熱中症に冷房病など、とかく体調を崩しがちな夏に積極的にとりたい夏野菜を紹介します。実はキャベツやレタスだけでは足りないビタミンやミネラルが豊富なのも夏野菜。特に栄養価が高く夏においしい野菜を管理栄養士にピックアップしてもらいました。
厚生労働省は健康維持のためにとるべき野菜の量は成人で1日350g以上と提唱しています。その内訳は、淡色野菜(キャベツやダイコン、キュウリ、ナスなど)230g以上、緑黄色野菜(ニンジン、カボチャ、ホウレンソウなど)120g以上とされています。「淡色野菜と緑黄色野菜の違いは、β-カロテンの含有量。原則として食べられる部分100gあたりβ-カロテンが600μg以上のものが緑黄色野菜とされています。淡色野菜はβ-カロテンの量は少ないものの、食物繊維やビタミンC含有量が豊富なものが多く、一度にたくさん食べられるものも多いので、基準の摂取量が緑黄色野菜の約2倍とされているのです。実際に食事指導をしていると、野菜を食べていると自信を持っている方でもその多くが、レタス、キャベツ、もやしなどの淡色野菜を食べて満足していますが、どちらもバランスよく食べることが大切」(管理栄養士・麻生れいみさん 以下同)。
この季節、積極的に食べたいのが栄養価の高い夏野菜。「旬の時期にもっとも多く収穫される野菜にはその時期に適した効能が望めるんです。淡色、緑黄色とバランスよく摂取し、暑さに負けない体を作っていきたいですね」
◆ サラダ菜 ◆
β-カロテンが多く、髪や肌の健康維持に◎。
カルシウムの吸収を手助けする働きも
「サラダ菜に含まれるβ-カロテンは体内でビタミンAに変換され、髪や粘膜、皮膚の健康維持、視力向上に役立ちます。喉や肺など呼吸器系統を守る働きや抗酸化作用による老化の防止も期待できます。さらにカルシウムの吸収を助けるビタミンKも含まれているので、サバ缶などに和えてサラダにすると効率よくカルシウムを摂取できますよ。ちなみにサラダ菜は、刃物で切ると酸化が進むので、手でちぎること。さっとゆでておひたしやあえ物にしたり、ミキサーでピューレ状にしてソースやドレッシングとして使うのもおすすめです」
◆ インゲン ◆
カリウムが豊富!塩分排出、利尿作用が
あるのでむくみ解消や高血圧に有効
「体内の塩分を排出する役割のあるカリウムを多く含み、高血圧に効果があります。カリウムには利尿作用もあるので、体むくみの解消にもいいですよ。ちなみに、お湯でゆでるよりも、電子レンジを使うほうが水溶性ビタミンが流れ出るのを防げます。ゆでたインゲンをサラダや肉の付け合わせにするのもいいですが、炒めるのもおすすめ。インゲンの豊富なβ-カロテンは、油で炒めることで吸収率がアップします」
◆ ズッキーニ ◆
免疫力アップに欠かせないビタミンB2や
ビタミンC、食物繊維が豊富
「コラーゲンの生成に不可欠なビタミンCは美肌に、鼻や喉などの粘膜を保つ働きがあるビタミンB2は免疫力アップに、余分な塩分を排出するカリウムはむくみ解消に効果があります。さらに悪玉コレステロールを排出する水溶性食物繊維も豊富。ラタトゥイユなど加熱料理に使うイメージが強いですが、薄切りにすれば生食でもおいしいですよ。塩もみしてから塩昆布とあえたり、塩漬け、浅漬け、ピクルスなどの保存食にも適しています。水溶性であるビタミンCやカリウムの効果を期待するならば、汁物や煮込み料理がおすすめです」
◆ ミョウガ ◆
夏バテの食欲減退や夏冷えにもいい
ミョウガの香りに含まれるアルファピネン
「ミョウガの独特な香りのアルファピネンという精油成分は、発汗、呼吸、血液の循環などの機能を促します。また、胃液の分泌を活発にする作用は食欲減退に、体温を高める効果は冷え性対策にもおすすめ。ミョウガは薬味のイメージが強いですが、ごはんと一緒に炊いたり、天ぷらや素揚げ、ソテーして肉や魚の付け合わせ、スライスしてサラダ、酢の物、みそ漬けなど意外とレパートリー豊富です。ハチミツやリキュールに漬けて凍らせ、シャーベットにしたり、アイスクリームやかき氷に混ぜてもおいしいですよ」
◆ ナス ◆
抗酸化力の強いナスニンがコレステロールの
吸収を抑え、ガンや生活習慣病の予防に
「ナスの紫色はナスニンと呼ばれるポリフェノールの一種。強い抗酸化力があり、ガンや生活習慣病の一因となる活性酸素を抑えたり、コレステロールの吸収を抑える作用があります。皮にその栄養素を多く含むのでむかずに丸ごととりたいですね。ナスニンの吸収率を上げるには、油と一緒に摂取するのがポイント。また、カリウムの含有量も多く、体の水分排出を促すことから、むくみ予防や改善に役立ちます。ただ、水分と一緒に熱も体外へ出てしまうので、体を冷やすことにも。ほてりの改善には役立ちますが、冷え性の方は体を温めるショウガやニンニク、白ねぎと一緒に食べてください」
