「re:sumica」に8カ月ほど前に登場していただいたトニー&のりこさん夫婦。ハワイ島の中古物件を購入し、自分たちでDIYしながら住み心地のいい家に仕上げています。以前に取材してから、さらにいろいろな部分が改修されました。こんな風に住みながら家を育てていくのも素敵だと思いませんか?

このリビングは、実は改修前の姿。窓の多いこの空間のDIYアフターは、この下の写真です!
2017年の11月、ハワイ島に移住したトニー&のりこ・ドナ夫妻。長年住んだLAとは違い、素敵な家具屋も多くありません。トニーさんたちの場合は、LAからコンテナで送った家具もありましたが、暮らしに合ったものを自分たちで作るようになりました。もともとトニーさんはデザインやDIYが得意なので、逆にこの状況を楽しんでいるのだとか。今回は、実際に暮らしてみて湧いてきた改善点とそのDIYを紹介します。
目次
〈家を育てるDIYリノベ①〉
やたらと多かった窓やドアを壁面に変更。
夫婦とも大好きなアートを飾るスペースに

こちらがリビング改修後。写真右側の増やした壁には、トニーさんのお姉さんが描いた油絵が。お二人が大好きなアートギャラリーで話をしている様子の絵です。その右横には友人の彫刻家の作品を。
この家は海抜500mほどに位置しているのでハワイにしては涼しく、エアコンもありません。風通しを考え、窓が多く配置されていますが、アート好きのお二人は、「窓じゃなくてアートを飾る壁がもっとほしい」というのがひとつの悩みでした。そこで、なるべく風通しに影響を与えないように考えつつ、アートを飾れる壁をリビングに作りました。玄関を入ってすぐにガラスのダブルドアが付いていたのですが、ベランダから部屋に入れることも多く、思い切ってガラスのドアを取り外し、そこを壁にしました。業者さんにお願いしたのかと思えば、なんと作業は全部トニーさん。2週間くらいで作業は完成。新しくできた壁にはお気に入りの絵を飾り、リビングルームがしっくり落ち着いた雰囲気になりました。

こちらはリビングルームのビフォーの状態。確かにガラスの窓がたくさんあって、逆に落ち着きがないようにも見えます。
〈家を育てるDIYリノベ②〉
高温多湿が原因のカビ対策として
階段下をドライルームに変更
- ハワイでは、基本的に冬服は必要ないのでドライルームに収納。除湿器にたまった水は、屋外に排出される設計です。
- もともとの階段下。棚やイスなどの物置スペースでした。余計なものを隠してすっきりするためにもドライルームはグッドアイデア!
- ハワイではブーツを履くことはほとんどありません。冬に履く靴を収納しておく靴棚を作ったのも、トニーさんのアイデアです。
- ドライルームはあまり目立たないように作ってあり、そのドアには地元ホルアルア出身のアーティスト、ヒロキ・モリノウエさんの木版画を。
「エアコンがないので、窓はほとんど開けっ放しなんですが、気がついたら、洋服や革製品などにカビが付き始めてびっくり。空気が乾燥していたLAではなかった経験です」(のりこさん・以下同)。これはすぐにカビ対策が必要ということで、階段下のスペースを利用してドライルームを作りました。ここには除湿器で湿度を一定に保ち、革製品や旅行に必要な冬服などを保管しています。もともと中途半端なスペースだった階段下が役立つ場所に様変わり。これももちろんトニーさんが木を切ったり打ち付けたりと設計から工事まで手掛けました。完成まで1カ月ほどかかったとか。
〈家を育てるDIYリノベ③〉
ハワイらしくなかった薪ストーブ周辺を
モダンで開放的な印象にチェンジ!
- (before)石のタイルでストーブが囲まれていて、ここだけ見る分にはいいけれど、他と比べるとやや異質な重い印象でした。
- 第1段階のチェンジ。壁を取り除いてステンレスのケーブルにしたら一気に明るい印象になり、周辺が広々と感じるようになりました。
- そしてこれがさらに手を加えた完成状態。柵の手すりと踊り場の入り口上部がちょうど揃って見えるように調整!
ハワイでストーブ?と思うかもしれませんが、標高の高いこのエリアでは使うこともあるそうです。当初、薪ストーブの後ろは石タイルの壁がありました。もう少し開放的でモダンな感じを加えたいと、壁をステンレスのケーブルに変えました。階段のステンレスのポールとケーブルは特注し、木の手すりは地元のファームから材料を買い、トニーさんが加工しました。制作期間は約2週間。その結果、今まで壁で遮られていた窓や階段の踊り場がリビングルームから見渡せるように。実は、ここにはトニーさんのこだわりが詰まっています。改修当初、ストーブの後にある手すりの高さと踊り場上部分の壁の高さが合わないのが気になるということで、新しいケーブルのレーリングに変えた後、踊り場の壁の高さも合わせて調整しました。こういう繊細さは、さすが元デザイナーですね。
〈家を育てるDIYリノベ④〉
重厚すぎる階段のじゅうたんを撤去しつつ
愛犬が歩きやすいようにひと工夫
- (before)階段を上から長いカーペットを敷くのはアメリカの家ではよくあること。滑りやすいのでこのようにバーを付けたり、接着剤で固定してしまうこともあります。
- こちらがアフター。階段が茶色だらけのイメージでしたので、あえて他とバランスを整えるため、茶色と黒のツートーンにしたら印象がガラッと変わりました。
階段には、もともと長いカーペットが敷かれ、それが滑らないよう抑えるモールディングのバーも付いて重々しい印象でした。当初、必要ないので全て取り外すことにしていましたが、お二人には12歳になる愛犬ルナちゃんがいます。階段の上り下りで滑らないように何らかのカーペットは必要と軌道修正。そこで、階段の見た目をシンプルにするためにモールディングを取り外し、蹴込の部分を梁と同じ色にペイントして色を揃え、カーペットもシンプルなものに変更。階段のベースボードを外し、ペイントを塗って完成までに2週間。より2人の好みにあったモダンな印象になりました。
家を育てるDIYリノベ⑤
暗かったトイレの壁に思い切って窓を
作って、印象激変!

