家族で食卓を囲み、味の染み込んだおでんを食べると体の中から温まり、なんともいえない幸福感に包まれる…というのは冬の楽しみのひとつ。「日本より寒い韓国のおでんはどんな感じ?」という素朴な疑問から、韓国料理研究家のチョン・ヒャンミさんを取材。いつもの味に飽きたら取り入れたい、絶品韓国風レシピを教わりました。
今回、教えいただいた韓国料理研究家のチョン・ヒャンミさんは、幼少期にミシュラン店「松の実」オーナーの叔母さまと一緒に住んでいたこともあり、韓国料理や文化について深い知識をお持ちです。「韓国のおでんというと、明洞などの屋台で売っている長い竹串に刺さったさつま揚げに似た練り物を思い浮かべる方が多いと思います。平たい魚の練り物は韓国でオムといって、とってもいいだしが出る食材です。屋台ではオムを頬張りつつスープ(オムタン)を飲むのが冬の定番なんですよ」(ヒャンミさん・以下同)
今回のおでんは韓国風といっても、気軽に試せるように日本の練り物も使いつつ仕上げたヒャンミさんオリジナルのおでん。「日本のおでんとの大きな違いは最後につける薬味を効かせたタレ(ヤムニョムジャン)です。我が家秘伝のピリ辛タレをぜひマスターしてください」。
目次
決め手となる薬味(ヤムニョムジャン)は
早めに作って味をなじませておくこと!
「韓国おでんの決め手となるタレは、おでんの材料を切る前に作っておくと味に深みが増します」。材料の大きさをなるべく揃えてカットし混ぜ合わせたらタレは完成! 時間を置くことで少しまろやかなとろみが付き、にんにくや唐辛子の辛さに砂糖の甘さがミックスされて、甘辛な味に仕上がります。これを食べるときにつければやみつきに! チヂミやパジョン、トッポギなどにつけてもおいしいから、覚えておくと役立ちますよ。
韓国屋台風おでんの
具&調味料を揃えましょう
大根は2㎝幅、こんにゃく、厚揚げは串に刺しやすいように8㎜幅くらいの棒状にカットしておきます。その他、ゆで卵、お好みの練り物を用意してください。ヒャンミさんのおすすめはうずらの卵、しいたけ、ウインナー、鶏つくねなど。日本でも韓国食材店でオムは売っていますが、もし手に入らない場合の代用品としては、さつま揚げ、ハンペン、魚のつみれでもおいしくできるそう。ダシダがなかったら、顆粒昆布だし、和風の顆粒だしにプラスこしょう少々を代用してください。
◆韓国おでんには「オム」が欠かせない!
韓国の屋台でもおなじみオムは魚のすり身です。「日本はイワシやイカ、エビのすり身など、韓国に比べてすり身の数が圧倒的に多く、いろいろな食材と煮込めばおいしいだしが出るのでおでんには欠かせません♪ 今回のおでんのコツはこのオムを煮込み過ぎないよう注意すること。大体5分から10分煮込むのが目安です。そして盛り付けもこの竹串がうまく出る器を選んでくださいね」。オムを長い竹串に交互に刺していく作業は、ヒャンミさんのお子さんもお手伝いをしたがるそう。「子供と一緒に料理することは、食育にもつながるので私は子供とキッチンに立つことが多いです」。
◆下準備ができたら後は簡単!
おでんは、味が染み込みにくい素材から煮込んでいきます。注意する点は、揚げ物や練り物はプリプリとした食感を楽しみたいので、煮過ぎないこと。煮込み過ぎるとうま味が流れ、だしも濁ってしまいます。完成したのは、毎日食べても飽きのこない優しいスープのおでん! 寒い夜やちょっと体調が悪い日にこのスープを飲めば体の芯から温まること間違いなしです。
具材が柔らかくなったら完成です!
そのままいただいても味が染み込んでいておいしいのですが、この韓国おでんは薬味が効いたタレを、お好みで付けていただきます。ちょっぴり甘辛いタレが後をひくおいしさで、何度もつけて、ハフハフ言いながら食べるのが◎。具材のメイン、オムはプリッとした硬さも絶妙で、じゅわっと口に広がる優しいすり身のおだしにほっとします。昆布だしにいろいろな食材の味が凝縮されたしょうゆ味のスープは、最後まで飲みほしてしまうほどマイルドでおいしい。竹串に刺した韓国風おでんは、韓国屋台にいる気分を味わいながら楽しんでくださいね♪
撮影/大場千里
監修
韓国料理研究家。1日4組限定の神楽坂「松の実」のオーナーを叔母に持ち、幼少期より韓国料理を学ぶ。結婚後、服部栄養専門学校にて栄養士の資格を取得。日本三大料亭のひとつ金田中の茶酒にて約3年料理人として勤める。現在食育を基礎とした韓国料理教室を自宅サロンにて主宰。週刊誌へのレシピ提供、ジムトレーナーとの美容イベント料理教室開催、企業イベントの料理講師、飲食店のレシピ開発&メニュー提案、ケータリングなど多岐にわたり活躍中。