◆ トマト ◆
リコピンの抗酸化作用以外に、血液を
きれいにするペクチンにも注目したい
「トマトに含まれる栄養素の代表リコピンは、ビタミンEの100倍という報告もあるほど抗酸化力に優れていますが、実はトマトの実より皮や種子に多く含まれているんです。また、リコピンは熱に強く油に溶けやすい性質で、加熱することでうま味が増すので、丸ごと入れて炊くトマトごはんや、チーズと一緒に焼いたりするのもいいでしょう。一方、ゼリー状の部分には血中のコレステロール値を下げ、血の循環を良くするペクチンが多く含まれています。このゼリー部やトマトの匂い、食感が苦手という方もいると思いますが、バナナと一緒にスムージーにすると食べやすいですよ。また、シンプルにトマトサラダにする場合は、オリーブオイルをかけるのがベターです」
◆ ニンジン ◆
健康維持に必須のβ-カロテンの含有量大。
皮に多く含まれているので、むかずに調理を
「ニンジンはβ-カロテンを多く含む野菜です。また、余計な塩分を排出し、むくみ改善に役立つカリウムも含まれています。大切なのは、皮に栄養素が詰まっているので、むかずに全て使うのが理想。また、水溶性食物繊維のペクチンも豊富で、コレステロールを下げ、心臓血管疾患のリスクを減らす役割があります。栄養素を壊さずにおいしく食べられるのは、丸ごと千切り、皮を利用してごま油で炒めたきんぴらです。見た目も苦手という方は、すりおろしてパンプキンスープに加えたり、ハンバーグやミートソースに混ぜてみてください」
◆ 豆苗 ◆
骨の形成を助けるビタミンKや老化防止に
最適なビタミンACEを含むバランスのいい野菜
「豆苗は、50gで女性が1食でとるべきビタミンK、ビタミンA、葉酸、ビタミンCの7割以上を摂取できる優等生。ビタミンKは骨の形成を助ける栄養素で、ビタミンA、C、EはビタミンACE(エース)と呼ばれ、老化の原因となる活性酸素をブロックするスーパートリオとも言われているんですよ。油でビタミンAやEの吸収率が高まるので、調理は炒めものが最適」
◆ 枝豆 ◆
肝機能を助けるメチオニンが飲みすぎ防止に。
イソフラボンも豊富で更年期障害抑制にも◎
「枝豆に含まれるアミノ酸の一種メチオニンはビタミンB1、ビタミンCと共にアルコールの分解を促し、肝機能の働きを助けるため、飲みすぎ対策におすすめ。ビールのつまみとしても愛されていますが、実に理にかなった組み合わせなんです。また、女性ホルモンのエストロゲンと似た働きをすることで注目されているイソフラボンも多いので、更年期症状を和らげたり、骨粗しょう症や冷え性を予防する働きも。枝豆に含まれているビタミンCはさやに守られているため、加熱しても栄養素の損失が少ないのが特徴。フライパンでオイルとニンニクでソテーすると、おいしいおつまみに」
◆ カボチャ ◆
わたや種にも栄養が。油と一緒に食べて
β-カロテンやビタミンEを効率よく摂取
「β-カロテンやビタミンB群、ビタミンEの他、カルシウムなども含まれるバランスのいい野菜です。他の野菜もそうですが、皮にβ-カロテンがたっぷり含まれているので、料理する際は皮ごとがおすすめ。種にはミネラルや鉄分の他、悪玉コレステロールの値を下げてくれるフィトステロール、コレステロール値の上昇を抑えてくれる不飽和脂肪酸が多く含まれています。さらにわたには食物繊維がたっぷり、β-カロテンも果肉の5倍と捨てるのはもったいない。種は洗って乾燥してから割って取り出し、油を引いた天板にのせ180℃のオーブンで5分焼くとパンプキンシードに。わたはミキサーにかけてパンプキンスープやみそ汁に入れるのもいいですよ。β-カロテンやビタミンEは熱に強く、油に溶けやすいので、油とカボチャを一緒に摂取すると効率よく栄養素を吸収できます。植物性油脂を含むゴマやクルミをゆでたカボチャと和えるだけでも効果がありますよ」
・・・・・
これからくる猛暑による夏バテを回避するためにも、健康維持に効果を期待できる夏野菜。上手に食卓に取り入れて積極的にとっていきたいですね。
取材したのはこちら
大手出版会社の編集・ライターを経て、服部栄養専門学校栄養士科を卒業し、管理栄養士の資格を取得。管理栄養士として、大手企業の特定保健指導・栄養相談。病院の臨床研究においての栄養療法を監修し、医薬に頼りすぎない新しい治療法をサポートしている。自身の20㎏減量経験を通し「食べて痩せて健康になる」ダイエット法で今まで6000人ものダイエット指導にあたっている。著書は累積100万部を突破。最新刊は「オイルをたせば脂肪が燃える! 麻生れいみ式ケトンアダプト食事法」(主婦の友社)。インスタグラムも更新中!@dietitian_reimi