リモートワークで1日中クーラーの効いた部屋にいると、体が芯から冷え不調を感じることがあります。現代における夏バテは、内蔵の冷えからくる体調不良が多いんだとか。現代人ならではの不調「冷えバテ」を生活のなかで改善する方法を内科医の石原先生に伺いました。
「昔の夏バテは、暑くて食欲がなくなる、なかなか寝付けないなど“暑さ”からくる不調でした。しかしここ20~30年の間に状況は一変し、猛暑の日が増え冷たい飲み物をたくさん飲む、冷房の効いた室内で大半を過ごすことが多くなりました。その結果、内臓まで冷えきってしまい、体調を崩すようになったんです。つまり現代の夏バテとは、“内臓の冷え”が原因なのです」(医師・石原新菜先生 以下同)。まさに夏バテ=冷えバテなんですね!
内臓が冷えきってしまうとこんな症状が
- 胃腸の働きが低下(消化不良や食欲不振)
- 血行不良(肌トラブル、手足の冷えやしびれ)
- むくみ・便秘
- 自律神経の乱れ(イライラ、気分の落ち込み)
- 睡眠障害
- 婦人科系トラブル(生理不順など)
「女性の約8割が冷え性だと言われています。夏バテしないための生活習慣としては、1日1回温まることを意識することが大切です」
冷えバテしない6つの生活習慣
① 冷房環境下では温かい食事、
特に朝1杯のみそ汁で代謝アップ
今のようにどこもかしこもエアコンで室内が冷えていなかった時代は、冷たいそうめんや、キュウリやトマトなどの夏野菜で体を冷やしていました。しかし学校もエアコン完備の時代、体を冷やす食べ物は極力避けるべき。「夏こそおすすめしたいのが、みそ汁です。みそにはスタミナアップや疲労回復などの効果が期待できる必須アミノ酸が含まれています。また野菜などの具材を入れることでさらにたくさんの栄養素をとることができます。例えば、ネギや玉ネギには、毛細血管を拡張させ血行をよくし、体を温める作用のあるアリシンが含まれていますし、なめ茸やシイタケなどのキノコ類には、免疫力を高めるビタミンDが多く含まれています。特に朝の1杯は、一気に代謝が上がり1日元気に過ごすことができますよ」
② いつもの食事に薬味や香辛料をプラスして
体の芯から体温を上げる
「ショウガやニンニク、ネギ、大葉などの薬味は胃腸の働きを助けます。また唐辛子やコショウなどの香辛料は血行を促進し体を温めてくれるのでどちらも頼れる食材です」。たとえば、うどんやそばにネギをトッピングしたり、ステーキにニンニクやコショウをたっぷり効かせるなど、ちょっと意識すれば簡単に実践できます。「最近は花山椒が利いたしびれ系フードが人気ですが、あまりにも辛い食事はかえって熱を奪ってしまうので要注意です」
③ 冷房の効いた室内では
腹巻きや靴下を着用して冷えバテに備える
冷房は足元に冷気が降りてくるため、室内では夏でも必ず靴下を履いていると言う石原先生。それでも肌寒いときは薄手のカーディガンを羽織るなどして、冷えの防止を。「夏バテしている人は内臓が冷えているわけですから、お腹周りを直接温めてください。腹巻きをして眠ると効果的ですよ。理想的な腹巻きは通気性がよく保温力も高いシルク入りのものですが、どんなものでも構いません。腹巻き付きのショーツもウエストまわりがゴワつかずより快適ですよ」
④ 40℃のお湯に15分
じんわり汗が出るまでお湯につかる
夏は暑いからといってシャワーだけで済ませる人も多いと思いますが、デスクワークを10時間しているうちに体は芯から冷え切っています。「夏場は40℃のお湯に15分ほどつかり、汗が出るくらいを目安にしましょう。忙しい人は3~5分でもOKです。お湯につかることで体が温まると同時に、筋肉が緩みリラックスできます。その後の睡眠にも影響しますので、面倒がらずに寝る前の入浴を日課にしてください」
⑤ 下半身の筋トレ&骨盤周りのストレッチを
夜のルーティーンにして体温を上げる
体温の約40%は筋肉が作り出しています。手っ取り早く体温を上げるには、体を動かすのがいちばん。「筋肉量を増やせば、必然的に体温も上がり冷えを解消することができます。特に太もものような大きい筋肉を鍛えれば、効率よく体温アップできますよ」。日常の隙間時間に数分間行うだけでも十分効果があるそうで、「おすすめはお風呂と運動をセットにすること。お風呂に入る直前に下半身を重点的に筋トレをすれば、汗をシャワーで流すことができ、時間を有効利用できます。また、入浴後に骨盤まわりのストレッチをすると、子宮や卵巣の血流がよくなり、婦人科系トラブルを防ぐことができます。血行も促進されることで、むくみ防止にもなります」。
以下は石原先生が実践している方法。
◆体温アップに効果的な下半身集中筋トレ
~スクワット×30回、もも上げ×30回、かかとの上げ下げ×30回
◆血行を良くする骨盤周りストレッチ
・開脚ストレッチ~床に座り、両脚を広げる。上半身をゆっくり倒し、痛くない程度のところで止め、深く呼吸する。30秒を目安にして。
・股関節ストレッチ~床に座り、両脚を広げ、膝を曲げ両足裏を合わせる。両膝を上下にゆっくり動かす。こちらも30秒が目安。
1日1セット行うだけでもOKだそうなので、ぜひ取り入れたいですね。
⑥ 睡眠で不調を改善!
しっかり防寒して朝まで快眠
夏バテによる自律神経の乱れを正常に戻すためにも、睡眠はとても重要。「暑くて寝苦しいなと感じたら、迷わず冷房を使うようにしましょう。設定温度は25~27℃ぐらいを目安に、心地よいと思える温度に設定してください。冷房をつけたまま寝ると体が冷えてしまうので、春・秋向けの軽い掛け布団を用意しましょう。パジャマも長袖&長ズボンで冷えを防ぐことが大事です。睡眠時間は最低でも6~7時間は確保してください」
・・・・・・
「炎天下ではこまめに水分補給する必要がありますが、冷房のきいた室内では飲みたいときに飲むくらいの感覚でOKです。その場合は冷たい飲み物は避け温かいものを選びます」。温かい飲み物なら緑茶やコーヒーでもよさそうですが、カフェインが多く含まれているため利尿作用があり、体を冷やしてしまうので、たくさん飲むのはNG。選ぶときには紅茶やウーロン茶などの発酵茶、ノンカフェインのルイボスティーなどがおすすめ。夏場に体調がすぐれないなと思ったら「冷え」を疑い、意識して体を温めてみてください。
取材したのはこちら
医師/イシハラクリニック副院長/ヒポクラティック・サナトリウム副施設長/健康ソムリエ講師。1980年 長崎市生まれ。幼少期をスイスで過ごし、帰国後は伊豆の緑豊かな環境に育つ。医学生の頃から自然医学の泰斗で医学博士の父、石原結實と共にミュンヘン市民病院の自然療法科などを視察し、自然医学の基礎を養う。現在は父の経営するクリニックで漢方薬処方を中心とする診療を行うかたわら、テレビ・ラジオへの出演や、執筆、講演活動なども積極的に行い、「腹巻」や「生姜」などによる美容と健康増進の効果を広めることに尽力している。テレビ東京「主治医が見つかる診療所」レギュラー出演。