プロが指摘。やりがちな「そのカビ対策、実は間違い」

冬よりも湿度も気温も上がる春はカビにとって絶好の季節。しっかり掃除してカビ対策をしたつもりでも、間違ったやり方では効果はありません。主婦がやりがちな「NGカビ掃除、カビ対策」をメディアでも人気の医療環境管理士・松本忠男さんに教えていただきました。

カビの胞子は3~5ミクロン(1ミクロン=1㎜の1/1000)と小さく、肉眼では見えません。「空気中にはカビが常に漂っていて、温度(20~30℃)、湿度(一般的なカビは80%以上で活発に繁殖)、栄養分(ほこりや食べカス、皮脂汚れなど)の3条件が揃うと、胞子が付着した場所から発育していきます。目視できるほどのカビが生えていたら、それは相当数の胞子が集まっているということになります」(医療環境管理士 松本忠男先生・以下同)。カビは人体に有害なものもあり、胞子を大量に吸い込むと、アレルギー性鼻炎や気管支炎、肺炎、ぜんそくなどを起こす可能性も。「快適な温度は人間もカビも同じなので調整が難しいですが、湿度と栄養分を減らすことで、カビの発生・繁殖は抑えることができます。健康被害に遭わないためにも、正しい掃除法を覚えて普段から室内を清潔に保ち、カビが生えない環境をキープしましょう」

目次

「クエン酸」でカビ予防や駆除は無理。
酸が効くのは細菌。カビには塩素系を

「カビ対策に酸を取り入れている人は、細菌とカビが同じ生物だと勘違いしているからだと思います。細菌には病原菌を持つものもあり、カビとは全く別物です」。カビは正式名称を真菌と呼び、この真菌は酸が大好き。酢やレモンなどのクエン酸をかければかけるほど、カビが増殖しやすい環境を作っていることになるんです。「カビ予防には塩素系漂白剤、濃度50%以上のアルコールを使用するのが効果的ですが、45℃以上の熱湯をかけるのも手っ取り早くて安全な方法の一つです」。カビだけではなく、細菌やウイルスも高熱にはかなわないと覚えておきましょう!

スポンジやブラシは菌をまき散らすだけ。
こすらずに塩素系漂白剤で対処

目に見えるカビは小さな胞子の塊なので、こすると固まっていた胞子をただ周囲にまき散らすことになり、かえってカビの発生源を増やすことになるのでNGです。「カビを死滅させるには、カビキラーやカビハイターなど市販の塩素系カビ取り剤を使って掃除するのが正解です。まずは、浴室内の水気をよく取り除き、黒カビに塩素系漂白剤を散布。ラップをつけて1~2時間ほど放置。その後、ラップごと軽くこすり、カビの除去が確認できればラップをはがし、スポンジなどで軽くこすりながら洗い流すのが◎」。カビは水気があるとうまく除去できないので、掃除をするときは換気を徹底するように心掛けましょう。「ちなみに、いわゆる赤カビはカビ菌ではありません。 その正体はロドトルラと呼ばれる酵母菌の一種ですが、放置すると黒カビを発生させる原因に。赤カビは、お風呂用洗剤を使って、スポンジなどでこすり洗いをした後、濃度50%以上のアルコールでふき取りましょう」

洗濯槽のカビ臭さに重曹は効果ナシ。
換気がいちばんの対策だと心得て

脱水槽と洗濯槽の二重構造になっている洗濯機。このふたつの層の隙間に水分や洗剤の溶け残り、洗濯物についた皮脂汚れがたまっていると、それらをエサにカビが発生します。「洗濯槽のカビ臭さを取り除くために重曹を使って掃除をしているという人がいますが、それは間違いです。水に混ざるとアルカリ性の性質を持つ重曹は、洗濯槽の酸性汚れや皮脂汚れを落としやすくする作用はありますが、除菌作用はないので、雑菌やカビまで落とす力はありません。洗濯槽のカビを抑える方法のひとつが、洗濯槽内の換気です。洗濯しているとき以外はふたを開けっ放しにし、できれば洗濯機のある部屋の窓は常に開けて換気を心掛けるようにしてください。定期的に槽乾燥をしたり洗濯槽クリーナーで掃除するのも効果的です」

カーペットのカビはこすりすぎると
胞子が飛び散る。掃除機は優しく静かに

湿った冷たい空気は部屋の下にたまりがちなので、カーペットやフローリングもカビ発生の注意場所。「カーペットは特に食べカスやほこりがたまりやすく、根本のほうは空気の通りが悪いため、湿度も上がりやすくカビが発生しやすい環境です」。カーペットは手軽に洗えませんが、掃除の仕方にもコツがあるそう。「前後左右に掃除機をゴシゴシかけると胞子をまき散らすことになるのでNGです。ヘッドをゆっくり動かし、深く入った汚れをかき出すようにしてください。ヘッドが前回転のローラーは、前に押すよりも引くほうがゴミをよくかき取ってくれるので、後ろに引きながらゆっくり静かに掃除機をかけましょう」。また、フローリングにカビが発生した場合は、薬剤を使用してもOKな素材かどうか確認後、カビが発生した場所を中性洗剤でふき、その後、濃度50%以上のアルコールをキッチンペーパーなどにしみ込ませて、カビが発生している場所をふき取るのがいいそうです。

〈おまけ〉
入浴後のカビ予防で熱湯をかけるのは
アリだけど、正しくかけるのは難しい

「カビは45℃以上の熱湯で死滅するので理論上は正しいですが、お湯のかけ方次第では胞子を巻き散らしてしまうことに。シャワーのお湯を強くかけると胞子も飛び散りやすいので、お湯の勢いを抑え、胞子をはがす角度でお湯をかけてください。ただ、熱湯はやけどをしてしまう恐れもあるので、あまりにも温度が高いのは難しいですよね。熱湯を使うよりも、浴室内をこまめに換気し、カビの発生源となる水分をなくすほうが簡単で効果的。シャワーホースのように凹凸のあるものや、隅に残った水滴はスクイージーやタオルでふき取りとるようにしましょう。また換気ですが、窓がある場合は、入浴後に浴室内の窓両サイドを5㎝ずつ開ける。換気扇を回す場合はお風呂の扉を閉めるようにしましょう」。これを入浴後のルーティンにすれば、お風呂のカビ対策はばっちりなはず。

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いちばんのカビ対策は、水分をふき取り、換気をすること。「洗面台やシンク、窓のサッシなどについた水滴は、気づいたときにふき取る。そして濃度50%以上のアルコールを吹きかけた布やクロスで壁や床、棚などを一方向にふき、見えないカビも頻繁にふき取るようにしましょう」。この一連の作業を日課にすれば、カビに悩む機会も減りますよ。

取材したのはこちら

東京ディズニーランド開園時の正社員、ダスキンヘルスケア(株)を経て、亀田総合病院のグループ会社に転職し、現場のマネジメントや営業に従事。1997年、医療関連サービスのトータルマネジメントを事業目的として、(株)プラナを設立。病院清掃および感染対策に携わり33年。これまで現場で育ててきた清掃スタッフの総数は700人以上。現場で体得したコツやノウハウを、多くの医療施設やオフィス、店舗、家庭に発信する。

松本忠男

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