夏に向けて覚えておきたい【冷蔵庫マネジメント】で電気代を抑えて食材長持ち!

家のなかで24時間365日電気を使い続けるものといえば冷蔵庫。基本、電源オンにしっぱなしなので、節電と結び付けて考えることも少ないですが、使い方次第で電力消費を抑えたり、食材の鮮度を長持ちさせたりすることができるんです。専門家に取材した、冷蔵庫の効率的な使い方、正しい保存法をお伝えします!

資源エネルギー庁の調査によると、家庭のなかで、夏場の電力消費量の約17%が冷蔵庫のもの。ひとつの家電としてはなかなかの量です。冷蔵庫が最も電気を消費するのは、庫内を冷やすとき。ドアを10秒開けただけで庫内の温度は1℃上がると言われているので、ものを出し入れするだけで庫内の温度は上がり電力を消費します。そこで電気代を節約できるように冷蔵庫を効率的に冷やし、温度上昇を最小限にしながら、おいしく食材を収納する方法を、食品保存の分野で著名な東京農業大学元教授・農芸化学博士の徳江千代子先生に取材しました。

目次

冷蔵庫マネジメント①
冷蔵庫の吹き出し口前はあけて
庫内に冷気を循環させる

「冷蔵部分には、冷蔵庫全体を冷やす「冷気の吹き出し口」があります。冷蔵庫を使っていくうえで一番大切なのは、吹き出し口を塞がないこと。やりがちなのが、吹き出し口の前にビールや食品などを並べてしまうパターン。ここを閉ざしてしまうと庫内全体の空気の循環が悪くなり、庫内の温度にムラが生じる原因に。冷蔵庫によって中央だったり両サイドだったりしますが、吹き出し口の前には何も置かない!を徹底してください」(東京農業大学元教授・農芸化学博士 徳江千代子先生・以下同)

冷蔵庫マネジメント②
冷蔵室はぎゅうぎゅうに詰めてはダメ。
2、3割は空けて冷気の通り道を!

「冷気の吹き出し口の前を空けたら冷気が庫内全体にいき渡るように、食材と食材の間隔を空けて左右と上下に“通り道”を作る必要があります。冷蔵室は、少なくとも20~30%を空けておくのが理想です。一般財団法人・省エネルギーセンターの調べによると、冷蔵庫に食品を詰め込んだ場合と半分の場合を比較して、半分の場合では年間で43.8kWh節電、約960円の節約ができるというデータもあります。冷蔵室は余裕を持たせた収納を意識してほしいですね」

冷蔵庫マネジメント③
スーパーで買った生鮮食品は
保冷剤と一緒にチルド室へ

「肉や魚などの生鮮食品は、スーパーから家までのほんの少しの距離でも1秒経つごとにどんどん鮮度が落ちていきます。帰宅後は冷蔵庫のチルド室に保管する人も多いと思いますが、チルド室とはおよそ0℃に設定された冷蔵以上冷凍未満、つまり凍る寸前の状態をキープできるので、生鮮食品の保存に適しています。しかし、これから夏にかけての時期は特に食材の出し入れの間にもチルド室の温度は上がってしまい、0℃になるまで時間がかかってしまいます。そこで、おすすめなのが“保冷剤”をつけて一緒に収納することで、生鮮食品をより素早く冷やす方法です。さらには熱伝導率の高い金属トレイに入れるとさらによく冷えますよ」

冷蔵庫マネジメント④
冷凍室は隙間が敵!
常にぱんぱんにして隙間は保冷剤を

「冷凍室は、冷蔵室と逆の考え方。およそ-18℃に保つために外部の空気を入れないことが鉄則。だから空気が流れ込むスペースがないように、冷凍室内は常にいっぱいにしておくことが大切です。隙間なく詰まっているとお互いがお互いを冷やしてくれるので効率もいいですよ。食材でいっぱいにならない場合は、保冷剤を入れてでも隙間を埋めておくべきです。チルド保存のときにも使えますし、大小いくつか入れておくと便利ですよ」

冷蔵庫マネジメント⑤
夏野菜は寒さに弱い。
逆にキャベツは野菜室より冷蔵室へ

「ご存じない方が多いのですが、野菜にはそれぞれ保存に適する温度があり、とりあえず冷蔵庫に入れておけば安心というのは間違いなんです。これからの季節に旬を迎えるナス・トマト・キュウリなどの夏野菜やバナナは冷やしすぎると低温障害(低温で保存することにより、物質の構造が変化してしまうこと)を起こしてしまいます。キュウリは水っぽく、トマトは実が柔らかくなりすぎておいしくありません。基本的には常温保存がおすすめですが、夏場は暑すぎるので野菜室を活用しましょう。ちなみにレタスやキャベツなどの葉物やニンジンは0~5℃が適温なので、およそ6、7℃に設定されている野菜室よりも冷蔵室で保存するほうが鮮度を保てますよ」

〈おまけ〉徳江先生に質問!
夏場の肉は冷凍保存したほうがいいの?

「冷凍された状態で売られている冷凍食品は、-196℃の液体窒素で瞬間冷凍しています。しかし、家庭用冷凍庫の-18℃前後の冷凍室では、買ってきた肉を冷凍するのに5~6時間ほどかかるので、鮮度をそのまま保つ冷凍は難しいですね。すぐに使う前提で冷蔵する場合も、傷みの原因となる水分をペーパータオルなどで拭き取ってから冷蔵室に入れるなど工夫が必要です。冷凍する場合はパックのまま氷水にくぐらせるか、下味をつけてから冷凍するとうま味成分が逃げにくくなるのでおすすめです!」

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実際に自宅の冷蔵庫を五つのポイントに沿って整理したところ、料理中の開け閉めが多いときでも「冷却状態」が保てているように感じました。また、冷蔵室内の余白スペースを維持するため、無駄買いなども減り食費や食材の無駄を見直せたのも嬉しい発見でした。冷蔵庫の整理がてら、ぜひご自宅の冷蔵庫をきっちりマネジメントしてみては?

監修

「食品の保蔵・加工における多様な食品機能」を主なテーマに掲げ、野菜や果物など食材の成分、栄養、保存方法などの研究を続ける農芸化学博士。著書「食品の保存テク もっとおいしく、ながーく安心」(朝日新聞出版)は食材の正しい保存法が学べるとあって評判を呼んでいる。

東京農業大学元教授・農芸化学博士 徳江千代子さん