北欧インテリアといえば木を使った素朴で温かみのあるものをイメージする人も多いと思いますが、シックで洗練された「ノルディック・ラグジュアリー」と呼ばれるジャンルがあり、北欧家具好きの憧れでもあります。「ダンスクムーベルギャラリー」で、その代表的名品を紹介してもらいました。
ダンスクムーベルギャラリーに並ぶ家具は、私たちが想像する、明るいトーンの木が柔らかな印象の北欧インテリアとは違ってシックでラグジュアリー。「私たちの店舗では、『ノルディック・ラグジュアリー』をコンセプトに家具や照明、絵画などの販売、インテリアコーディネートをおこなっています。日本においてラグジュアリーなインテリアと言えばイタリア家具が中心です。一方、北欧インテリアと言えば白木のナチュラルでオーガニックなイメージですが、実はそのどちらとも異なる、和のしつらえにも通ずる『ノルディック・ラグジュアリー』とも呼べるジャンルがあるんです。このジャンルの北欧インテリアは、家族3世代で愛用するような良質なものが多いのが特徴。今見ても新しく感じるデザインで、経年変化によりさらに素敵に味が出ています」(ダンスクムーベルギャラリー・ストアマネージャー、インテリアコーディネーター 中村祐介さん 以下同)
北欧好きならいつかは欲しい
名作家具を紹介
★★★ポール・ケアホルム作★★★
「PK31/2 2人掛けソファ」
ゆったり座れて姿勢が崩れない
コンパクトなザ・北欧スタイルのソファ
緩やかに傾斜した座面は安楽性があり、適度な座面の高さと奥行きにより立ち上がる際のストレスも皆無。「日本人好みのしっかりとした座り心地で、長時間座っていても姿勢が崩れにくいのが特徴です。クッションは取り外し可能、かつボディが地面から浮いているので、空間をすっきりと見せてくれます。座れば座るほど体に馴染んでくる経年変化を楽しんでいただきたいです」。また、家具を大事にする北欧ではソファの下にラグを敷くのが定番。「床に傷がつきにくくなりますし、空間の豊かさにつながります。特におすすめなのは、カシミアと同じくらいの細さの上質なウールタイプのラグ。床に寝転んで過ごすこともある日本人はラグをもっと重要視してもいいと思います」
★★★ハンス・J・ウェグナー作★★★
「PP19ベアチェア」
デンマーク人の永遠の憧れ!
”北欧家具の王様”と名高い1人掛けソファ
ベアチェアの名前の由来は、アーム部分がまるで後ろから抱きしめる熊の手のように見えるからなんだとか。いつかベアオーナー(ベアチェアを所有している人)になりたいと夢見るデンマーク人も多いという名作です。「十分な広さでゆったりと座れるラウンジチェアです。ウェグナー作品のなかで1番と言われるほど座り心地に定評があります。スプリングや麻の詰め物など、座り心地を左右する中材は適材適所、多様な素材を用いて作られています」。またウェグナーはデザイナーであると同時に職人でもあり、木の扱いにとても長けていたそう。「爪と呼ばれるアーム先端部分を木材にしたことで汚れがつきにくく、触り心地もなめらかで快適。堂々としながらも愛らしいたたずまいかつ脚が浮いているので重々しく見えにくいのも特徴です」。重心が低くゆったりと安心感のある作りは、日本の住空間にもよく似合います。
★★★ポール・ヘニングセン作★★★
「PHアーティチョーク」
72枚の羽が織りなすやさしい光が
親密で温かな空間を演出
日照時間の短いデンマークでは、灯がとても大切にされます。「“灯は人がその場所でする行為を補助するためにある”という考え方により、ダイニングテーブル、ソファ横など適材適所に灯をちりばめて、合計でちょうどいい明るさにするのがデンマーク流です」。1950年代から代表的地位を確立した『PH アーティチョーク』は、 美しく重なり合う72枚の羽根で作られたシェード全てに計算されされた量の光があたることで、不快なまぶしさのない良質な光を生み出します。「シャンデリアのような華やかさながら、無駄を削ぎ落とした美しいデザインの照明です。72枚の羽によって光の出方をコントロール、デザインしているのでシェードの光のグラデーションがとてもきれいです。360度どこからも光源が見えない特殊な作りで、ダイニングテーブルに座ったときでもまぶしくありません。キャンドルを灯しているような親密さのある空間が演出できます」
大きすぎず過不足ない北欧インテリアは
空間の狭い日本の住居に実はマッチ
無駄のないコンパクトな作りの北欧インテリアは、天井が低く空間が狭い日本の住宅と実は相性が良いのだとか。北欧インテリアがコンパクトな理由は、「北欧の方は大ぶりなソファよりも体のサイズに合うものを好むから」だそう。「北欧家具の考え方の基本にある”人体に合ったつくりであること”が関係していると思います。体にフィットしていれば、長く座っていても疲れにくいです」。
そして、なぜ北欧家具が日本の住居にマッチするかというと……
- フォルムが細く抜け感があるものが多く、狭い日本の空間でも圧迫感がない
- 天井の低い日本の家には重心が低い北欧家具が適している
- 床に座ることの多い日本人の性質にも適している
「北欧に住む人は暗く圧迫感のある室内を気にされるようで、空間をすっきり見せる足元の浮いた家具を好みます。特に家具の脚は細く浮いているものが多く、余白や抜け感が生まれ外からの太陽光を遮らず部屋の中を明るく持てます。そして、北欧家具は光の反射を抑えて穏やかな空間を目指しているものが多いのも特徴です。例えばソファの脚部がスチールの場合、マットに仕上げられていることが多いのも特徴。イタリア家具の、光の反射により空間のコントラストを強め、全体的にキラキラして見せようとしているのとは対照的ですよね。また、日本人は床の上に座ることが多いこともあり、重心が低い北欧の家具は落ち着くんです」
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私たちが想像する素朴でナチュラルな北欧インテリアのイメージはどこから来たのか、明確な原因は分かっていないそう。しかし中村さんいわく、日本に最初に輸入された北欧インテリアのカラーが明るかったからという説があるそうです。今回紹介した北欧インテリアは確かに高価ですが、その分上質で洗練された一生物。「デンマークでは、家具を選ぶのは結婚相手を選ぶようなものだと言います。購入時よりも、持ち主と一緒に年を重ねた20年後にどのような姿になるのかを想像すると愛着も湧いてくると思います。日本で言うところのいわゆる『家具』とは捉え方がまた異なりますが、良いものを長く使うという心持ちで、ぜひ生涯お付き合いできる空間と家具を探してみてください」
撮影/相澤琢磨
取材したのはこちら
日本では珍しい「ノルディック・ラグジュアリー」なスタイルを提案するインテリアショップ。日本人が古来より持っている感性に近く、和のしつえにも通ずるような洗練されたインテリアを伝えるべく、東京・銀座にてインテリアの提案・販売を行っている。ご来店の際は予約が必要です。