広く暮らすことを最優先させた「1LDK・53㎡」リノベとインテリア3つの工夫

定食王こと岡澤創人さんが8年前に購入したのは、低層エリアという立地優先で選んだ築35年、53㎡1LDKのヴィンテージマンション。決して広いとは言えない限られたスペースを有効活用するためリノベーションとインテリアの工夫で広く使っています。雑誌の編集経験を生かした、こだわりのお宅を拝見しました。

優しい陽と眺望をいかすため、海外のようにカーテンはかけずに暮らしている岡澤さん。

岡澤さんのお宅は世田谷といっても、かなり渋谷寄りのエリア。しかも最寄り駅まで徒歩10分圏内、近くに生活に必要なスーパーなども揃っている好立地。その割に閑静な住宅街でとても静かなのが印象的です。物件を探したときの条件は、①低層住居エリアにあること、②ルーフバルコニーのある最上階であること、③日差しがたっぷり入る南向きであること、この三つが揃っていることでした。以前はフランス人がオーナーだったというこのヴィンテージマンションは、ルーフバルコニーと寝室側には高い建物がないため、東京タワーと東京スカイツリー両方が臨め、LDKの窓からは多摩川の花火大会も見られるという最高の眺望。これが決め手となって購入しました。

当初考えていたダクトのスチールを生かしたようなインダストリアル調インテリアは諦めて、白とウッドで統一することで広く見せることを優先。

一度スケルトンの状態にしてから、LDKを中心に部屋作りを開始。「リノベーションをする際に、まずは自分の生活動線をよく考え、バスルームなど配置変えをしました。別途家具などを置く必要がないよう、ベッドルームのスペースを削りバスルーム前にウォークインクロゼットのスペースを確保し、家具を置いたりする必要がないようにしたことも広く使うポイントですね。自分が一番長く過ごすリビングとダイニングキッチンの間仕切りをなくし、とにかく開放的で居心地のいいカフェのような空間作りを意識しました」。最もリフォームに力を注いだというリビングダイニングは、広く見せるための工夫がたくさんあります。そのなかからポイントになる3点を見ていきましょう。

目次

〈広く見せる工夫①〉
収納を兼ねた家具を選ぶなど、一石二鳥な
マルチタスクのものを活用する

限られたスペースを有効利用するため岡澤さん自身がデザインし、リフォーム業者がオリジナルで作ったカウンターテーブルは、リビング側から見ると普通のカウンターですが、キッチン側にまわると炊飯器から食器まで収納ができる棚になっているんです! 「生活感のあるものは全て隠して、たくさんの友人が集まったときも楽しくすごせる居心地のいいカフェのような空間を目指しました」と岡澤さん。さらに場所をとるスピーカーもインテリアの一部として溶け込む電球スピーカーにして物をできるだけ置かない工夫をしています。

広く見せる工夫②〉
もともとの天井を取っ払い高さを確保。
見せる収納棚も壁と一体化するよう白に!

壁一面の見せる収納は、今までの人生を形成してきた思い出の品で構成。「自分が幼少期に好きだった絵本、旅や仕事の思い出がたくさん詰まった棚は自分を見つめ直したり、整理したりする意味もあるんです」

高さを出すため、天井をむき出しにしてダクトを生かしてカフェのような空間を演出しています。「最初はダクトのスチール感を生かし天井と壁をモノトーンで構成することも考えましたが、広く見えることを最優先しダクトも全てオールホワイトに塗りました」。作り付けの棚も壁と一体化して広く見えるよう、こちらも白に。「真ん中に収まるテレビの大きさを考え、目線の位置にくる中央の棚板の天地幅をなるべく狭くして、その上と下の棚は天地を高くとることで視覚効果で威圧感が出ないと設計士の方からアドバイスをいただき配置しました」。白い空間のアクセントになるグリーンも、床には置かず、目線が上にいくハンギングにして、奥行きと広がりを出しています。

〈広く見せる工夫③〉
家具は低くめで視界を広く保ち、
主張のしすぎないベージュで統一

ソファなどに座ったときに視線の先に飛び込んでくるのはハンギンググリーンのみ。

「部屋にいくつもの家具の凹凸があったり、目線をさえぎるような背の高い家具を置くと、狭さを感じてしまうので、目線の高さにくるようなものは極力避けています」。ソファの高さとダイニングテーブルの高さもほぼ同じ。ダイニングテーブルにあえて背もたれのないスツールを選びました。「テーブル下にイスが完全に収まるので、普段はスペースを確保できます」。さらにソファやフローリングなどの目につくインテリアはベージュの濃淡でまとめて、白い壁や天井と床や家具のウッドと同調させて空間に一体感をもたせている点も、できるだけ開放的に見せるための要素なんだとか。

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自身の生活の導線をしっかり考え、いる時間の少ない部屋を削ってでも快適なスペースをしっかり確保したり、リノベーションは時には柔軟性も必要です。天井や壁を抜きスペースを広く取ったら、その空間をうまく利用するためマルチタスクの家具を投入するなど徹底的にスペースを確保するためのさまざまな工夫は参考になることも多いと思います。

 

(撮影・相澤琢磨)

取材したのはこちら

慶應義塾大学SFC 環境情報学部卒業後、株式会社光文社に入社し『JJ』 『Gainer』で編集者として勤務後、日本マイクロソフトでエディトリアルプランナーとして勤務。その後コンデナスト・ジャパンの『GQ JAPAN』等キャリアを重ね現在はIT企業でメディア事業部の副部長として働く傍ら大学時代からの年間500〜700軒20年でのべ1万食以上のフードハッカーとして定食王、フードインスタグラマー、フードジャーナリストとして活躍中。
インスタグラム@hajimedia.jp

岡澤創人(おかざわはじめ)