バスタブ側とトイレの間の壁を思い切って打ち壊して大きな窓を作ってしまいました。すると一気に空気が流れ出したような雰囲気です。
マスターバスルーム自体は窓が大きく明るいのですが、トイレは少し暗くて息苦しい感じでした。そこでトイレをアップグレードしたついでに、バスタブとトイレの間にあった内壁に窓を作ることにしました。窓といっても壁に穴を開け、光が入るようにしただけの小さなチェンジですが、効果は抜群。トイレから窓の外の景色が見えるようになり、トイレの息苦しさも改善されました。作業は約1週間。トイレの壁には、地元のアーティストで有名な小田まゆみさんのアートを飾り、お風呂に浸かっているときも、彼女のアートを眺めることができます。
- (before)以前のトイレにも窓はありましたが、息苦しさは隠せなかったのが事実。
- トイレからも屋外の美しい景色が見えるので、とっても明るく開放的になりました。
- お風呂に入っても、トイレの壁に飾ったご友人の絵が見える、遊び心ある仕掛け。
趣味の域を超えたDIYができるのは
素晴らしいワークショップがあったから
この家を購入した際に、DIY好きなトニーさんにもってこいのワークショップが既についていました。前のオーナーさんが器具や工具もいくつか残していってくれたのですが、かなり古いものもあり、DIYプロジェクトが効率よくなるように新しい器具も追加。日本の間隔だと、趣味の域を完全に超えた工房です。実は1カ月くらい前、パワーツールのストレージとして使っていた別の小屋で火事が発生し、全焼してしまいました。幸い、家やワークショップなどは大丈夫だったのが不幸中の幸いですが、トニーさんはなんと今、めげずにこのストレージ小屋を立て直しています。建物全部を自分で立てるのは今回初めてなので試行錯誤しながらやっていて、他のDIYプロジェクトはホールドとなってしまいましたが、応援したいです。
- これがトニーさんの工房で住居ではありません。これだけたっぷりのスペースが取れるのもアメリカならではですね。
- トニーさんの工房の中はこの通り、かなりプロフェッショナル。これだけのお家のDIY作業を自分ひとりでできるのも納得です。
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いかがでしたでしょうか? ここまで難易度の高いDIYはなかなか真似できませんが、住みながら家を育てていくのは、夢があっていいですよね。ハワイ島での暮らしは最初はすぐ飽きるかと心配していたのりこさんでしたが、どんどん居心地が良くなっていく我が家を満喫していると、LAが全然恋しくならないそうです。これからも住みながら手を加え、進化していく家、今、また新たにゼロの状態から作り上げているというパワーツールを置く専用の小屋。しばらくたったらまた取材したいと思います。