シンプルななかにも温もりを感じさせる北欧デザイン。どんなインテリアにもマッチすると日本をはじめ世界中で大人気です。この連載では、その魅力を紐解きながら、いつかは手に入れたい人気の名作を紹介。今回は『イッタラ』の定番で、「フィンランドデザインの良心」と評されるデザイナー、カイ・フランクが手がけた「カルティオ」の魅力に迫ります!
目次
誕生から60年! 日常を美しく彩る
シンプルで繊細なグラス
水を飲んだり、ビールを注いだり、時には花を生けたり……どの家庭にもある普段使いのグラス。日常で手にする機会が多いアイテムこそ、ずっと使いたいと思えるデザインで揃えたいもの。そして多くの人が“使いやすくて美しいグラス”としてたどり着くのが、今回ご紹介するフィンランドのガラスブランド『イッタラ』のロングセラー、カルティオです。
カルティオが誕生したのは1958年。北欧モダンデザインの礎を築いたデザイナー、カイ・フランクの作品です。カルティオが生まれた1950年代は、テーブルウェアのデザインといえば美しい装飾が施されたディナーセットが主流だった時代。その一方で、第二次世界大戦後の一般家庭のテーブルには石でできたような質素な食器が数枚並ぶだけだったそう。そんな時代を背景に、カイ・フランクは「毎日の暮らしに美しいデザインを」という理念のもと、数百点にも及ぶ日用品を手がけました。装飾を施せば、素材の欠点や少しくらいフォルムが洗練されていなくても補うこともできますが、彼は日常で使いやすいように華美な装飾は施さず、それでいて美しいデザインを目指しました。
光がどう反射されるかまで緻密に計算されたカルティオのシンプルなフォルムは、手にしたときになじみのいいサイズ感で程よい重さもあり、使うほどにその魅力を実感できます。また今でこそ当たり前ですが、グラスを重ねて収納できることも、当時は画期的なことでした。
使いやすいだけでなく、使っていて幸せな気分になれる美しさを兼ね備えたグラスは、誕生60年を迎えた今も、北欧らしい機能美が映し出された名品として世界中で愛されています。
どんな器とも組み合わせが楽しめる
暮らしに寄り添う機能的なデザイン
名作と呼ばれるカルティオではありますが、カイ・フランクはあくまでも日用品としてデザインしました。それは日常のどんなシーンにも“美しく”溶け込むデザインだということでもあります。例えば、おやつのドーナツをのせた木製のプレートとミルクを注いだカルティオ、夕食の焼き魚をのせた和食器とビールを注いだカルティオ、華やかなパーティプレートと色とりどりのカルティオ……。グラス単体ではもちろん、テーブルで他の器と組み合わせたときにもその美しさを発見できるのです。
現在、カルティオはクリアやグレー、サンド、ブルー系、グリーン系で計10色が展開されていて、『イッタラ』ならでのユニークなカラーラインナップのメインアイテムになっています。色を唯一の装飾とし、真のカラリストであったカイ・フランク。単色よりも色違いで揃えたくなる絶妙なカラーバリエーションも魅力です。
テーブルの上や食器棚の中で主張はせずとも、迷わず手にしたいと思わせる優しい佇まいと美しいガラスの透明感。カイ・フランクが目指した日常の美しさをぜひ暮らしに取り入れてみませんか?
“美しいシンプル”のスタンダードを作った
フィンランドの巨匠、カイ・フランク
“フィンランドデザインの良心”と称される、北欧モダンデザインの礎を築いたフィンランドのデザイナー。1945年から『アラビア』や『イッタラ』などで活躍し、1952年に『アラビア』で手がけたセラミックのテーブルウェア、ティーマシリーズも有名です。人々の日常の暮らしのなかにこそデザインの本質があると考えたカイ・フランクの信念は、北欧のみならず日本のモダンデザインにも大きな影響を及ぼしてきました。彼が表現した普遍的な美しさは、60年たった今もなお私たちを虜にしています。
取材したのはこちら
『イッタラ』直営店となる東京・新丸ビルの店舗。木がふんだんに使われた店内には、カイ・フランクの代表作はもちろん、オイバ・トイッカのバードや、アルヴァ・アアルトのアアルト ベースなど、日常を美しく彩る北欧の名作が並んでいます。
東京都千代田区丸の内1-5-1新丸ビル4階
TEL 03-5220-9870
11:00〜21:00、〜20:00(日・祝日)
無休(1月1日および法定点検日は除く)