マンションのリノベーション施策として最近取り入れられることが増えている「室内窓」。今まで光の入らなくて薄暗かった部屋が明るくなる、狭い部屋でも解放感が出るなど、そのメリットはいろいろ。では、どんな取り入れ方が効果的なのか、具体的な事例を見つつ専門家の説明を聞いてみました。
室内窓とは、部屋と部屋の間の壁の一部に設けた窓のこと。日本では、多くのマンションが片側に共用廊下のある細長い長方形の間取り。ベランダ側からの採光に頼ることが多く、壁で仕切られている居室には光が入らず1日中薄暗いままという部屋も。「そのデメリットを解消してくれるのが室内窓なんです。そもそも室内窓とは窓のない居室の壁、部屋と部屋の間の壁に設置するもの。窓のない部屋も、室内窓により光が少しでも入るだけでだいぶ明るくなりますし、空間に広がりも生まれて狭さを感じにくくなるというメリットもあるんです」(株式会社マイプレイス インテリア課 課長・植家有紀さん 以下同)
室内窓には、こんな効果が
- 自然光を窓のない部屋にも届けられる
- 空気の循環ができ、家全体の換気がスムーズに
- 見通せる距離が長くなり、部屋が広く見える
- プライバシーを確保しつつも、家族の気配が感じられる
- 殺風景な壁より、インテリア的なアクセントに
「室内窓のある物件は2~3年前から増えていますが、特におうち時間が増えて住まいの見直しが進んでいる今、暮らしやすさが向上するとますます人気です。小さなお子さんがいると、ある程度の年齢になるまではしっかり目配りしておきたい反面、リビングでいつも遊ばせておくわけにもいかないですよね。例えば、室内窓のある子供部屋にすれば、中の様子をすぐ確認できますし、子供もパパやママの気配を窓越しに感じられて安心できるんです。また、まっさらな壁のままよりインテリアのアクセントになるので、お洒落感を加えることができるのも大きな魅力です」
子供部屋とリビングの間の窓は
くもりガラスでプライバシーも確保
リビングと隣り合った子供部屋をつなぐように室内窓を設置した例。「リビングに面した一番大きな窓から入る自然光を、子供部屋に届けることができます。窓を開ければ部屋の空気も循環させることができ、子供が汗をかいて遊びまわっても大丈夫。室内窓の上部にはカーテンやブラインドなどを設置できるので、夜にリビングからの明かりを遮断したいときや、お子さんが年頃になった際のプライバシー配慮にも。窓枠の材質もアルミタイプ、木枠などさまざま。窓の開閉位置もいろいろありますが、この物件では子供への安全性から上部のみが開くようなものを選びました。インテリアのテイストに合わせてコーディネートできるのも室内窓の魅力です」
リモートワークで部屋にこもっていても
閉塞感なく、なおかつ落ち着ける場所に
コロナ禍で急増したリモートワーク。書斎や寝室にこもって仕事をしていると子供の様子が心配。かといってリビングでは子供が騒がしく仕事が進まない……とリモートワーク難民が頻出。「2020年の夏頃から売り出したのが、快適なリモートワーク環境を整えるための室内窓がある物件。ワークスペースとなる部屋の壁面にL字に室内窓を設置し、死角を極力減らしました。書斎として作り込むのではなくカウンターにしたので、将来的なアレンジの余白も残しています。広いカウンターは、夫婦でのリモートワークも親子での勉強でも活躍します。家庭教師をつけたとき『ここで勉強をさせれば密室にならないので安心できる』という方もいらっしゃいました」。部屋の外から見ると、家の中に別の家があるように見えてユニークですね。
玄関を広げつつ、共用廊下からの
光を部屋に届けるための工夫
片廊下型の間取りの場合、玄関側の部屋は窓が共用廊下に面していることもしばしば。「共用部に面した部屋は、廊下を通る人の目が昼夜問わず気になります。そこで部屋の形状を調整し玄関の土間を広げて、室内窓を設置することに。窓が家の中に引っ込んだので安全性も高まりました。玄関を入ってすぐにある室内窓は来訪者の目に真っ先に入るので、開放感のある明るいお宅という良い印象を与える効果も」
・・・・・・
室内窓の物件は「片廊下型間取りのマンション」のマイナス面を解消してくることがよくわかりました。最新設備と凝ったインテリアの物件がリーズナブルに手に入るリノベ物件の人気は、勢いを増すばかり。これから買うなら「室内窓」があるかどうかも購入時のチェックポイントになりそうですね!
取材したのはこちら
中古マンションの買い取り、リノベーションの企画、設計、施工から販売までを一貫してコーディネート。エリアや物件に合わせたデザイン力、また家具や照明に至るまでのトータルコーディネート力に定評あり。お片付けコンシェルジュとタッグを組んだ収納効率に特化した「キラリエ収納」、子と住むをもっと楽しくをコンセプトにした「cotosumu」、植物に囲まれたリラックスした暮らしを提案する「メゾン・ボタニーク」など、テーマ性のある住まいをブランド化して展開。他にも猫専門病院の獣医が監修し、猫が快適に暮らせることをコンセプトにした住まいなど、ユニークなコンセプトのリノベーションを手掛けている。