にして活けましょう」。ヘッドが大きい花は数本でもインパクトがあるからイッタラの特徴的なフレームにも負けません。この時期ならアジサイを一輪同じ要領で活けるのも◎。
- 仕上がりをすっきり見せるために、花瓶にかかる葉は落としておきましょう。
- 収まりのよいところに茎を引っ掛ける。難しい場合は剣山やセロハンテープを使うのも手。
- ブラシのような見た目のバンクシアはオーストラリア原産、乾燥地帯の植物。
花の大きさ、本数によって自由自在に
4方向どの向きに活けても素敵に見えます!
- 一直線に近いラインを作りながら生けたカラーの花は、この面を正面にしています。
- 左サイドにロゴが来る向きは、アレンジに奥行きを出したいときに使いやすい。
- 数量の花や、アレンジをコンパクトにまとめたいときは、この面を正面にするのがおすすめ。
- ボリュームたっぷり花を使うときは、波打ちの幅がある面を前にしてアレンジ。
・・・・・
インスタの投稿でも多く見られる#花のある生活。置くだけで様になるイッタラの花瓶さえあれば、花一輪からセンスよく生けることができます。また計算された曲線のデザインは、どんな花をも受け止めるので、アレンジメントビギナーでも実は扱いやすい花瓶なんです! まずは我が家のベランダに咲いているアジサイを一輪、食卓に飾ってみたいと思います♪
監修
桑沢デザイン研究所卒業後、エディトリアル・広告のデザイナー、アートディレクターを経て2008年エコグリーン協会で植物について学ぶ。2009年よりフリーで撮影小道具・プロップス・フラワーアレンジメントの仕事・グラフィックデザイン等活動。華道瑩心流師範。フラワーアレンジメントのご依頼はインスタグラムのDMからご相談ください。